- 料理
【NEWS】パタゴニアのプロビジョンズに新作の自然酒と自然派ワインが仲間入り
2022.12.12 Mon
世界的アウトドアブランドであるパタゴニア(Patagonia)が展開する食品部門「プロビジョンズ(provisions)」にこの冬、自然酒2種、自然派ワイン2種(4製品)、スパークリングフルーツワイン1種が仲間入りする。
パタゴニアは早くから環境問題に本気で対峙してきた。1996年以来、パタゴニアで製造されるすべての綿製品の原料はオーガニックコットンだ。2025年までには石油を原料とするバージン繊維の排除を宣言している。大胆かつ断固たる意思で環境的責任を果たしてきた姿に共感するアウトドアファンは多いだろう。
そのパタゴニアが2012年に食品事業をはじめた理由は、食と環境問題が密接に関わっているからだ。広大な土地に散布される膨大な量の化学物質、石油燃料に依存した工業的生産方法。作り手にも食べる側にも、そして地球にも悪影響を与える手法で食品が大量生産されていく痛々しい現実を変えるために、原材料から製造手法にまでこだわり厳選した食品を取り扱っている。
これまでに穀物や調味料、スナックなどを展開してきたが、2021年12月にはじめての日本初製品「自然酒 五人娘」を発売し、日本だけではなく海外でも販売された。
新製品のうちマインクラングがつくる「エスタライヒ – ロゼ」と「エスタライヒ – タイム ブラン」のワイン1種2製品、フルクステレオがつくる「リッスン・トゥ・ユア・フルクト」のスパークリングフルーツワイン(フルーツ・ペットナット)は、すでに11月から販売が開始されている。
そして「自然酒 五人娘」に続き、12月以降、新たに加わる日本酒が「しぜんしゅ – やまもり」と「繁土(ハンド)」の2種。さらに、自然派ワインの代表的生産者フランク・コーネリッセンがつくる「ピステムッタ – ロッソ」「ピステムッタ – ロザート」の1種2製品も仲間入りする。
純米酒「しぜんしゅ – やまもり」をつくるのは仁井田本家。1711年創業の福島県郡山の酒造だ。1960年代から、農薬肥料不使用の米を使った「しぜんしゅ」に取り組んでいる。
「やまもり」は原材料から道具まで、地産にこだわっている。使われるのは、自社田で農薬肥料不使用でみずから育てた昔ながらの品種「亀の尾」のみ。木桶は仁井田本家が代々守ってきた、山に生まれ育った杉を使ってつくられている。この地でしか生み出せない味だ。製品名である「やまもり」には山を守るという意味が込められている。
「繁土」は1973年から続く千葉県神崎町の酒蔵である寺田本家が手間ひまかけて生み出した純米酒だ。農薬、化学肥料を使わない地元の米と、近隣の神崎神社の御神水を使用。蔵内にすむ蔵付き麹菌を採取し自家培養しているため、薬品系乳酸を使う場合より2倍もの日数がかかるが、微生物の個性豊かな本物の酒になる。
しかも、酒造りの工程には機械を使わず、人の手で行なっている。微生物とリズムを合わせるために唄を歌うこともあるそうだ。
「繁土」という名前には、田んぼの生物や酒造りの微生物が豊かに繁栄するさまが込められ、手づくりの「クラフトマンシップ」、機械や添加物に頼らずにお酒造りをしているという矜持が「ハンド」という読み方に現れている。
自然派ワインとして新たにラインナップに加わるのはフランク・コーネリッセンがつくる「ピステムッタ ロッソ(赤)」と「ピステムッタ ロザート(ロゼ)」の2本だ。
ワイン好きなら、フランク・コーネリッセンの名を聞いたことがある人は多いかもしれない。地中海沿岸に2,500年以上も続く伝統的な栽培方法をとり、無施肥、無耕起、無除草、無農薬と、人的関与を極限まで廃したストイックなワインづくりを行なっている。「ピステムッタ」は彼が育てたブドウから生まれる、生命力あふれる味わいを持つワイン。
いっしょに植えたオリーブの木が土の保水性を高め、ソバなどの穀物が雑草を抑え、侵食を防ぐのに役立つ。そんな自然の共生する力のみで育てられたブドウは、まさにシチリアの自然そのものを凝縮している。
手作業で大切につくられた自然派ワインと自然酒は、その土地の土壌や天候が味や香りへダイレクトに影響する。その土地でいっしょに生きている植物や動物といった共生生物の様子まですべてを取り込んで醸造されるのだ。
職人が、地元の自然環境に深く向き合い、ひとつひとつの工程に何倍もの手間をかけて作り出した一滴は、味と香りでその地に広がる豊かな自然を体感できる贅沢な逸品であるにちがいない。
■ピステムッタ – ロッソ/ピステムッタ – ロザート