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旅人必携! 重量88gの焚火台。エンバーリットの「ファイヤーアント」
2016.10.15 Sat
藤原祥弘 アウトドアライター、編集者
野外で拾える小枝を燃料とするウッドバーニングストーブ。これまで各社からさまざまな構造のものがリリースされてきましたが、その携行性と軽さ、使いやさでひとつ頭抜きん出ているのが「エンバーリット」社です。
スリットの入った5枚の金属パネルを組み合わせるだけのシンプルな構造はもちろんのこと、ストーブ下部の開口部から燃料を追加できるので煮炊きのしやすさが段ちがい。登場早々、ウッドバーニングストーブ界の大定番となりました。
そのエンバーリットからリリースされ、ミニマリストから圧倒的な支持を受けているのが「ファイヤーアント」。
ポケットにするりとおさまり、本体重量はわずか88g。それでいて燃焼効率は必要十分という超軽量ストーブ。ファイヤーアント=火蟻(小型だが強い毒を持つ)の名の通り、小粒でもピリリと辛いストーブを試してみました。
圧倒的な軽さとコンパクト性能
ファイヤーアントを構成するのは5つのパネルと固形燃料を載せるためのプレート1枚。収納時の厚みはわずか数mm、収納ケースと合わせても重量は102gしかありません。なんて軽薄なヤツなんだ!
簡単・スピーディーな組み立て方式
組み立てはプレートの四隅にあるスリットをお互いに組み合わせていくだけ。最後のパネルのはめ込みにちょっとコツがいりますが、覚えてしまえば1〜2分で組み上げることができます。
燃料は野山で拾える小枝
ファイヤーアントの燃料は野山に無尽蔵にある枯れ枝。着火を助ける火口(ほくち。植物の綿毛や穂など)、直径1〜2mm程度の極細の枝、鉛筆程度の枝、親指ほどの枝を用意できるとスマートに火を大きくできるでしょう。
着火から安定まで
左のカットが着火直後。右は着火から20秒後。最初に用意できる火口と枝の量・状態にもよりますが、熱を逃さず酸素を取り込む構造によって、立ち上がりから火力は十分に安定しています。
湯沸し実験
着火から2分、上面からはみ出ていた枝が焼け落ちて、サイドの開口部から入れた枝にも火が燃え移った時点でクッカーを配置。気温と水温は20℃、無風の状態で、200ccの水を沸騰させるのにかかった時間は3分30秒でした。小枝を燃料とするストーブとしては驚きの火力です。点火から沸騰までは6分弱。枝を拾い集める時間を加えても用意から10分程度でお湯を得ることができます。
安定から消火まで
火床の温度が十分に高まれば、サイドから太めの枝を2〜3本程度差し込むだけで火力の維持が可能。燃え尽きた分を補うように少しずつ押し込み続ければ、長いままの枝を効率良く燃やし続けることができます。上手に燃焼させれば、残るのは白い灰と少々の炭だけ。ちょっと地面を掘って埋めるだけで処理できます。
雨の後には固形燃料で
小枝をあてにして山に入ったものの、雨に濡れて乾いた薪が手に入らない! というときは、補助プレートを挿入して固形燃料を使うことも可能。ファイヤーアントをメインの火器にして旅をするなら、バックアップとして固形燃料は用意したほうが良いでしょう。
まとめ
気温が高めで無風、良く乾いた薪という好条件でしたが、少々シビアな状況でも十分使える性能をファイヤーアントから感じました。旅慣れた人なら、このストーブだけで数泊のトレッキングの煮炊きを無理なく楽しめると思います。低温下や強風時にも、適切に防風すれば十分な火力を得られるでしょう。
泊りがけの旅の煮炊きにウッドバーニングストーブを使う自信がない人は、渓流釣りや日帰りのトレッキングなどに携行すると、普段の野遊びをより豊かなものにできるかもしれません。
ここ一番のポイントに入る前にお茶を淹れて心を鎮める、トレッキングコースのお気に入りの空き地で料理する、そんな使い方がよく似合うストーブです。もちろん、ひとり旅や少人数でのキャンプでも、小さな焚火台として活躍します。
化石燃料を使えば欲しいタイミングにすぐに火が手に入りますが、ひと手間かけることでより深く自然を楽しめるのがウッドバーニングストーブの良いところ。
周囲を観察しながら火床に適切な場所を探し、乾いた薪を集め、風と相談しながら火を維持する。そんな手間が加わるだけで、いつもの釣行や山行がより深いものになるはずです。
(※ウッドバーニングストーブは火の使用が許されている場所で使い、残った燃えさしの処理にも注意しましょうね!)
エンバーリット/
ファイヤーアント
¥12,500+税
材質:チタニウム
使用サイズ:ストーブ上面/6.8×6.8cm ストーブ下面/7.7×7.7cm
高さ:12.7cm
パネル厚さ:0.3mm
収納サイズ:14.5×11.5cm
重量:88g
問い合わせ先:モチヅキ