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世界気候アクション0925 声を上げる若者たち、聞く耳を持たない大人たち。なぜ、今行動しないのか?
2020.10.10 Sat
Taishi Takahashi フォトグラファー
9月25日に世界気候危機アクション(Global Day of Climate Action)が世界各地で開催され、154カ国、計3,500の都市や町の賛同者たちが参加した。760万人以上が参加し、気候危機の影響を受けやすい若者を中心に具体的な解決策を訴えた「グローバル気候マーチ」から約1年、今回は新型コロナウィルスの影響に配慮して、多くの人を動員したマーチ(行進)ができないなか、シューズアクションやSNSによるメッセージの拡散という手法を展開。若者や参加者たちは今、何を思うのか、アクションの当日、東京の国会議事堂前の様子と参加者の声をレポートする。
日本では国家議事堂前をはじめ、北は札幌、南は沖縄まで、日本各地32都道府県75ヶ所でアクションが行なわれた。訪れたのは国家議事堂前、合計で116足もの靴とメッセージカードが並び、多くの賛同者や報道陣が集まっていた。呼びかけを行なったのは、先日、Akimamaでも紹介したFriday For Future。
彼らが大人たち(政府)に求めているのは次のことだ。
What Do We Want ? ▼私たちが求めること▼
私たちはNDC(温室効果ガス削減目標)の引き上げのために、エネルギー政策決定に関わる会議を重要視しています。コロナ禍からどうグリーンに復興していくかは、ここでの議論も含め、私たちにかかっています。
1.5度目標の達成と早急な対策の実施
*5年後ではなく今
2015年に、世界の196カ国が参加して採択された国際的な気候変動解決の取り決め、いわゆるパリ協定では、2020年以降の気温上昇を1.5度に食い止めるという目標を掲げています。そして、来年11月に予定されている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、各国のCO2などの削減目標を引き上げて提出する5年に1度のタイミングです。気温上昇を1.5度に以内に抑えるためには、5年後ではなく今、日本が掲げる温室効果ガスの削減目標(通称NDC)を「大幅に」引き上げることが必要です。
*早急な議論開始と政策転換
そのためには、削減目標の土台となるエネルギー政策の議論を早急に開始し、特に再生可能エネルギーの100%実現に向けた抜本的な政策転換を求めます。
公正な政策決定プロセス
*省庁横断型の議論
従来の構造から脱却し、各省庁・内閣府で気候変動対策を最重要課題と捉え、省庁横断的な議論を進めるための体制を整えることを求めます。
*公正性と透明性の確保
参加するメンバーの性別や年齢の偏りを自覚し、公正なる人員構成による議論を求めます。再生可能エネルギーの専門家の参画や機能的な市民参加体制の整備などにより、科学の知見と気候変動の影響を受けるすべての人々の意見を反映させることを求めます。エネルギー政策に関する委員会のメンバー選定の透明性を確保することを求めます。各審議会の会議のライブ配信、録画映像のYouTube投稿を限定公開から一般公開にすることを求めます。
若者の意見の尊重
*制度の見直し
若い世代ほど気候危機の影響を受けやすいことから、選挙権のない人を含む若者全体の意見をくみ取る制度を設けることを求めます。
*責任ある行動を
現行の政策では今までの世代が享受してきた当たり前の生活は保証されません。今の日本のエネルギー政策が大きく影響を及ぼす若い世代の将来に対して責任ある政策をとり、地球環境に最大限配慮した長期的な社会のあり方を目指した内容にすることを強く要求します。
当日はあいにくの雨だったが、参加者たちは思い思いに持ち寄った靴とメッセージを並べていた。地球が危機なのだから、天気の良し悪しなんて言ってる場合じゃない。そんな意気込みが感じられるくらいの熱量が国会議事堂前を異質の空間に変えた。
「環境NGOの勉強会に参加した時に、日本が石炭火力を輸出していることや、世界が科学に基づいた行動をとれていないと聞いて衝撃を受けました。それまでは状況はひどいけど、誰かが何とかしてくれると思っていましたが、当事者である私たちが声をあげなかったら未来を守れないということに気づいて、今日参加しました。今のリーダーたちに任せていたら、未来は守れない。」
(高校生の参加者)
「それはそうだと思う。(怒りや焦燥に駆られ、環境危機への対策を求めて行動する若者たちに対して)大人の責任として、アクションを加速させなければいけない。危機感を醸成するという意味ではこういったムーブメントは必要だと思います。」
(社会人の参加者)
参加者に話を聞くと、多くが環境危機を“自分ごと”として捉え、深刻化する気候変動に危機感を募らせ、何か行動を起こさなければという衝動に駆られているようだった。現場では若者たちによるスピーチも行なわれ、それぞれが、“なぜ今行動しないのか” と切に訴えた。
街頭スピーチをした若者たちの声
「若者対大人というように報道されがち。そんなことやっている場合じゃない。みんなの問題。」
「今年の夏は暑い日が続いて大雨が降った。それを気のせいだとは思えない。」
「スウェーデンで気候変動対策を求めて座り込みをしている子たちを見て、危機感を感じた。自分も何かしなければいけないと感じた。」
「日本人は自己主張が弱い。こういう場に来るだけでも熱量がいるけど、簡単にできる自己主張もある。例えば、投票にみんな(特に自分と同世代の若者は)行くべき。選択するのは消費者。自分たちの未来に興味を持ちましょう。」
「気候変動の被害者だと思っていたが、気候変動の加害者でもあることに気づいた。誰かの犠牲の上に豊かな自分の生活があると知ったとき、行動を起こさずにはいられなかった。将来の子どもたちに自分たちのツケを回したくはない。気持ちがあるだけでは何も伝わらない。行動にして示す必要がある。解決策の一部になりたい。」
また、“自己主張・自己表現という言葉をイベント中、よく耳にした。
「社会に対して何もできない無力な自分、レールを敷かれた人生を生きている感じが嫌だった、そんなときに Friday For Future の活動を知って参加した。」
インタビューをさせてもらったひとりが、行動を起こすきっかけを話してくれた。ひとりの若者の意見としては耳を傾けてもらえないことでも、団体としてなら伝わる。Friday For Futureは、そんな思いを持った若者たちにとって、社会に自由な発言のできる開けた場でもある。
スピーチ中にスーツ姿の社会人が何度か目の前を通り過ぎた。何かイベントをやっているので、邪魔にならないようにといった感じで、目の前をサッと早歩きに通り過ぎて行く。スピーチの内容とあいまって、その姿がどうしても若者たちの声を聞こうとしない大人たちのように見えてしまい、とても印象に残っている。
若者たちは行動し続けている。若者対大人というように報道するのはやめてほしいという意見もあったが、ここではあえて対比させてもらいたい。なぜなら、社会的に決定権のある立場にいることが多い大人だからできることがあるはずだ。日本では大雨や猛暑、世界では悲惨な山火事が頻発し、今年の夏、北極海の海氷は、観測史上2番目に小さい面積を記録するなど、気候危機の加速はとどまることを知らない。
SNSでの呼びかけ、それぞれの消費行動や投票など、日常でも一人でもできることはたくさんある。日本だけでなく、世界のメディアを通して、今こそ大人たちは、若者たちの話を聞き、ものごとを相対的に捉え、“正しく危機感を持ち、行動するとき”ではないだろうか。
残された時間はわずかです。今、行動を起こしてください。