- カルチャー
GNUさんの部屋Vol.3 卵の殻を考えた。ルールとマナーと自然と仁義
2018.01.22 Mon
国内外のロングトレイルやウィルダネスを
釣り竿を肩に歩くこと8500km以上。
知る人ぞ知る長距離ハイカー
長沼"GNU"商史さんによる
長距離ハイキング放談の第3弾です!
どうもヌーです。
初詣でひいたおみくじには
恋愛⇒「思うようにならぬ」とありました。
2018年早々、ヌーは死にました。はい。
さて、今回は「ルールとマナーと自然への仁義」について書いてみようと思う。
昨年の暮れにネット上で「卵の殻事件」が注目を集めた。
事件の内容は、ある女性登山者が山で飯食ってゆで卵の殻を穴掘って埋めた。
それをみたおっさんが「おい、ゴミを捨てるな!!」と注意。
女性は帰宅後にネットに投稿。
「自然に還るんだからいいじゃない! ジジィにとやかく言われる筋合いはないわよっ!」的な。
そんでそれを読んだ人たちが反論。その流れがいろんな所にリンクされて拡散した。
卵の殻は「ゴミ」か?
自然に還るものは山で捨ててもいいのか?
「異物を山に残す自由」はあるのか?
誰かが皆に討論させたくて創作したのか、事実なのかはわからないけど、討論する価値があるテーマだと思うので俺も持論をココに書く。こっから俺の主観丸出し意見を長々とww
有名なアメリカのトレイル「ジョン・ミューア・トレイル」を歩いた時、トレイル上ではゴミをほとんど見なかった。
歩いている人の意識が高いんだろうね、間違って落としても誰かが拾うんだろうなぁ。俺も落ちていれば拾うようにしているけど。
ゴミは捨てない、持ち込んだものは持ち帰る、Leave no trace、立つ鳥跡を濁さず。
落とし物はしない、気がついたら拾いに戻る。落としたものがなんであれ、落ちた時点で自然からみたら「ゴミ」です。
この「ルール」が徹底されるのは当たり前なことだと思う。
俺的には「ルール」とは人や自然に対して争いなく皆が平和に楽しむために必要な規律だ。そして「マナー」があれば「ルール」などいらない。Dragon Ash Kj が言ってたっけな。
しかし、人によってそれぞれ異なる「マナー」では自然を守れないこともある。マナーではカバーできないとき、「ルール」が必要になる。
で、このルールやマナーは「人」対「人」のものだ。他人や自然を傷つけないために、人が人に課す決まりごとだ。
んで、このルールやマナーとは別に、野に入る人には自然に対して守るべき仁義や謙虚さが必要だと思っている。
俺は自然(地球)を生き物と捉えている。
自然にとって俺たち人間も自然だけれど、俺たちの造り出すもの、行為は時に異物となる。どんな生き物だって異物がたくさん入れば体を壊す。だから自然に対しなるべくインパクトを残さない姿勢が必要だ。
俺のサーフィンの仲間には、海に入るとき、出るときに海に対してお辞儀する人たちがいる。そういう自然への謙虚さだ。
野に入ったら生きてる植物、動物を無駄に殺さない、傷つけない。
この自然への謙虚さと仁義は「ルール」や「マナー」とは別軸で存在している。
これらをふまえて、卵の殻事件を考える。卵の殻を野に残すことは絶対に悪か?
卵の殻は時間が過ぎれば分解する。大地の分解能力が高い場所なら、自然が元に戻してくれる。ほかに訪れる人もない場所なら、卵の殻程度なら自然にとって問題ないのかもしれない。
けど、文句言うおっさんがいたということは、そこはそれなりに登山者のいる場所だったんだろうなぁと思う。
つーことはそこにはルールやマナーがあるんだな。ゴミは持ち帰るという「ルール」、人を不快にさせない「マナー」。
そして、殻を捨てた山が北アルプスみたいな標高高い場所なら、自然の分解能力的にも完全アウトだと思う。
ルール、マナー、自然への仁義の面で全部ひっかかってくる。人のいる山は、山ではあれど山ではない。そこは町と同じルールを守るべき場所なのだと俺は思う。
じゃあヌーは自然の分解能力が高い場所なら、卵の殻を残してくるのか、と聞かれれば「俺はやんない」と答える。
俺たちはあくまでビジターじゃん。ローカルなのは鹿や熊、俺達はいつかは町に下りる。町に戻ればそれらを処理するシステムがあるし、街のシステムも完璧じゃないけどそれを利用したほうが今の所はまし。
(それに基本バナナとか、オレンジとか、卵とか持って入らない。町で食えばいいし、かさばるゴミ持ち歩きたくないから)
hidaka2017ルールとかマナーに縛られたくない! 文句言われたくない! って人は「技術と覚悟」の必要な自然に行けばいいんだと思う。チャラチャラと皆の行くような所に行かなければいいんだよなぁ。
そこには人が人に課すルールとマナーはない。守るべきは自然への謙虚さと仁義だけ。まぁ本当は、自然への仁義をきっちり守った時点で、マナーとかルールが問題にならないくらいローインパクトになってるはずなんだけど。
生きていれば、時に謙虚をぶっ飛ばし勢いの必要な時もあるけれど、忘れないでいたいよね謙虚。俺、今すごく謙虚。
なんで謙虚とか言い出したかつーと、謙虚になるような目にあってきたから。
関東で釣りをしようと思うと、自然や魚に向かう前に人と向き合わなきゃいけなくなる。それにうんざりして自分と自然しかない場所に行ってきた。北海道は日高山脈。
熊のうろつく山奥に一人で入ってごらん、
人間なんて自分なんてクッソ弱え〜なぁって思うから。
と「技術と覚悟」のいる所で遊んできたのが本になりました。
釣歩日記 北海道 日高篇
井の頭公園近くの「ブックオブスキュラ」と代官山蔦屋書店では店頭&オンラインで販売中。
そのほか、ジュンク堂書店池袋本店、ハイカーズデポでも購入可能。ぜひ読んでみてください。と謙虚をぶっ飛ばし宣伝w
長沼”GNU”商史
パシフィック・クレスト・トレイルをスルーハイク、コンチネンタル・ディバイド・トレイルをセクションハイク、テ・アラロアをスルーハイクするなどなど、国内外の長大なトレイルを歩き、その模様を『釣歩日記』にまとめる。近年取り組むのは、子供の頃から楽しむ釣りとハイキングの融合。ブログ=「釣歩大全 ロングトレイルと釣り」