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【一男一女と行くファミリーキャンプ成長記】改善すべきはまず「寝床」

2021.07.13 Tue

長井杏子 アウトドアライター

 アウトドアメーカー勤務で道具について豊富な知識を持つ夫と、まだまだちいさな1男1女の子どもを持つアウトドア母さんの長井杏子さん。
ファミリーキャンプをはじめてから、失敗と成功を繰り返し、成長していくリアル姿をご紹介していきます。これからファミリーキャンプをしようと思っている読者のみなさま。よいことだけでなく、苦い経験を経た先にあるファミリーキャンプの魅力を、ぜひ感じてください。



家族4人、わが家のファミリーキャンプデビューのはじまり

 じつは、私は楽しそうにファミリーキャンプをしている人たちを憧れて見ている側の人間だった。だって、ちいさな子どもと暮らす毎日は、日常の生活をするだけで必死なんだもの。

 現在6歳の息子と2歳の娘がいるわが家だが、絶賛イヤイヤ気の娘に毎日手こずっている。子どもたちがもっとちいさいときも、いまと同じように毎日忙しく過ごしていた。こんなに毎日バタバタしているのに、ふたりの子どもを連れて、その日に泊まるための場所をつくって、生活して、片付けして、帰ってくるなんて、そんなファミリーキャンプは大変すぎると思っていた。

【自然を楽しむファミリーキャンプ】改善すべきはまず「寝床」 親子 キャンプ シュラフ マット

 そんなわが家が本格的にファミリーキャンプをはじめた理由のひとつに、息子の影響が大きい。

 6ヶ月になる娘をあつい夏のキャンプ場へ連れて行くことに抵抗ががあったので、暑さが落ちつく10月の下旬に家族4人でキャンプデビューを果たした。じっとしないで常に動きまわっている4歳児と、目を離すと寝返りしてどこまでも転がっていく乳児を連れてのキャンプは、想像以上に慌ただしい。親がこんなにもドタバタし、楽しむ余裕なんてなかったのに、息子が寝る直前にポツリと呟いた。

「今日は最高の1日だ!」

 このひと言でわが家のファミリーキャンプ熱が加速することになる。


パパがテントを組み立てている間に、ママと焚火で使うための枝探しをしたこと。

森で昆虫を見つけたこと。

抱っこしていないと泣いてしまう娘を抱えたママと、いっしょに夕飯づくりの準備をしたこと。

焚火で焼いたソーセージがいつもの100倍おいしかったこと。

まっ暗な夜に見上げた満天の星空がきれいだったこと。

パパと夜に探検したこと。


 息子にとっては全部が特別で最高の体験であった。

 私たち夫婦に大事なことを気づかせてくれた「そのひと言」がなければ、もしかしたらドタバタだったという感想のまま終わっていかもしれない。そう思うとぞっとする。

 この子が「楽しい!」って思えることを家族でみんなで楽しみたいと強く思った瞬間だった。子どもが親といっしょに遊んでくれる時期なんて、これからの人生のなかでほんの少しかもしれないけれど、親にとっても子どもたちにとっても、この期間はわが家の宝物になる気がした。

【自然を楽しむファミリーキャンプ】改善すべきはまず「寝床」 親子 キャンプ シュラフ マット


ファミリーキャンプを楽しむために、失敗から学ぶ「寝床問題」

 そうと決まれば、本格的にファミリーキャンプをするべく、わが家がまずはじめたこと。それは、いま不便に感じていることを見直すこと。

 命にかかわるようなことでなければ、多少不便でも持っているものを大切に使ってきた。けれども、さすがに子どもがふたりに増えたころから、いままでの道具では足りないものが出てきたり、代用品での小さな不便が大きなストレスになることが増えてきたのだ。

 はじめに改善したのは衣食住の「住」にあたる寝床。

 いままでも何度か10月下旬にキャンプをしたことがあったのだが、このときは寒くて眠ることができなかった。理由は、家族の人数が増えたにもかかわらず持っていた道具が人数に合っていなかったこと。小さな子どものことをしっかり考慮していなかったのだと思う。

 当時、寝具用に持っていた道具はキャンプマット3種類とマミー型のシュラフが3つ。地面からの冷えを防ぐため、インナーテント全体に敷くテントマット(厚さ2㎜程度)。シュラフの下に敷いて使うスリーピングマットで、空気注入式のエアマットひとつと、折りたたみ式のクローズドセルマットひとつだ。

 エアマットは夫が登山用に使っているものを流用している。これは、空気を入れる手間はかかるが、厚さ7㎝にもなり快適に眠れる。超コンパクトに収納できるので持ち運びが便利な点がいい。

 クローズドセルマットは広げたらすぐに使える便利さはあるが、厚みがそのままクッション性になるので寝心地は△。

 この2種類のスリーピングマットのうち、ひとつは4歳の息子が、もうひとつは6ヶ月の娘と私がいっしょに使うことに。シュラフは夫と息子がそれぞれ使用し、娘と私はひとつのシュラフに入った。10月末で冷えると予想していたけれど、冬期でも使える保温性のあるシュラフであったし、ふたりで入ればあたたかいだろうと思っていた。だが、それも甘い考えだった。

