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アウトドア系同人誌のススメ【缶詰編】山にキャンプに。外メシの定番「缶詰」をたのしもう
2020.07.16 Thu
鈴木純平 ライター、編集者、同人作家
アウトドア派にインドア派な同人誌を紹介していくこの連載。今回のテーマはズバリ「缶詰」です。
いわゆるムックや書籍のような内容の「評論・情報ジャンル」同人誌はテーマの垣根がなく、アニメ評論からミリタリー、鉄道、天文、科学、雑学、旅行、ガジェット、生活用品……と、書き尽くせないほど、さまざまな切り口でもって制作されています。
そんななかでもっとも層が厚いというか、人気のテーマとなっているのが “飲食系” です(筆者調べ)。これらは一般的に作者が考えたレシピを紹介したり、いろんなメーカーの食べ物飲み物をレビューするような内容で、おそらく評論同人誌の売り上げとしてもいちばんパイが大きいはず。人間誰しも食事をしないと生きていけませんしね。
かつて “声優さんが使っているシャンプーを飲み比べる同人誌” という問題作もありましたが(笑)、それはまた別の話として、商業雑誌ではカバーできないニッチな切り口ができたり、料理の仕方次第でいくらでも作者の色を出しやすいことが人気の理由でもあります。
アウトドアシーンでためになる飲食系同人誌も数多くあり、今後も別テーマで紹介しようと思うのですが(Akimama編集部が連載を続行させてくれれば)、飲食系の第1回目は外遊びと親和性の高い「缶詰」をテーマに紹介することにしました。
缶詰売り場に行くのが楽しくなる!? 缶詰関連同人誌3選
缶詰はすでに調理されているものも多く、すぐに食べられて、アレンジの幅も広くて、保存も利く。ふだんの食事はもちろん、荷物を増やせない登山シーンでの利用も定番となっていますが、これから紹介する同人誌を参考に、外メシライフを更に充実させてみてはいかがでしょうか?
1、こんな日には缶詰あけよ。 シリーズ
サークル名:C2機関
缶詰の同人誌のなかで最初に紹介したいのが、C2機関の同人誌シリーズ。C2機関といえば擬人化した艦艇の育成シミュレーションゲーム「艦隊これくしょん」の生みの親。最近は、同人活動はお休みのようですが、2010年代前半に評論同人誌界で絶大な人気を誇ったサークルです。
C2機関の十八番は、あらゆるモノの評論をすると共に、その特徴を元に擬人化、というか女の子化して紹介するというもの。艦これ以前には戦艦を擬人化した同人誌シリーズを出していましたし、そのほかにもパンやカレー、漬物、納豆をテーマにしたものでも同様に擬人化が行なわれていました。
「こんな日には缶詰あけよ。」は2011年から2014年にかけてvol.3までつくられたもので、各巻10種類前後の缶詰をオススメのアレンジレシピとともに紹介し、それぞれ取り上げている缶詰をイメージした女の子が描かれています。艦これのイラストレーターが描いたイラストもチラホラ。
C2機関が人気サークルへのスターダムをかけ上がれた理由のひとつはかわいいイラストではありますが、特筆すべきは彼女らの企画力と取材力です。同人誌で企業へ取材に行くというのは結構ハードルが高かったりしますが、同誌ではマルハニチロの鮭缶工場、ノザキのコンビーフ工場、メーカーの本社や缶詰Barなどを取材し、一歩踏み込んだ缶詰の魅力を伝えています。
“存在は知っていたけどこれまで買ったことのなかったあの商品” を買うきっかけにもなると同時に、新しい気づきも与えてくれるでしょう。
5年以上前の作品ですが、紹介されている缶詰の多くは定番となっているものなのでご心配なく。
2、パスタと休日 vol.12
サークル名:Sayu STUDIO / 作家:紗倉ゆずる
ご存知、ひとり暮らしのパスタレシピを提案している大人気同人誌「パスタと休日」。毎号ごとに、フォーカスする使用食材やパスタスタイルを変えることで読者を飽きさせず、現在はvol.17まで続いています。
同人誌としてはめずらしいご長寿シリーズとなっているこちらから、今回紹介させていただくのは缶詰をテーマとしたvol.12。 缶詰の基礎知識にはじまり、レシピ紹介、日帰り登山のレポートと続いていきます。
メインパートのレシピページでは手順を写真でわかりやすく紹介。料理名に触れさせていただくと、「ムール貝と黒オリーブの水煮缶パスタ」、「サバとハチミツ梅干しの味噌煮缶パスタ」、「チキンとマンゴーのタイカレー缶パスタ」……など。
どれもただ缶詰とパスタを和えるだけではなく、プラスαのテクニックに唸らせられます。
もちろん缶詰以外の食材も登山に持っていけそうな痛みにくいものなので、実際に山でも役立ちそうです。
このまま食べてもおいしい缶詰をさらにいい形にして食べる。アウトドアでの食事が充実しちゃいますね。
3、このツナ缶がすごい
サークル名:版元ひとり / 作家:連合ツナ缶隊
「この○○がすごい」というタイトルはオタク業界や同人誌界隈では割と目にするところですが、評論同人誌のなかで「版元ひとり」(ひとりでやっているわけではないらしい)がつくる飲食本には、毎度、知的好奇心を掻き立てられます。彼らは同様にタルタルソース、麻婆豆腐、魚肉ソーセージ、キーマカレーの本も出されていて、とにかくひとつのものを徹底的に洗い出して食べ比べて批評する作風を得意としています。
こちらは数多ある缶詰のなかでも、安くて便利なツナ缶にフォーカスを当てたもの。思い返すと、僕がツナ缶を買うときに気にするのは脂っこいものかノンオイルかぐらいなものですが、この1冊を読んだらびっくり。自分のツナ缶観を変えられました。
もしかしたら常識? なのかもしれませんが、「はごろもフーズ」のシーチキンの中にもビンナガマグロ、キハダマグロ、カツオと魚種に違いがあったことを初めて知りました(笑)
全部で25個のツナ缶を食べ比べてレビューされていますが、やっぱりメーカーごとにも色がある様子。こんなにそれぞれにちがいがあったのかと、目から鱗が落ちる1冊です。
僕は買えていませんでしたが、ツナ缶で第2弾もあるみたいなので、今度探してみようと思います。
終わりに
ネタバレし過ぎないよう軽く内容に触れただけですが、これだけでも作り手の缶詰愛が感じられたのではないでしょうか?
これらを読んでいた時に「缶詰はおいしさのタイムカプセル」という言葉に出会ったのですが、まさにその通り。先人が編み出した画期的なシステムで、海のものや山のものがいつでもおいしい状態で食べられるなんて、なんて幸せなんでしょう。
毎度のことですがこのなかには絶版になった同人誌もあります。しかしなんとかして手に入れるのも同人誌収集の楽しみのひとつ。お金にものを言わせて頑張ってください。
苦労して登った山の頂上には、すてきな景色が待っているはずです。