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あの幻の『野宿野郎』が、デジタル(Kindle版)で読めるってよ

2016.11.27 Sun

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

 みなさんは、「人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』」の存在をご存知だろうか? Akimamaでも何本かゲストで記事を書いていただいている、かとうちあき女史、空港野宿とか立ちションとかの記事の、そう! あの方が編集されている野宿専門誌だ。2004年から刊行され2010年の7号発行以降は新刊が発行されていないが、その幻の『野宿野郎』が、今デジタル(Kindle版)で読めるってよ!

 あれは確か、2008年か2009年頃だった……と思う。FMラジオから「今日のゲストは『野宿野郎』編集長のかとうちあきさんです」的なことをパーソナリティが話し始めたので「野宿? なんだそれ? カトウチアキ? 女のヒト?」と思いながら聴き耳を立てつつ仕事をしていた。当時、携帯向けキャンプ情報サイトの運営をしていた私は、アウトドア関連の情報、特に女子の野外活動には敏感になっていたのだと思う。しばらく聴いていると「初めての野宿は国道横の側溝の中で…」みたいなアホなことをしゃべってるじゃないか。山ガールとか女子キャンプとかが取り沙汰され始めたばかりのその当時、女子で野宿で側溝とか駅泊とかトイレ泊とか、前述のそれらを遥かに凌駕している。つうか次元が違う。「なんかすげーなこいつ」と私の海馬に深く爪痕を残したのだった。とはいえ、その“カトウチアキ”なる人物を検索するでもなく、ましてや“ノジュクヤロウ”なる雑誌をすぐに購入するでもなく、記憶の奥底にとどめたまま時は流れた。

 その後の私は紆余曲折を経て、キャンプよろず相談所の一員としていろいろなイベントの運営にも関わるようになり現在に至るのだが、2015年のNatural High!の前にこんな会話があった。
「トークショーのパネラーとして出演するかとうちあきをクルマに乗せてきてほしいだけど」
「カトウさんですか? どんな人ですか?」
「あの『野宿野郎』の……」
「!!!」
私の記憶の深海から、そのキーワードがマッコウクジラのごとく急速に浮上してきたのだった。

 クルマに乗せてお連れする客人のことだ、ちゃんと理解して失礼のないようにしなければならないと思い、検索したり、Amazonで購入可能だった著書「あたらしい野宿(上)」を購入したりして、ますます「すげーなこいつ」感を高め、新宿のモンベル前で待ち合わせて、初のご対面。クルマの中でのおしゃべりの端々にもクレイジー感を感じつつ、当然Natural High!でのトークショーも拝聴し、すっかり彼女のファンになった。Facebookでもお友達になり、“野宿野郎”のFacebookページにも「いいね」した。ただし野宿愛好者になったわけではないが……。

 今の世の中、手に入れようと思えばほぼほぼなんでも手に入る。2004年に発行された“野宿野郎”の1号でもちゃんと調べれば購入できるのだろう。ただ、私の中ではある意味、禁断の書、幻の書として迂闊に手を出してはいけない書物のように感じていた。

 しかーし、最近になってFacebookのタイムラインに「『野宿野郎ためしに1号』ためしに電子書籍発売!」という文字列が出現した。スマホ版のKindleにお世話になっている私は「むむ、ためしに買ってみようか」と即購入。つづいて「野宿野郎 調子にのって2号」「野宿野郎 急いでつくった3号」とたてつづけに購入。1号、2号はお付き合いのつもりで購入したが、3号あたりからもう野宿野郎の虜である。今は「野宿野郎 なにがなんだか4号」を購入し、貪るようにスマホで読んでいる最中だ。

スマートフォンのKindleアプリではこのように表示される

 別に野宿したいわけではない。かとうちあきに恋したのだろうか? 否、“野宿野郎”誌上に登場する野宿野郎たちに恋してしまったのだ。野宿野郎たちは、四国お遍路したり、大阪→東京徒歩キャノンボールしたり、ローラーブレードで日本一周したり、その辺で野宿したりとさまざまだし、野宿自体が目的ではなく止むを得ず野宿しているケースも多々あるのだろう。そんな彼らの行動を綴った文章の、行間からほとばしるエネルギーのようなものに憧憬や羨望、恋慕すら感じてしまっている。つまり野宿LOVEではなく野宿野郎LOVEなのだ。今のところ……。

 まぁ、私情のうんぬんはさておき、登山とかキャンプとか真っ当な(?)アウトドアに少しマンネリを感じている人は、ぜひ一度読んでみてほしい。個人的には3号がおススメだ。あなたの人生を少し低迷させるかもしれないが、あなたのアウトドアライフをちょっとだけスパイシーにしてくれるはずだ。

こちらは「野宿野郎」オリジナル全刊。画像提供:かとうちあき

 本日現在で、4号までがデジタル化(「のじゅ編通信 第一号」もあり)。かとう女史にコンタクトして「今後の発行予定は?」と詰め寄ってみたところ、ウェブサイトの運営などもしている“伝道師さん”なる電子書籍化してくれる方のがんばり次第らしい。ムゥ待ち遠しい。なんならアナログ版(紙の本)の方も取り寄せるか。

 さぁ、果たして、かとうちあきはKindle長者になれるだろうか?

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