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Off the Gridに、日本のアウトドアカルチャーの現在進行形を見た気がした

2016.04.12 Tue

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

 先週末開催されたOff the Grid(オフ・ザ・グリッド)に行ってきた。会場の京王フラワーガーデン“アンジェ”は入園料500円かかるにも関わらずたくさんの来場者で賑わっていた。

 このOff the Gridというユーザー向けの展示会イベントには、メーカーやディストリビューター(卸・輸入代理店)、リテイラー(小売店)が多数出展しているのだが、その多くがインディペンデント、つまりメジャーではなくインディーズだ。

 仕事柄いろいろなブランドのヒストリーを調べたりまとめたりしているのだが、世界中で流通しているメジャーブランドの中にも、そのはじまりは倉庫やガレージから生まれたというストーリーに出会う。そこには世の中にないもの、メジャーには真似できないものを、自らの手で産み出してやろうという夢や野望、アイデア、そして迸る情熱があったに違いない。

 そしてこのOff the Grid。ここにも、これから世界を動かすかもしれないインディーズたちの熱気のようなものを感じた。自ら企画、製造まで手がける職人的なガレージメーカーもあれば、専門的な技術を持ったファクトリーとともに小ロットながら斬新なアイデアを実現するコンセプトブランド、海外のインディーズブランドを輸入するディストリビューター、それらをセレクトして販売するリテーラーなどなど、どのブースを回ってもが新鮮な驚きある。


UL系のブランドにはMYOG(自作)からはじまったブランドも多い。ロングトレイル、ファストパッキング、源流釣りなどの遊び手がつくっているからこそ生まれるアイデアに満ちている

 特に目立つのがUL(ウルトラライト)系だ。話題のグランピングとは対極に位置する。ULというとロングトレイルやファストパッキングなどのカルチャーかと勝手に解釈していたが、いろいろ話をしてみると、源流釣りの人たちが立ち上げたブランドもある。アプローチは違えど、めざしているところは共通するのも面白い。アルコールストーブやネイチャーストーブなどの火器類、超軽量なシェルターやテントなどなど、無駄なものを削ぎ落としミニマルな道具に最大限の効果を落とし込もうとする姿勢は、地道でストイックな行為なのかもしれないが、実際に話をしてみると、作り手本人たちはいずれもどこか飄々としていて、ものづくりのプロセスやその苦労すら面白がっているような印象を受けた。


バイクもまたアウトドアの遊び道具になる。原動機を使わないゆえに知恵や工夫が生まれるのかもしれない

 自転車系もまた熱い。ピスト、ロード、マウンテン、ミニベロなど、バイクの形や用途は違えど、移動の、そして遊びの道具としてのポテンシャルはかなり高い。しかも元々パーツを組み合わせ自分好みにカスタムするカルチャーが根付いているバイクの世界には、アウトドアやトラベルといった切り口のインディーズブランドが育つ土壌があるのもうなづける。


注目すべきはULだけじゃない。ファッション系やクラフト系にもインディーズならではのこだわりが伝わってくる

 昨今では、ソーシャルネットワークやクラウドファンディングなどにより、作り手のアイデアを実現し世に送り出す道も増えつつある。実際に、クラウドファンディングで生まれたギアをきっかけにメーカーとして起業したブランドもあった。

 近代アウトドア史を紐解いていくと、レジャーやツーリズムといった本流とは別に、自然回帰やビート、ヒッピーなどのサブカルチャー、カウンターカルチャー的系譜が存在する。70年代にアメリカンカルチャーとともに紹介され上陸したこの流れは、その時代の若者たちに衝撃を与え、日本の文化や風土、環境の中で解釈され育ってきた。今の作り手の方々は特に意識していないかもしれないが、次の世代へ、そしてまた次の世代へと受け継がれた連綿とした流れを感じる。

 奇しくも同じ日程で、代々木公園ではアウトドアデイジャパンが開催されていた。その両方にお邪魔したが、まさにメジャーとインディースの対極を垣間見た気がした。メジャーを否定する訳ではないが、インディースの人たちが発する熱量は、なぜか私の心を捉え、焦がしてやまない。

 近いうちに、これらのインディーズブランドを個別に掘り下げて書いてみようと思う。

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