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【NEWS】カンヌ映画祭受賞作「帰れない山」が描くアルプスの絶景と2人の青年の友情
2023.04.25 Tue
北イタリア モンテ・ローザ山麓を舞台にした「帰れない山」というタイトルの映画が5月5日に公開されるという。
「帰れない山」とは、どんな山だろうか。
アウトドアファンたちが想像するのは、未踏の地への決死の登山かもしれない。
この映画が描くのは、山頂に向かって猛進する猛々しい登山家たちの姿ではなく、生き方に迷う2人の男性たちが自分の居場所をその手でつくり上げていく姿だ。アルプスの自然をダイナミックに力強く映し出しながらも、まるでガラス細工のように繊細に人間の心の成長を描いたヒューマンドラマなのである。
主人公の少年ピエトロは、都会っ子。山を愛する両親に連れられ、夏の休暇をアルプス山脈で2番目に高いモンテ・ローザ山麓で過ごしていた。そこで出会ったのは過疎化が進む村で最後の子どもといわれる牛飼いの少年ブルーノ。対照的な環境で育ったふたりだったが、大自然のなかを駆け巡りあっという間に親友となる。
しかし、やがて休暇は終わり、ふたたびそれぞれの日常へ戻っていくのだった。
時が流れ、ピエトロは仲違いしたまま父を亡くし、孤独に苛まれた心を抱えたまま自分の居場所を求め、ふたたび村へ戻ってくる。そこでブルーノと再会し、ピエトロは亡き父がこの地に託した夢を知るのだった。
親友にあこがれを抱きながらも自分の生き方が定まらないピエトロと、生まれ育った山を愛するがゆえに生き方が狭まっていくブルーノ。ふたりはかけがえのない友情を育みながら、やがて自分の生きる道を見つけていく。
「帰れない山」は世界最高峰の権威をもつカンヌ国際映画祭 審査員受賞作品だ。イタリア文学の旗手パオロ・コニェッティによる原作は、39言語に翻訳。本作品の映画化は、全世界の人が待ち望んでいたものだろう。
監督・脚本はベルギーの俊英、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンと妻であるシャルロッテ・ファンデルメールシュ。
主人公のピエトロ役は、『マーティン・エデン』で第75回ヴェネツィア国際映画祭の男優賞に輝いたルカ・マリネッリ。親友のブルーノ役は、イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で主演男優賞の受賞歴を持つアレッサンドロ・ボルギだ。
端正な顔立ちにたっぷりと髭をたくわえたふたりのワイルドな男たちが、アルプスの山々を背に佇む姿はため息が出そうなうつくしさだろう。
あらためて、このタイトルに込められた意味はなんだろうか、と気になってしまう。
だれにとって、なぜ「帰れない」のだろう。
その答えは、きっと映画鑑賞後に、やわらかな感動とともに心にストンと落ちてくるにちがいない。
第75回 カンヌ国際映画祭 審査員 賞 受賞作
第67回 バリャドリッド国際映画祭 最優秀撮影賞、ブロゴス・デ・オロ賞受賞
監督・脚本:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン『ビューティフル・ボーイ』&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
原作:「帰れない山」著:パオロ・コニェッティ
翻訳:関口英子(新潮クレスト・ブックス)
撮影:ルーベン・インペンス『TITANE/チタン』
出演:ルカ・マリネッリ『マーティン・エデン』、アレッサンドロ・ボルギ『ザ・プレイス運命の交差点』、フィリッポ・ティーミ『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』、エレナ・リエッティ『3つの鍵』
原題:Le Otto Montagne/2022/イタリア・ベルギー・フランス/イタリア語/147分/1.33:1/日本語字幕:関口英子/配給:セテラ・インターナショナル
©2022 WILDSIDE S.R.L.-RUFUS BV-MENUETTO BV-PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS-VISION DISTRIBUTION S.P.A.
http://www.cetera.co.jp/theeightmountains/
2023年5月5日(金)
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋 ほか全国公開