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<老舗山専さかいやスポーツ>軽量、コンパクト、マニアック!いま、「シートゥサミット」がアツい!
2017.05.12 Fri
東京・神田に店を構えて60年。
多様なブランド展開と取り扱い数に定評のある
「さかいやスポーツ」の高橋典孝さんが
半年の沈黙を破りAkimamaにカムバック!
今回は高橋さんが注目しているメーカー
「シートゥサミット」のお話です。
不惑になって思う。「シートゥサーミット」が好きだ。もう、迷わない。
「シートゥサミット」が気になりだしたのは一昨年頃のこと。オシャレさんに人気の、パタパタって折りたためるカラフルな食器類「Xシリーズ」の登場で俄然その存在感が大きくなった。
多くの人はごく最近まで「シートゥサミット? あー、あのドライバッグとか、顔に被る蚊帳のメーカーだよね!」って感じだったのではないだろうか。
恥を忍んで告白しよう。実は私もそうである。
私の勤める「さかいやスポーツ」の棚でも、シートゥサミットはそのような役割を果たしていた。それが「Xシリーズ」の登場によって「蚊帳などを作っているニッチなメーカー」→「クールなギアメーカー」へとイメージが一転した。
しかし、シートゥサミットがオシャレになっても(いや、昔からイケてたのに、それに気づいてなかっただけなんだけど)、私とシートゥサミットの間には溝があった。むしろその溝は、オシャレになったことで深まったかもしれない。
それがなぜ、こんなに好きになっちゃったのかというと、私がファストパッキングスタイルに凝り始めたからである。
私がULなアイテムで身を固め、ファストパッキングを繰り返していたときのこと、いつも頭を悩ませていたのは「寝袋」の選定だった。
行く山、行く時期によって気温の条件はさまざま。登山用品店に勤めているとはいえ、すべての条件に合わせて寝袋を揃えていたら、懐はスッカラカンになってしまう。
できれば、春〜秋まではひとつの寝袋でカバーしたい。もちろん軽量・コンパクトなものがいいから中綿はダウン一択。しかし、ダウンの弱点である濡れへの弱さは克服しているものがいい。
軽量・コンパクトで暖かく、中綿はダウンだけど濡れに強い。こんな都合の良い条件をあげても、そんなの見つからないよなーと思っていたら、あるではないですか! 羽毛が透けるほど薄い布地にダウンを封入したシートゥサミットの「スパーク」が!
シリーズ中、いちばん軽い「スパーク1」なら、総重量350gのうち180gがダウン。しかも使われているのは850+の撥水ダウン! 濡れに強く、必要最低限のつくりでコンパクト。しかも収納袋はコンプレッション仕様だ。
そしてなんといっても気になるのはそのカラーリング。透明感のあるホワイトの、ちょっと妖艶なカラーリングに僕はやられてしまった。
コンセプトはキワキワなのに、見た目はスケスケ。ミニマルな作りでも性能はスポイルせず、デザインも秀逸。
スパークの発見によって気になりだしたシートゥサミット。調べてみると製品全般において軽量・コンパクト・実用性を意識しているらしい。確かに、海外メーカーにありがちなおおざっぱさがない(失礼!)。商品群を見渡してみると、日本で企画されたかのような隙のないUL的なアイテムも多い。
スパークの入手と並行して、私はまた別のシートゥサミットの製品のユーザーとなった。きっかけは昨年から始めたテンカラである。
ファストパッキングスタイルで山を巡りながらテンカラをするために、新しいアイテムを買い足していたときのこと。シートゥサミットからおもしろい製品が出ているのを見つけた。
「モスキートネット」である。モスキートネットといえばシートゥサミットの大定番じゃん、何を驚いてるんだ? なんて思うことなかれ。なんと「シートゥサミット」はモスキートネットだけで3種類もラインナップしていたのである!
その3つを並べてみよう。写真は上下ともに右から、
①ナノモスキートヘッドネット 11g ¥1,296
②モスキートヘッドネット 30g ¥1,080
③ウルトラファインメッシュヘッドネット 23g ¥1,296
である。
恥ずかしながら3種類ものラインナップがあることを知らなかった僕は②の「モスキートヘッドネット」を購入して使っていた。そして僕はこのアイテムに満足していた。
収納サイズも十分小さく、トレランパックのエナジージェル用ポッケに入るからサッと取り出して使える。重さも30gとまったく気にならない。だから僕はテンカラ山行の時はいつもコレを身に着けていた。
しかしあるとき①と③の存在に気づいて仰天した。まずは③。収納サイズはやや大きいものの重量は②にくらべて7g軽い。
そしてネットを取り出してみるとその異様なまでの細かさが目に付く。なんとこのメッシュ、②の4倍細かいらしい!!
僕は②のメッシュに満足していたが、オーストラリアでは③の細かさが必要な虫がわんさかいるのだろうか? それはそうとしても、7g重い②のメリットは本体価格で¥200安い価格だけなのか? だったら②を作らない方がメーカーとしてはムダが省けて良いんじゃないか? 頭の中は?だらけになった。
そして極めつけは①。もうその収納サイズがめちゃくちゃ小さく、そして軽い!! 開いてみればメッシュも②よりは細かそうだ。そしてお値段は③と同じ。
小っさ!
謎は深まった。
これって圧倒的に軽量・コンパクトで値段もそれほど変わらない①だけを作ればいいのでは!? ヘッドネットだけで3種類ものラインナップ。「シートゥサミットは蚊帳のメーカー」という僕らの認識は、あながち間違いではなかったのかもしれない。
僕の勝手な偏見だが、オーストラリア人ってもっと大らかでゆったりとしていて、細かいことなんてまったく気にしないイメージがあった。
だからここまで細部にこだわる製品を3種類もリリースしているとは思わなかった。いやいや、オーストラリア人、めっちゃ細かいじゃないですか(笑)。
しかし、である。もしもシートゥサミットが、蚊帳や寝袋に限らず、すべてのアイテムにこの細やかさを発揮していたとしたら……これは一大事! アウトドア界には僕らの気づいていなかった大いなる鉱脈があったのしれない。
ウエストオーストラリア・パースの街で生まれ、サバイバル要素と実用性を兼ね備え、ときにマニアックなアイテムを放つ「シートゥサミット」。
今年から日本の輸入代理店もかわり、日本での取り扱いアイテムが拡大するとのこと。さかいやスポーツでも今まで以上に注目していきますよ!
虫がいたって、やっぱりいいですよね、山は!