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ドイツの自然をたのしもう。ワインのブドウ畑と森をめぐる、近所のゆったり散歩

2020.05.12 Tue

クリューガー量子 ドイツ在住ハイデルベルク市公認ガイド

 はじめまして、クリューガー量子です。ドイツの玄関フランクフルトから約1時間の、ハイデルベルクの隣街に住んでいます。

 ハイデルベルクは、ドイツ最古の大学であるハイデルベルク大学と数々の研究所、そしてなんと言っても古城街道のメインであるハイデルベルク城があることで有名です。人口は約16万人で、そのうち学生が3万人。歴史と最新の学問が交錯する、活気ある魅力的な街であることから、日本からも観光や仕事で多くの人が訪れます。

 そして、緑がいっぱい。癒やされます。ハイデルベルク城は標高568mの山の中腹にあり、街の中央をネッカー川が流れます。対岸には京都の「哲学の道」のモデルになった「哲学者の道」がある山がそびえています。作曲家のブラームスやロベルト・シューマンもその昔ハイデルベルクに住み、モーツァルトやゲーテもこの地を訪れました。

ドイツ クリスマス時期のハイデルベルク城クリスマス時期のハイデルベルク城。

 私が住んでいるのは、ハイデルベルクの隣街。家から5分歩くとワインのブドウ畑が広がります。このブドウ畑の中を散歩するのが大好きです。

 ドイツはひとつひとつの街が小さく、自然が家の近くにあることが多いのが特徴です。遠くに行かなくても、家族みんなで気軽に楽しめるうつくしい自然が近くにあります。

 私たち家族もこれまで、子どもたちが小さいときからベビーキャリアに乗せて近くの山や、ヨーロッパアルプスの山をハイキングしてきました。また年にいちど、夫の学生時代の友人5家族といっしょに総勢20人ほどで、音楽祭で有名なバイロイトの近くの農家民宿に4泊してハイキングやカヌーなどをゆったりと楽しんでいます。

数年前に訪れた、イタリア・ドロミテの山の公園数年前に訪れた、イタリア・ドロミテの山の公園。

 この記事を書いているのは4月30日。ドイツでも新型コロナウィルスの影響でさまざまな行動制限が実施されています。学校は3月中旬から休みとなり、公共の場では同居人以外の3人以上で滞在することが禁じられています。カフェやレストランなどはテイクアウト以外は休業。売場面積が800平方メートル以下の店は、1ヶ月の休業要請を経て1週間ほど前から営業を再開しました。キャンピング場やホテルも休業しており、旅行や観光目的の日帰り旅行も自粛要請が出ていますが、個人による散歩やスポーツは許可されています。

 そこで、今日は私の家から出発してワイン畑と森をめぐる1.5時間の近所の散歩をご紹介したいと思います。

 いちばん近くのブドウ畑は徒歩5分で着くのですが、今回は10分歩いて、他のブドウ畑を抜けていく道を通ります。街の中心にある広場から2分歩くと、緑あふれる細い道に出ます。ここから99段の階段を上ります。

ドイツ 街の広場から2分で着く細い道街の広場から2分で着く細い道。

ドイツ ブドウ畑に続く階段を上から見下ろすブドウ畑に続く階段を上から見下ろす。

 階段を上りきるとブドウ畑が広がり、街と平野が見渡せます。

ドイツ 街と平野街と平野。

 この場所から左側の土地は昔、採石場でした。現在は、コウモリやカエルなどの絶滅危惧種が住む自然保護区域になっており、立ち入りできません。柵ごしに見る採石場跡はグランドキャニオンのようでもあり、なかなか趣があります。

ドイツ 柵ごしに採石場跡を望む柵ごしに採石場跡を望む。

 ここからはブドウ畑を横に見ながら山を登っていきます。道沿いにはサクランボやクルミ、ベリーやリンゴなど、たくさんの木が植わっています。少し歩くと見晴らしのいい場所に出ます。左右の畑には、季節によって小麦や菜の花が植えられます。ドイツでは菜の花は食用油として使用されることが多いです。

