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【一男一女と行くファミリーキャンプ成長記】がんばりすぎない「食事」が家族を救う
2021.09.27 Mon
長井杏子 アウトドアライター
キャンプで食べる料理は特別おいしく感じるものだ。大人になった私だってキャンプ中の食事はテンションが上がる。子どもたちも、楽しくておいしいスペシャルなごはんに感じてくれているようだ。
6歳と2歳の子どもたちと行くキャンプでの食事は、ゆっくりと準備している暇はない。料理担当をしている私自身が楽しめるようになるまで、大変に感じる経験をしてきたのが正直なところなのだ。ママのお手伝いしたくてしようがないコックさんがふたり、小さな手を伸ばし、テーブルの上に置いた食材で思うがままに進めようとするのだからバタバタするのは当然だろう。
忙しい日々の生活のなかで、子どもたちと料理をつくることは親に余裕がなければできない。けれど、自然のなかに身を置いて過ごしていると、小さなことでも自分でやらせてあげたいと思えるし、あわよくば成長に繋がったらいいなぁ、などと思ってしまうからなんとも勝手なものだ。
敏感な子どもはそんな親の下心を感じ取れるし、純粋に楽しそうだからやってみたい! というワクワクセンサーが働かなければ進んでやりたがらない。
キャンプ中の食事を手分けをし完成させるのは大仕事なのだ。けれど、時間はかかってもみなの表情がいきいきしている様子を見ていると、がんばってつくった甲斐があると思える。
わが家が2泊3日でファミリーキャンプに行く場合、1日目の夜、2日目の朝昼夜、3日目の朝の計5食分をつくることになる。もちろん、そのときの状況によって、お店で買ってすませたり、飲食店を利用したりすることもあるのだけれど、食事の事前準備が鍵になってくることはきっと容易に想像がつくだろう。
小さな子どもとのキャンプは想定外なことしか起きないと心得よ
子どもたちふたりを連れてのファミリーキャンプにも慣れてきたころ、事件は起きた。当時、息子は5歳、娘は1歳半。その日は1泊のファミリーキャンプの予定だった。
昼間に所用があったのでキャンプ場に到着したのは16時を過ぎたころ。辺りはうっすらと暗くなろうとしていた。いつもなら事前に食材を購入しておくのだが、前日まで忙しく、買い出しをする時間がとれなかったため現地で調達することにしていた。
夫婦だけでキャンプをしていたころは、周辺の直売所で手に入った食材を使って、その日に食べるものをつくっていたし、なんとかなるだろうという甘えが出てしまったのだ。
しかしこの判断がのちに後悔することになる。
最初のトラブルはキャンプ場からスーパーまでの1本しかない山道がかなり渋滞していたこと。この日は日曜日で、週末を利用してキャンプに来ていた人たちの帰宅ラッシュがはじまっていた。
キャンプ場から大きなスーパーまではスムーズに行けば車で15分だが、渋滞しているので往復1時間以上かかる見込みだった。そこでスーパーは諦めて、近くの直売所へ向かった。
小さな直売所ということに加えて到着時間も遅く、残っている食材は少なかったが、なんとか富士宮焼きそばの麺とキャベツ、ニンジン、食後のフルーツを購入しキャンプ場へ急いだ。
食事の準備をはじめたところで第2のトラブルが発生。
子どもたちは、いつもなら車に乗ればお昼寝するはずが、この日はしなかったのだ。娘は眠さに耐えきれずグズグズしはじめた。
食事の準備の手を止めて寝かしつけるも、時間が経つばかりで、あたりはどんどんと暗くなっていく……。
「ヤバイ、この状況は本当にヤバイ」と私は内心焦っていた。
結局、寝かしつけを諦めて泣いている娘を足であやしながら、というより足元で泣きわめいている状態で、なんとか野菜を切り、持参していたガスコンロで焼きそばをつくり、息子と夫が準備をした焚火台で、家から持参していたソーセージとジャガイモを焼いた。
この日の食事はドタバタを通り越して、もういろいろなことがグチャグチャだった。
この日以来、子どもといっしょのファミリーキャンプでは想定外なことしか起きない。やりすぎだと思うくらいまで、しっかり準備をしてから挑もうと誓ったのだった。
食べ慣れた食材を使って、シンプルに素材をいかしたキャンプ飯をつくる
キャンプ当日はなるべく焦らず、怒らず、笑顔ですごしたい。
わが家がキャンプで食事をするにあたり、意識していることがふたつある。
ひとつ目は、できるだけ子どもたちが日常で食べ慣れた食材を使って料理をすること。理由は、しっかり残さず食べて欲しいからだ。キャンプではゴミを減らすため、食材は食べきって帰りたい。
ふたつ目は、子どもたちが料理をしたくなったときに手伝ってもらえるような、かんたんなメニューを用意しておくこと。6歳児はできることも増えてきたので、包丁を使って野菜を切ってもらったり、2歳児はキャベツをちぎってもらうなどかんたんなことでいい。
