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環境に、社会にやさしいバックパック。「ドイターを背負う」ということ。

2020.03.27 Fri

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宮川 哲 編集者

 そもそも、山へと意識が向かう人は、少なからず自然や環境に対する関心を持ち合わせているものである。山頂から見た景色がすばらしいとか、沢の瀬音に心惹かれるとか、圧倒的な巨木にわれを忘れるとか……そんな感覚を味わったことがあるのなら、自然の儚さも身に染みて知っていることだろう。いま、地球環境は抜き差しならない状況にある。環境の悪化は止まることを知らず、目に見える影響が年を追うごとに大きくなっているのは、山好き、アウトドア好きの心配事のひとつとなっている。

 では、われらに何ができるのか。木を植えるなどの直接的な行為は然りであるが、たとえば間接的な行為として。日々の生活の中での意識を高め、モノ選びひとつにしても「環境」という尺度を持ってみる。こんなささいな考え方ひとつでも、人類全体で見れば、大いなる変化につながっていくはずである。

 山好きのモノ選びということで、バックパックを例に取る。その選択の基準は、人によってさまざまだ。背負い心地や容量のサイズ、耐久性、スタイル、使いやすさ……キーワードとなる言葉は次々に思い浮かぶ。ここに「環境」も入り込めるのだろうか。

 バックパックを「選ぶ」こと自体が、環境対策につながっていくという考え方だ。ドイツのバックパックブランド「ドイター(deuter)」はモノ選びの基準に「環境」もあるべきと、積極的な取り組みを続けている企業である。「地球を守る」「環境を守る」ということで、多くのブランドがさまざまな取り組みを続けているなか、ドイターの首尾一貫した姿勢は注目に値する。
(左から右へ)
フューチュラ24 15,400円(税込) カラー:アジュール×スティール 
フューチュラ24SL 18,700円(税込) カラー:シーグリーン×フォレスト
エアコンタクトライト50+10 25,300円(税込) カラー:ネイビー×アークティック
キッドコンフォート 41,800円(税込)カラー:マロン

 もはや耳慣れた「サスティナビリティ」という言葉。日本語にすれば、「持続可能性ーー森や木や自然資源を長期的に維持できる利用条件を満たすこと」は、地球上に生きる人たちにとってもはや切っても切り離せぬ考え方となっている。山やアウトドアをめざすのであれば、なおさらである。その持続可能性を具体的に展開するための施策を、バックパックに結びつけていく。それが、ドイターのCSR、社会的責任となる。
ドイター社CEO マーチン・リーベルさん ドイターの現CEOは根っからのスポーツマン。かつてはドイツのアルペンスキースラロームのナショナルチームの選手として活躍したこともある。

Message from MARTIN RIEBEL deuter, CEO
Sustainability is one of the most important issues of our time, The actions of today will affect our own future and that of generations to come. Not only our customers and business partners but society as a whole is becoming more aware of sustainability, and this increasingly presents challenges for deuter as a company as well as for our business partners throughout the supply chain.

It is not just about creating the perfect product, in the right quantity, and with the right fit and design. It’s about deciding what materials products should be made of and making sure they are manufactured in the right working conditions. And it’s about planning what will happen at the end of a product’s ‘lifecycle’. It is up to us to recognize the impact that we have and try to minimize it, to improve working conditions and adopt a holistic approach to create sustainable products.

 この英文は現CEOのマーチン・リーベルさんの言葉であるが、持続可能性がいまの時代のもっとも重要な課題のひとつだとして、企業の在り方を説いている。

 完璧な製品を適切な量で、ちょうどいいフィット感とデザインで作成するのは当たり前で、環境にやさしい素材の確定や正しい労働条件のもとでの製造、ユーザーの手に渡ったあとのサポート体制など、どれもこれもが切り離すことのできない要素であり、製品のライフサイクルはぐるりとつながっているという。環境問題だけでなく、製品を手掛ける人々の労働環境までも視野に入れた総合的なモノづくりこそが、サスティナビリティにつながっているという考え方だ。

 つながりをわかりやすく図解にしたのが、以下のページのイラストだ。この仕組みをドイターは「360°企業」として捉え、この思考を活動の柱に据えている。
出典:deuter SOCIAL REPORT JULY 2018-JUNE 2019

 ドイターの製品を中心として、そのまわりを「企業体」「環境」「エコロジー」「労働」といったキーワードが取り囲むといった状態だ。環境や労働条件の改善をテーマとした業界団体とのパートナーシップの締結、関係機関の定める「規格」や「基準」の承認と実行、そして環境負荷の掛からない素材選びの実践である。

 ドイターのこの取り組みはいまに始まったことではない。2008年にブルーサインのシステムパートナーとして承認され、11年にはフェア・ウェア・ファウンデーションに加盟している。さらに、13年から7年連続で同枠組みのリーダーステイタスを取得した。14年にはサスティナブル・テキスタイルとも活動をともにし、20年の今年は環境負荷の高いPFC撥水素材からの完全な脱却(PFC FREE)を実現するにいたっている。
7年連続でフェア・ウェア・ファウンデーションのリーダーステイタスに賞されたときのドイター本社のリリース記事。
 各締結団体等の具体的な内容は、次のようになっている。
  

Partnership for Sustainable Textiles2014年10月にドイツで設立されたテキスタイル業社のための組織。地球環境、社会、経済における業者間のパートナーシップが確立された。

 

bluesign繊維業界の規格で、環境保護、労働安全、消費者の安全についての世界でもっとも厳しい基準とされる。2008年、ドイターもシステムパートナーの一員に。
 

FAIR WEAR FOUNDATIONテキスタイル、衣料業界の労働環境、権利などの改善、監督をする独立機関フェア・ウェア・ファウンデーションが定める基準。ドイターは2013年から7年連続でリーダーステイタスを取得。

 

PFC FREEドイターでは、2018年から生産ラインでのPFC(過フッ素化合物)を含む材料の使用を削減。20年には完全な脱却を実現した。



 また、ドイター社独自としてのアフターサービスも充実させており、昨年はドイツ本国では3,500を超えるバックパックが修理を施され、ユーザーの手元に戻っていった。まさにサスティナビリティの「360°企業」の概念を具現化している。
新しくなったドイターのドイツ本社。建物もヒートポンプを使った冷暖房システム、また照明を極力減らすために採光をより多く取り入れるデザインになっている。また、自転車通勤のスタッフのためのシャワールームなども整えられている。
 こうした背景を理解した上で、ドイター製品を選ぶ。そうすれば、選んだユーザー自身も、持続可能性の輪の中に自然と入り込むことになるのである。なるほど、モノ選びの尺度に「環境」という言葉も入り込む余地がありそうだ。

 いまこそ、流行りや人気を追い求めるのではなく、環境負荷の少ない丈夫なバックパックを上手に長く使っていく、そんなスタンスが求められている。 

ドイターのHPで詳しく見る


 

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