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世界自然遺産への登録が決定した西表。西表の自然と文化を3年間追い続けたドキュメンタリー映画『生生流転』がYouTubeで無料公開。
2021.07.29 Thu
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
西表島がユネスコの世界自然遺産に登録されることが決定した。東洋のガラパゴスと呼ばれ、生物の多様性に満ちた島には、今まで以上に観光客が訪れるだろう。
亜熱帯の豊かな自然が注目を集めているが、この島には長い時間をかけて育まれた文化もしっかりと根付いている。1479年に記された朝鮮半島の記録では、西表の祖納集落の名前が掲載されているので、少なくとも500年は、人間の暮らしがこの島では営まれている。
西表島の自然と文化を3年にわたって記録したドキュメンタリー映画『生生流転』が7月22日からYouTubeで公開されている。監督・撮影・編集を務めたのが、石垣島出身のシネマトグラファーの仲程長治さん。美しい西表の自然と共にカメラが追い続けたのが、石垣金星さん昭子さん夫妻だ。金星さんは、島の生活や行事と共に生きてきた唄を若い世代に伝え、島ならではの農業にも勤しんでいる。昭子さんは、島の自然と暮らしに寄り添いながら、自然素材を使った布づくり続けている。昭子さんは龍村仁監督の『地球交響曲第5番』にも出演している。映画の中で、二人はこんな言葉を残している。「島と共に」。西表という島の圧倒的な存在があり、人間がそこにいさせてもらっているだけ。自然に委ねて逆らわないという生き方にこそ本当の豊かさがある。
「僕たちが出逢った自然や人は、西表島の大いなる営みのほんの一部分に過ぎない。この島の『本当の素晴らしさ』を少しでも多くの人に知ってもらいたいと思う。文化をつくるのは人間だし、それを壊すのもまた人間だ。いつまでも自身が『知らない』ということを『知っている』。 虚な来訪者の一人としてこの島と繋がっていたい。そして『私たちにこの自を少しだけ分けてくださいね』という気持ちで、西表島を訪れる人が増えることを願いながら、この映画を撮り続けてきた」と仲程監督。
映画では、島に流れ着くプラスチックごみなども取り上げている。自然も文化も、失ってしまってから再構築するのは難しい。だったら、今、何を残していかなければならないのか。何が大切なのかを知るきっかけを、この映画は教えてくれている。
写真 = Choji Nakahodo
監督・撮影・編集:仲程長治
編集補佐・脚本:松島由布子
プロデューサー:竹田尚志/松島由布子/鈴木照雄
映像提供:笠井雅夫/森本孝房/菊池篤/西表野生生物保護センター
ドローン撮影:DJI JAPAN
題字:長場雄
プロジェクトマネージャー :井上泰子
制作:Us 4 IRIOMOTE SUDERU
特別協賛:KEEN JAPAN
主題歌:Ryu Matsuyama「Roots, trunk, crown」
音楽:金城あかり/森朗/加納由美/仲嶺良盛
2021/日本/カラー/16:9 /118min
©︎Us 4 IRIOMOTE