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ミレーのトイ ライト コンポジット ジャケットは、究極の行動着だ!
2016.10.21 Fri
宮川 哲 編集者
日に日に寒さの厳しくなるこの季節、山のウェア選びに頭を悩ませている人も多いのでは? ウェアリングの基本は、アンダー、ミッド、アウターの組み合わせ。行動中や休息時、就寝時などの各シチュエーションで、この3種類のウェアをいかにして上手に選び合わせ、快適を求めることができるのか……それは山登りの技術のひとつでもあったはず。
でも、そんな細かなルールなどポイッと吹き飛ばせるような、ジャケットをミレーが発表している。トイ ライト コンポジット ジャケットという名のこのモデル。見た目は薄手のダウンジャケットといったところであるが、いやいや、じつはダウンではなく、化繊のインシュレーション。
この秋冬シーズンのミレー最新モデル。トイ ライト コンポジットジャケットは、ただのインシュレーションじゃない!!
インシュレーションといえば、従来はミッド=保温着として認識されるジャンルであるが、こいつはただのインシュレーションじゃない。保温着であることは間違いないのだが、「保温をしつつ通気性を確保する」という離れ技を併せ持ったウェアなのだ。
たいていの保温着は、あたたかさを追求する。たとえば、中綿素材自体が発熱してみたり、ロフトのある高価なダウンを使ってデッドエアをたんまりと溜め込んでみたり。どちらもあたたかさについては申し分もないのだが、ともすると「暑過ぎる」ことが多々。とはいえ、インシュレーションの役割としては、それでも十分なところもあったはず。
なぜなら、行動中にインシュレーションが必要な状況はほぼなく(厳冬期の雪山登攀や高所登山は別の話ですが)、必要性が生まれるのは稜線での休憩時や山小屋で過ごすときなど、「静」の部分がメインであるから。
インシュレーションを着たままの行動では、すぐに暑くなり過ぎてしまうため、ともすると発汗から身体の冷えを誘発する遠因にもなりかねない。そのため、保温着としてのインシュレーションは、行動着とは別にバックパックの中にしまっておく必要があった。軽いとはいえ、荷物ではある。
荷物となってしまうなら、インシュレーションを行動中にも活躍するウェアにできないものか……。そして生まれてきたのが、このジャケットだ。行動中に必要な適度な保温をしつつ、余計な熱を外へ外へと送り出す。入山から下山まで、登山中のさまざまなシチュエーションに対応でき、つねに身につけていられるウェアである。
トイ ライト コンポジット ジャケット。
さて、スペックを確認してみよう。ミレーの発表している特徴は、
・ストレッチと保温性にすぐれた3次元中綿 3DeFX+
・高いストレッチを誇るフレックススキンプラスとのハイブリッド構造
・袖取り外し仕様でベストとしても着用可
・サムホール付きカフ
・チェストジップポケット、ハンドウォーマージップポケット
・フロントジップ。調整可能な裾 ドローコード
ここで重要なのは、上ふたつの項目。
まずは、ストレッチと保温性にすぐれた3次元中綿3DeFX+。この3DeFX+とは東レが開発した化繊の中綿素材。複雑に絡み合った異なる螺旋構造のポリエステル繊維を使うことで、かなりの嵩高を確保。また、螺旋だけにストレッチ性も高く、バネが元に戻るのと同様に螺旋の復元力による圧縮回復性もとてもよい。そして、素材にバッファーがあるので、糸切れがないという特性を持っている。
こちらが、東レの3DeFX+のイメージ図。コイル状の中綿繊維が複雑に絡み合っている様子がよくわかる。これが、あたたかさと通気性、ストレッチ性を確保する仕組み
こんな中綿を使っているので、ダウンなどによくある毛抜けなどを気にする必要性もなく、シェル素材も自由に選ぶことができた。そこで、シェルには通気性を確保しつつも動きやすさを追求し、ストレッチ性の高い薄手のナイロン素材を使用。
さらには、ここが山を知り尽くしたミレーらしい選択なのだが、とくに汗のかきやすい背面部には、フレックススキンプラスというストレッチ性と通気性に特化したソフトシェル素材を合わせている。つまり、寒さの感じやすい前身頃と腕の部分にのみ3DeFX+の中綿を入れ、それ以外の部分にはちがう素材を併せるというハイブリッド構造を実現しているのだ。
後身頃には、中綿を入れずに4wayストレッチのソフトシェル素材、フレックススキンプラスを採用。また、3DeFX+の中綿を入れた前身頃と腕の部分には通気性がよく薄手の20Dナイロン素材を使っている。これが、ハイブリッドといわれるゆえん
昨今、ミレー以外のブランドでもこのハイブリッドを採用するモデルを散見するが、ミレーのポイントは中綿に3DeFX+を使っているところにある。なぜなら、この螺旋構造の中綿はデッドエアにあたたかい空気を溜め込むのと同時に、素材自体のストレッチ性能を活かして余計な熱を押し出す機能も持っている。シェルに通気性を持った素材を選ぶことで、保温と通気という相反する性能を両立させることができたのは、そういった理由からだ。
もうひとつ、ここだけでは終わらないのがこのジャケットのすごいところ。それは、前出のスペックにもある「袖取り外し仕様でベストとしても着用可」の部分。刻々と変わる山の状況に合わせ、さらに暑ければ腕をもぎ取ってしまおう!! なんて、どこまでも現場主義のウェアである。
袖の取り外しができる仕様になっているのもこのジャケットの特徴。ジッパーでの着脱式で、取り外した袖の部分には、ちゃんと「L」「R」の表示が付いている。細かなところにも気をつかっている
また、防水ではないものの撥水性も兼ね備えており、ある程度の雨露には対応可能。小さく丸めれば、これくらいのサイズに
このトイ ライト コンポジット ジャケットには特別バージョンがある。一般には販売されないモデルであるが、なんと、白馬山案内人組合のガイドチームの正式ウェアとして採用されている。これも性能の高さの証といえる
行動着としてのインシュレーション。寒くなってきたこの季節、活躍の幅はとても広い。一枚あればどこまでも重宝しそうなこの一着。なんとしても、オススメしたい。
■Millet【トイ・アクティブインシュレーション・シリーズ】
http://youtu.be/88VjjgtW_mA
■ミレー/トイ ライト コンポジット ジャケット
27,000円+税
サイズ:XS~XL
素材:本体:/20Dリップストップ ナイロン100% 耐久撥水、後身切替部/フレックススキンスプラス、ポリエステル100% 耐久撥水、中綿/3DeFX+® ポリエステル100%
重さ:270g
カラー:Black/Noir、Estate Blue