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一生幸せになりたかったら虫と遊びなさい!? 大人のための昆虫採集の虎の巻が登場
2013.09.01 Sun
藤原祥弘 アウトドアライター、編集者
昆虫採集といえば、夏の遊びという感じがするが、虫は1年中生きている。成虫とはかぎらないが、幼虫、サナギ、卵などなんらかの姿でどこかにひそんでいる。そんな当たりまえのことを思い出せてくれる本が登場した。奥山英治著『虫と遊ぶ12か月』(DECO刊)だ。
この本は、月ごとの目次になっていて、たとえば、9月だと「林道で枝に擬態するナナフシモドキを見破る」方法が解説されている。
ナナフシモドキといえば、あの枝に似た奇妙なヤツだが、これを探すには、林道を歩きながらモミジイチゴ(キイチゴ)やクズを探して、その葉を見る。コツとしては、下から葉をすかして見て、シルエットを探すといいそうだ。親切なことに、モミジイチゴやクズの写真も載っている。
さらに、飼い方も載っている。ナナフシモドキを飼うには、飼育ケース内にエサとなるモミジイチゴやクズの枝葉を活けておくだけでいい。ナナフシモドキはその葉を食べて、秋の終わりに卵を産む。なんと、ナナフシモドキは、そのほとんどがメスで、なおかつ単為生殖(受精せず、メスだけで繁殖すること)するので、つかまえてくれば、だいたい卵を産んでくれるという。卵は春に孵化して幼虫になる。まさに1年中、虫と遊ぶことができるのだ。
著者の奥山英治氏は、雑誌『BE-PAL』で生き物ページの連載を持つほか、テレビの自然番組のコーディネイターや自然観察会の講師として活躍するナチュラリスト。ブログ「日本野生生物研究所」もとてもおもしろい。
私は本書を入手してから、ベランダのミカンの鉢植えで、アゲハの幼虫の飼育を始めた。毎朝、成長を確認するのが楽しくてしょうがない。故・開高健が「一生幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」という格言をよく引いていたが、虫と遊んだほうが幸せになれると思います。
【本の概要】
タイトル:虫と遊ぶ12か月
著者:奥山英治
発売:2013年7月29日
発行:DECO〈http://www.deco-net.com/〉
定価:2500円+税
仕様:四六版、並製、272ページ、オールカラー
【目次】
春
2月 日当たりのよい土手でナナホシテントウを探す
3月 河川敷に咲き始めた花に集まるチョウを見る
4月 道端のギシギシやイタドリにつくハムシに注目する
4月 ハルジオンの群生地でコアオハナムグリを待ち伏せする
4月 ギフチョウを探しにカタクリの群生地へ出かける
5月 里山で“寝起き”のオオスズメバチの女王をつかまえる
5月 キャベツ畑でモンシロチョウの幼虫を採集する
5月 ニンジン畑でキアゲハの幼虫を採集する
5月 雪解けの山の林道で甲虫やチョウを観察する
5月 公園で縄張りを主張するオスのクマバチをつかまえる
5月 雑木林の林道でハンミョウを追いかける
夏
6月 里山の水田や池でゲンゴロウを探す
6月 山間部の水田の水路で希少なタガメと出合う
6月 林道のアワブキからアオバセセリの幼虫を持ち帰る
7月 山間部の林道でタテハチョウの仲間を観察する
7月 山間部の小川でオニヤンマのヤゴをつかまえる
7月 夜の公園から羽化直前のアブラゼミの幼虫を持ち帰る
8月 樹液に集まる虫を見に昼も夜も雑木林へ
8月 クヌギの木でチョッキリとゾウムシを探す
8月 明かりに集まる虫を求めてコンビニに立ち寄る
8月 里山の薪置き場でタマムシを待ち伏せする
秋
9月 草丈の低い原っぱでバッタをつかまえる
9月 空き地の草むらでキリギリスのタマネギ釣り
9月 林道で枝に擬態するナナフシモドキを見破る
9月 草むらにひそんでいるエンマコオロギをつかまえる
9月 河川敷の原っぱでカマキリとその卵を探す
10月 夜の公園や街路樹でアオマツムシを探す
10月 雑木林のきわでカンタンやカネタタキなど鳴く虫を探す
10月 水田や浅い湿地で赤トンボの産卵を観察する
11月 雑木林の朽ち木を崩してコクワガタをほじくり出す
特別編 昆虫の宝庫、西表島へ一年に一度は出かけたい
冬
12月 雑木林や街路樹でオオミノガのミノムシを探す
12月 公園や街路樹で集団越冬中のナミテントウを探す
12月 河川敷の朽ち木からマイマイカブリを探す
1月 エノキの落ち葉からオオムラサキの幼虫を採集する
2月 越冬中の虫を観察しに里山の雑木林へ出かける