- カルチャー
川を下って、四国の激流で育まれてきたカルチャーを支援できる!
2020.07.18 Sat
大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー
徳島・高知県をまたぐ吉野川中流域の峡谷「大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)」。その谷底の激流に魅せられ、リバーガイドが移住し始めたのが約30年前のこと。以来、ラフティングはこの超過疎の山里で観光の目玉になり、2017年には日本初のレースラフティング世界選手権の開催地にもなりました。
大歩危小歩危の峡谷が続く吉野川中流域。
しかし新型コロナ感染症によって、すばらしき自然河川ゆえの産業と、スキルと個性に恵まれたリバーガイド社会に暗雲が。この春、顧客激減のため閉店したラフティング会社もあるのです。
吉野川の川下りツアーが、割引プランで楽しめることに
この状況に、数社のラフティング会社がある大豊町(高知県)では独自に支援策を決定。通常よりも割引価格で川下りツアーに参加できることになりました。
川面では常に「はじめまして」な空気が頬をなでるし、カヤックやダッキーなどの川下りは密になりにくいレジャー。川に飛び込めばいろんなものが洗い流されます。日々の感染防止に努め、良好な体調を維持し、あなたが暮らす地域社会の風向きがよくなったら、息抜きの候補にして欲しいところです。
渇水か増水でなければ吉野川の水質はこんな感じ。
というわけで、地元パドラーでもあるライター大村おすすめのラフト・ダッキー・SUP・カヤックツアー会社を紹介しましょう。小規模(ほぼ個人経営)ながら経験豊富なリバーガイドが、大歩危小歩危の激流や、その上流域にあるやや穏やかだけど急流に恵まれた区間をエスコートしてくれます。
■Lucky Raft(ラッキーラフト)
Lucky Raft・宇都宮信昭さん。なぜかガイドネームは「レレレ」で、仲間は「レレさん」と呼んでいます。Akimama2019.6.29のインタビュー記事にも登場してくれました。
リバーガイド歴は20年、癒し系キャラの宇都宮信昭さんが代表のラッキーラフト。川下りツアーのメニューはラフティング、SUP(サップ)、ダッキーなど。なかでも人気なのがファミリーで参加できるラフティングとダッキーコース。大歩危小歩危よりも上流に位置する、比較的穏やかで安全な、でも初心者にはエキサイトな区間を下っていきます。もちろん風景も水質もすばらしい。ツアーオフィスへは高知龍馬空港からレンタカーと高速道利用で約30分と、アクセスのよさも魅力です。近隣にはゲストハウスもあり。
大歩危小歩危よりも上流域で開催、ダッキーコース。(画像提供/Lucky Raft)
【Lucky Raftのツアーの割引額や日程などの条件】
*期間は2020年7月1日~2020年12月末。平日(土日祝日と8/8~16以外)の各ツアー料金を1人3,000円引き(先着100名まで)。詳細と予約はLucky Raftホームページから。
リバーサップ(SUP)は初めてでも楽しめるコースを用意。(画像提供/Lucky Raft)
■THE BLUE EARTH(ザ・ブルーアース)
THE BLUE EARTH・藤井勇介さん。
ラフティング、カヤック、SUP(サップ)となんでもこなし、大歩危小歩危を熟知したパドラー藤井勇介さんのツアー会社。なかでも注目は、初心者でも急流にチャレンジできるパックラフトツアー。これを漕いで荒瀬を無事制覇すれば、「おれ(わたし)けっこうやるよね!」という日常では得がたい達成感が。大歩危小歩危の激流とその上流域がフィールドです。割引率は最大50パーセントオフですが、割引定員数は少なめなのでご注意を。
パックラフトは、初めての人向けの体験コースから、経験者対象のガイディングコースまである。(画像提供/THE BLUE EARTH )
【THE BLUE EARTHのツアーの割引額と日程などの条件】
*期間は2020年7月1日~2020年12月末。各ツアーの料金を最大50パーセントオフ。各ツアーに割引の定員数あり。仁淀川でのツアーには割引が適用されない。詳細と予約はTHE BLUE EARTHホームページから。
こんなきれいな川を、ときにのんびり、ときにドキドキしながら下ってみない?(画像提供/THE BLUE EARTH )
川と人をつなぐビジネスとカルチャーを、未来へ
大歩危小歩危のリバーガイドにとって、こんな瀬を下るのは日常。
吉野川の大歩危小歩危が商業ラフティングのメッカになるまでいろいろありました。たとえば、受け入れる地域では、戸惑いや厳しい声が多かったことも。リバーガイドは「アマゾンで樹上生活した」「南米の滝をカヤックで下って顎を折った」など、武勇伝や海外経験が豊富な冒険野郎だらけ。ふつうの移住者よりずっと得体のしれない人間を迎えるのだから、無理からぬことではありますが……。また、大増水などでツアーが何日も中止になったり、オフシーズンは出稼ぎするしかないなど、ラフティングで食っていくのは容易じゃないものでした。
リバーガイドたちはこんな家に暮らしていたりする。
しかし、リバーガイドたちの激流への思いは強かった。彼らはパートナを呼んだり見つけたりして家庭をつくり、超過疎の山里に子どもの声を届けました。空き家に入居し、いい感じにセルフリフォームして、集落に灯る明かりを少しだけど増やしました。ゲストハウスやカフェを開業する人もいて、賑わいを生んでいきました。
国際化も進みました。オセアニアや北南米などからリバーガイドが働きに来るようになり、ラフティングツアーに参加する外国人旅行客も増加。インバウンドなんて言葉がメージャーになる以前で、日本のザ田舎+外国人という風景はなかなか刺激的でした。
今回紹介したラフティング会社がある大豊町の風景。脚力に自信があるならサイクリングのフィールドとしてもおすすめ。
なかでも、リバーガイドがもたらした最良なことは、たくさんの人に川のすばらしさを伝えたこと。「川ってきれいなんですね!」とか、「川で初めて泳いだ、泳げるんですね!」というツアー客は多く、そのうちの何割かは日本の川の味方になったはずです。
ひろい川面でのんびりといかがですか?
大変な世の中ですが、ひと息ついたら、やや浮世離れしたリバーガイドたちといっしょに吉野川を流れてみませんか? 心のモヤモヤがすっと晴れていきますよ!