さて、2泊3日のキャンプの話に戻そう。キャンプ1日目の夕食は、メインはバーベキューで肉や野菜を焼き、そのほかに、豚汁とご飯。デザートはフルーチェをつくった。クーラーボックスに入れているとはいえ、生肉はあつい時期に傷みやすいので、できるだけ初日に食べるようにしている。
息子には、夫といっしょに焚火の番と、肉と野菜を焼く係を。娘には、小さな鍋に牛乳とフルーチェのもとを入れ、ぐるぐると混ぜるお手伝いをしてもらった。娘の様子を見ていると、つくりながら「味見」と言ってひと舐め、またひと舐め、何度も味見をしているではないか。半分くらいなくなりそうな勢いだったが、ほほえましく見守った。
子どもたちと夫に作業をしてもらっている間に、私はガスコンロでそのほかの調理を急いで進めていく。
作業台はこども用と大人用のふたつを用意している。
子ども用で愛用しているのはモンベルのL.Wマルチフォールディングテーブル。高さがHiスタイル(67㎝)、Lowスタイル(54㎝)、Zaスタイル(39㎝)の3段階に調節ができ扱いやすい。食事をするときはヘリノックスのチェアと相性のよいLowスタイルに、身長80㎝の娘が作業をするときはZaスタイルがぴったりあう。汚れてもサッと拭けばキレイになるところも気に入っている。
大人用は、子どもの火傷防止を考慮して、高さのあるテーブルにガスコンロを置いて調理をしている。これは以前、夫婦のキャンプで食事をするときに愛用していたもの。家族4人で食事をするのには小さいけれど、作業台として利用するのに丁度よい大きさで、軽量かつコンパクトに収納できるので持ち運びしやすい。
事前に浸水させておいたお米をガスコンロで炊いていたころ、混ぜることが楽しくなった娘がほかにも混ぜたいとアピールをしてきた。そこで豚汁用の鍋と、事前に自宅で切っておいた野菜が入ったタッパーを渡した。野菜は食べやすい大きさに切って持参すると調理の手間が省けるのでおすすめ。ペットボトルの水を注いで、ぐるぐる混ぜながら満足そうな表情をしている姿がとてもかわいかった。
おどろいたのは、この日、野菜嫌いの娘が豚汁をお替りし、苦手なにんじんを食べていたこと。食べなさいと何度も言ってもかたくなに開けなかった口が、あっさりと開き、おいしそうに食べているから不思議なものだ。
2日目の早朝の貴重なひとり時間は、コーヒーを飲んだり自由にゆっくり過ごしたい。さらには食事を終えたら、すぐにでも遊びに出かけたいという理由から、準備も片づけも最低限を心がけている。
この2日目の朝食は、前日の残りの豚汁に味噌を追加したうどん。朝方は冷えることが多いので、温かいうどんは子どもたちもよろこんで食べてくれる。ほかには、すぐに食べられるチーズやフルーツ、野菜ジュースを添えて朝の食事は終了だ。
2日目の昼食は、山登りやハイキングなどで遊ぶことが多いので、アクティビティの道中にバーナーで素麺を茹でたり、向かう途中のお店でパンなどを購入し食べることが多い。
夕食につくったのは、さば缶を使ったカレー。缶詰は腐る心配もないので安心して利用できる便利なアイテムなのだ。焼き鳥の缶詰を焚火で温めてチーズをかけたり、ホタテの缶詰にバターとネギを乗せたら最高のつまみにもなる。この日は、食後に時間の余裕があったので、焚火を囲みながらソーセージや野菜を焼きながら食べた。焚火台で焼く熱々のソーセージは6歳の息子の大好物だ。
3日目の朝食は、子どもたちの大好きなのホットサンドをよくつくっている。パンは便利だ。お腹が空いたときにサッと出せば、そのままでおやつになるし、焼けばカリッと熱々でおいしく食べられる。具材は前日のカレーの残りにチーズをトッピング。ちょっとしたポイントだが、パンの側面にバターやマヨネーズを塗ってから焼くとこんがりとした、おいしそうな焼きめが付く。さらに、鍋にこびりついたカレーは少し牛乳を入れるだけでカレースープになり、最後までおいしくいただける。こうすることで残ったカレーもきれいになり格段に洗いやすくなる。片付けが楽になるよう意識しておくと、その後の作業もスムーズに進むのだ。
体験を通して楽しむ気持ちを大切にしたい
キャンプに行きたい! が最近のわが子の口癖で、キャンプを心から楽しんでいることが全身から伝わってくる。
先日は、虫網でも届かないような高い場所にいるカマキリをどうしても捕まえたい息子が、持参していた水鉄砲を使ってカマキリを落として捕まえていた。ワクワクセンサーが反応している息子は、そのあとおどろきの光景を見た! なんと、水に濡れたカマキリのお尻から、ニョロニョロと黒い線のような生き物が出てきたのだ!! すぐに、スマホで「カマキリ お尻 黒い生きもの」で検索した(*1)。スマホがあればだいたいのことがすぐに調べられるなんて、なんとも便利な世の中だ。自然体験から学びを得ようとするのではなく、楽しむことがなにより大事だということ。そこから広がる可能性の大きさを息子から教えてもらったような気がした。
(*1) この生き物が気になる人は、ぜひ検索を。グロ注意!
知らないことがたくさんある自然のなかで、これからどんな体験ができるのかとても楽しみだ。