ドイツ 山に続く畑の道山に続く畑の道。

 この畑をこえて、また緑の道を歩いていくと、山の中腹にある公園に到着します。

ドイツ リンゴとサクランボの木に囲まれた道リンゴとサクランボの木に囲まれた道。

ドイツ 山の中の公園山の中の公園。

 公園の中には、子どもの遊び場とレストラン、サッカーなどができる運動場があり、柵で囲まれた広い敷地にヤギや鹿などが飼われています。週末には子どもの誕生日会が開かれたりするなど、多くの人が訪れますが、今は新型コロナウィルス対策として立ち入りが禁止されています。

ドイツ 森の中の運動場森の中の運動場。

ドイツ 敷地内の鹿敷地内の鹿。

 鹿がいる場所の正面にある細い道を入っていくと、「森のようちえん」があります。この森のようちえんは5年前に開園した私立幼稚園で、毎月の保育料は約80ユーロ(約9,200円)。3才~6才までの子どもたちが通っています。森のようちえんは、いまから70年ほど前にデンマークで生まれ、現在ドイツには1,500以上の森のようちえんがあります。

 私の近所のご家族のお子さんが、この森のようちえんに通っているので、園での様子を伺ってみました。現在20人の子どもたちが通園しており、先生は4人。子ども1人当たりの先生の人数はふつうの幼稚園のほぼ2倍です。開園時間は7時30分〜14時30分で、はげしい雨や雪のとき以外はずっと外で過ごします。まれに屋内で過ごす場所が写真の建物です。近所の人は森のようちえんにとても満足しているとのことです。お子さんも、とても寒い日以外は森のようちえんが大好きなようです。

 森のようちえんだけでなく、ドイツの幼稚園は雨が降っていても雪が降っていても、1日30分は外遊びの時間を設けています。ですので、幼稚園の持ち物リストには必ず【雨用のジャンパーとズボン】が記されており、子どもたちはそれを着て雨の日も外で元気に過ごします。以前、息子が通っていた幼稚園の先生が、「悪い天気はない。服装が悪いだけ」と仰っていたのをよく覚えています。

ドイツ 森のようちえん森のようちえん。

 この森の公園をあとにして、ちがう道を通って家に向かいます。上に見える建物はワイン農家で、農家民宿も経営しています。農家民宿はドイツで家族連れにとくに人気の宿泊施設です。ベッドルームのほかに台所や居間、バスルームを完備。そして外の広い庭に動物が飼われていることが多く、子どもたちが餌をあげるなどして動物と触れあえることも人気です。また、長めの休暇の際に食事を自分で整えられるため、自宅にいるようにゆったり過ごせて、お財布にやさしいのも嬉しい限りです。

 この道を通って、またちがう森に入っていきます。

ドイツ ワイン農家を望むワイン農家を望む。

ドイツ ブドウ畑からまた森にブドウ畑からまた森に。

 森を抜けると、見晴らしのいい場所に出ます。ここには3人いっしょに寝そべられる木製の寝椅子が置かれており、寝そべってみるとブドウ畑と青空が見渡せ、気分爽快です。

ドイツ 寝椅子が置かれたブドウ畑寝椅子が置かれたブドウ畑。

 山を下りていくと、もうひとつのワイン農家が見えてきます。こうしたワイン農家は年に何回かワイン祭りを開催し、地元の人が集います。この道を抜けて家に戻りました。

ドイツ ワイン農家ワイン農家。

 いかがだったでしょうか。ドイツでは街から少し離れると、うつくしい自然が広がっています。今度のドイツ滞在の際、郊外の自然のなかに少し足を踏み込んでみてはいかがでしょうか。地元の人たちが昔から大切にしてきた自然と、ドイツの人の日常の生活スタイルを身近に感じてホッと一息、おすすめです。

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