 当時、娘は夜泣きまではしないものの、授乳中ということもあり、夜中でも2~3時間おきに授乳をし、眠りにつくというのが日常のリズム。計算外だったのは、シュラフに入るとすぐに起きてしまったこと。シュラフの密着感に加えて、私が入ったことで、窮屈に感じて起きてしまったのだろう。そのため、シュラフのジッパーを全開にし広げて、娘にかけることにした。

 結果的に娘はいつも通りだったが、私は体半分はなにもかかっていない状態になり、さらにはスリーピングマットからもはみ出ていたので、寒くて一睡もできなかった。スリーピングマットなしの寝心地の悪さを知ったつらい夜となった。

【自然を楽しむファミリーキャンプ】改善すべきはまず「寝床」 親子 キャンプ シュラフ マット

 この日から次のファミリーキャンプに向けての寝床改革がはじまる。

 ネットで調べたり、お店に行って相談してみたけれど、当時の私は、最高の寝心地をキャンプに求めていたので、なかなかいい商品に出会えなかった。

 そんなある日、どこでも寝られるタフな夫に相談すると「キャンプから帰ってきた日は家の布団の寝心地のよさに毎回感動するよね」と言っていた。キャンプにふだんと同じような寝心地を求める必要はないんだってことに気づいた瞬間だった。


キャンプに求める寝心地とは

【自然を楽しむファミリーキャンプ】改善すべきはまず「寝床」 親子 キャンプ シュラフ マット

 その後、わが家がスリーピングマットに選んだのはふたつのインフレータブルマットだ。内部にウレタン素材のクッション材が入っていて、広げておくと勝手に膨らみ、さらに好みの固さになるまで空気を注入するタイプのもの。最大5㎝の厚さになり、クッション性や断熱性もあり、寝心地は格段に改善された。

 バタバタしがちなお昼寝のときはそのまま広げて使い、時間の余裕があるときに空気を注入して、夜は快適に眠るというスタイルで使うことができる。空気を抜いてくるっと丸めれば比較的コンパクトに収納でき、コンパクトカーを愛用しているわが家にぴったりだと思ったのだ。

 このマットの特徴はおなじ種類同士をつなげられること。私は身長が低いので、つなげた状態で横向きにし、子どもたちと3人で使っている。このほうが若干横幅が広くなり、寝返りをしても落ちずにすむ。

 ちなみに夫は、いまや使わなくなってしまったクローズドセルマットを使って快適に眠っている。マットを3枚買うのは予算オーバーで断念してしまった。夫よごめん……。

 そして、封筒型のシュラフふたつも新たに導入した。名前のとおり封筒のような長方形のかたちをしたシュラフで、サイドにジッパーが付いている。

 すでに持っているマミー型シュラフは、体にフィットすることで熱が逃げにくくなり、保温性にすぐれている点が長所であったが、汎用性に欠けていた。その点、封筒型は単体でも利用することができるが、ふたつをジッパーでつなげ、大人ふたりがいっしょに入れる大きさにするとこができた。いまは、ここに私と子どもふたりがいっしょに入って寝ている。

【自然を楽しむファミリーキャンプ】改善すべきはまず「寝床」 親子 キャンプ シュラフ マット

 封筒型シュラフは広げると四角形の布団のようになるので、暑い日は1枚を敷布団として、もう1枚はかけ布団として利用する。寝返りしやすく、足先も出すことができるので、体温調節もしやすくて便利なのだ。

 開口部分が広く熱が逃げやすいので、保温性はマミー型には劣るが、冬以外のキャンプであれば、じゅうぶんあたたかく眠ることができる。

 素材は化繊を選んだ。おねしょをするかもしれないし、遊び疲れて汚れたまま寝てしまうかもしれない。こどもといっしょに使うことを考えると、お手入れのしやすさは重要なのだ。

 ちなみに、以前から使用しているマミー型のシュラフは、あたたかさと、軽量でコンパクトに収納できる点を重視しダウンを選んでいる。ファミリーキャンプで使う道具は、使う人に合わせた選び方が大事だということを学んだ。


ファミリーキャンプに100点満点は求めない。60点取れれば合格だ!

 キャンプの夜にまったく眠れないのは、子どもの疲れが取れず、大人もストレスになる。寝心地に100点をめざすことはむずかしいかもしれないけれど、60点程度であればめざせる気がする。

 小さな子どもを連れてのファミリーキャンプは、以前のように夫婦ふたりで時間を気にせず料理をしたり、ゆっくりと焚火を囲みながらお酒を飲んだりすることはむずかしい。やっぱり大変だなぁ、と感じる瞬間もあるのが正直なところ。

 けれど、子どもといっしょに行くファミリーキャンプだからこそ味わえる感動もあると思っている。

 どんな体験をして、どんな思い出がつくられていくのか、これからが楽しみだ。

長井杏子 アウトドアライター

子どもたちとの暮らしの延長を仕事にすることをめざし、30代半ばからアウトドアライターへ転身。アウトドアメーカーに勤務する夫と子どもと週末はだいたい自然のなかへ。ふたりの子どもと共に楽しめるアウトドアを模索しつつ、遊ぶことに本気で向き合いながら、日々ご機嫌に暮らしています。
Instagram:@kyonhks

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