- カルチャー
コロナウイルスで休業になったライブハウスや中止になったフェスへのミュージシャンからの支援。
2020.04.26 Sun
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
新型コロナウイルスの感染防止のため、2月下旬からライブハウスやイベントの開催自粛が続いている。3月以降は、フェスも開催されていない。
無観客でライブ配信をしているミュージシャンも少なくない。コール&レスポンスがダイレクトに伝わるライブこそ、ミュージシャンにとってのリアルな時間だ。その時間が自分たちに戻ってくる日が来ることを、それぞれのミュージシャンが望んでいる。けれど、いざライブをやれる状況になったとしても、ライブハウスやフェスが存続していなかったとしたら、ライブの場が限られてしまう。今、自分たちに何ができるのか。そんなことを考え、ミュージシャンも場を救うための活動を起こしている。
日本のみならず、海外ツアーにも積極的に出ているポストロックバンドのtoeがスタートさせたのが、「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」。フォルダのアクセス権をダウンロード購入することで、自分が応援したいライブハウスを支援するアクションだ。フォルダの中には「プロジェクトに賛同した約70組のミュージシャンが提供する楽曲データ」が収録されている。6月末までの期間内、収録された楽曲を聞いて楽しむことができる。応援したいライブハウスは、北海道から沖縄まで。
ソウルバンドの思い出野郎Aチームはクラウドファンディングを利用してアクションを行なっている。「ソウルピクニック・ファンディング」と名付けられたプロジェクトで、過去に思い出野郎がライブイベントやパーティーを開催した場所と今年出演予定で延期や中止になってしまったフェス、イベントの主催者に声をかけ、賛同してくれたところと連盟を結成。連盟に加入したライブハウスやイベントなどに、支援金として送られる。リターン品としては、特別仕様の7インチシングルアンドがラインナップされている。
京都をベースに活動しているインストバンドのNABOWAとjizueはコラボアルバム『Sketch』を発表。制作は各メンバーそれぞれの自宅やスタジオなどにとどまって作曲をする完全リモート形式で行われ、各々が一曲ずつをプロデュースする形で全7曲が完成。このアルバムの収益は、長年彼らの活動を支えてきた関西のライブハウスやクラブに寄付される。
「僕らは、まずはすぐ隣の人へできるだけ多くの水を飲ませるという道を選びました。それぞれのやり方で、ぜひ近くの誰かをできるだけ助けてあげてほしい。それが連鎖すれば結果的に全員を支援することに繋がるし、その支援はちゃんと自分のところにも必ず返って来るものだと思います」とNABOWAの山本啓。
雑食インストバンドのSAIRUは、今までにCDとしてリリースしてこなかった音源を新曲を収録したCD『HOMETOWN』をリリース。WEB上でお店を選んで購入すると、そのCDの売り上げすべてが、その選択したお店に送られる。
「ふと立ち寄ったお店でCDを買うような感覚で購入してくれたら嬉しいです。そしてまた皆で遊べるその日が来たら是非お店に足を運んでみてください。きっと素晴らしい世界が待っていると思います」とコウヘイ。
ミュージシャンから発信される支援。音を奏でるミュージシャンがいて、音を鳴らす場所があって、そしてそれを楽しむファンがいる。音楽を核にしたコミュニティこそ、未来のライブシーンやフェスシーンを構築していく。