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紅葉が美しい皇居へ。大嘗宮の一般参観と乾通りの一般公開に参加した。
2019.12.06 Fri
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
明仁上皇陛下の傘寿を記念して皇居の乾通りが一般公開さたのが平成26年(2014年)の春。その時も含め、平成時代には春の桜と秋の紅葉の時季に計8回行われた。
そして令和を迎え、皇位継承に伴う伝統儀式「大嘗祭」の舞台となった大嘗宮の一般参観とともに、乾通りの一般公開も行われている。大嘗宮の一般参観は11月21日から始まり、11月30日からは乾通りの一般公開もスタートした。例年以上に混み合うことも予想されたけれど、今年は紅葉を満足に見ていないこともあって皇居に出かけた。
皇居の敷地内に入ったという記憶はない。皇居外苑を歩いたことがある程度だ。桜田門駅を降り、入場口となっている坂下門へ向かう。桜田門駅から向かう人は、予想していたよりも少ない。大手町、あるいは東京駅を利用する人が多いのだろう。二重橋前の広い広場にまで行くと、入場を待つ長蛇の列になっていた。この時12時10分。隣の人は「おそらく坂下門までは1時間以上かかるでしょうね」と話している。
動かないというわけでもなく、列は少しずつ前へ。遠くに白いテントが設置されている。荷物検査とボディチェックをするテントだった。そのテントを超え、やっと坂下門が見えてくる。天気はいいものの、火曜の午後ということもあって人が多くなかったのかもしれない。パイロンが並んでいるけれど、列は交互にはならずに門に向かっていくだけだ。
12時40分。坂下門をやっとくぐる。初めて皇居内へ。列から開放されて、自由に(といっても一方通行は厳守しなければならないけど)歩けるようになる。皇居外苑も確かに広いのだけど、皇居内の方が深く、そして静かな印象がある。
宮内庁の前で参観経路が書かれた地図が配られていた。それによると、大嘗宮まで行くのは乾通りを行って西桔橋から回ってくルートと宮内庁の前を東御苑に曲がっていくルートのふたつがある。乾通りも一般公開されているのだから、乾通りを歩いていくことにする。乾通りの秋の一般公開は、今回でわずか5回目だ。
トウカエデやオオモミジの紅葉が見頃を迎えていた。冨士見多聞と蓮池濠や下道灌濠なども、秋色を帯びている。気に入った木や光景の前では写真を撮ったりしながら、ゆっくり皇居にいる時間を楽しんだ。皇居の紅葉を見るだけでも、足を運ぶ価値は十分にあるだろう。
乾通りから西桔橋を渡って東御苑へ。旧江戸城の本丸跡に大嘗宮が建設された。本丸のところにいくと、威風堂々とした大嘗宮が見えてきた。本丸を囲むようにぐるりと列が並んでいる。場内に流れるアナウンスによると、大嘗宮の前に行くまで120分程度だという。「遠くから見るだけでいいんじゃないの?」という声と「今回を逃しなら次はないんじゃないの?」という声が交互に頭の中で囁いている。結局、多くの人と同じように大嘗宮の近くまで行くことにした。
坂下門までの列とは違って、まったくといっていいほど動かなかった。じわりじわり。日本人だけではなく、別の国から来た人も少なくない。
本丸に並び始めてから1時間。やっと大嘗宮の近くまで来た。ここに来ると、多くの人が写真を撮りたいと思うのだろう。いい位置を確保しようとするためのちょっとした場所取り争いのようにもなっていた。警護する警察官は、スムーズに列を進ませようと「写真は一枚撮ったら動いてください」と言っている。後ろからでもゆっくり見られますよ、というアドバイスもあって、その場を後にして後方から見ることにした。確かにここからだと、自分の思うがままの時間を使って、大嘗宮を見ることができた。大嘗宮は大小約40棟の建屋から構成されている。大嘗祭の祭場となる悠紀殿と主基殿などは、黒木造りと呼ばれる皮付丸太をそのまま使用する古代の工法そのままの簡素な造りだという。造営が始まったのが7月後半。わずか3ヶ月ちょっとでこの大嘗宮が造営された。そしてこの一般参観が終わると解体される。
最後は二の丸雑木林を歩き、大手門から外に出た。皇居外苑で待ち始めてから、およそ2時間30分の皇居ツアー。行ってよかったと感じる。確かに人は多くて、列で待っている時間も長かったけれど、日本人が持つ自然、そして皇室への思いを、もう一度自分のなかで確認することができたから。長い歴史の中で、何が受け継がれてきたのか。そんなことを考えた時間になった。
実施時期:<大嘗宮一般参観>11月21日(木)から12月8日(日)の18日間
<皇居乾通り一般公開>11月30日(土)から12月8日(日)の9日間
実施時間:<大嘗宮一般参観>午前9時から午後4時(入場は午後3時まで)
<皇居乾通り一般公開>午前9時から午後3時30分(入場は午後3時まで)