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カリマーの “新” アイテム「ultimate 35」は、積雪期のアルパインクライミングに対応するリュックサックだ!
2019.11.13 Wed
河津慶祐 アウトドアライター、編集者
何歳になっても “新発売” とか “新商品” とか、新しいものにはワクワクするものだ。山道具でいうと、どんな機能をそなえているのか、どんな素材なのか、形は? 色は? 重さは? と興味が尽きない。
以前の記事で紹介したが、イギリス発のアウトドアブランド「カリマー(karrimor)」より2つの新レーベルが発表された。“新” レーベルというだけでも気になって仕方ないのに、当たり前だが、さらに “新” アイテムがどんどんとリリースされている。
瑞牆山のマルチピッチクライミングでの一枚。35ℓだと、カムも含めた登攀具にロープまでも収納できる大きさ。背負い心地がよく、長いアプローチでも疲れなかった。
その中のひとつ「ultimate(アルティメイト)」レーベルから発表されたリュックサックの「ultimate 35」を紹介しようと思う。
この「ultimate」というリュックサックは、もともとクライマー御用達であったカリマーが、再び “クライミング” を追求しはじめるためになくてはならない一品ではないだろうか。1979年に発売された名品「ハストンアルピニステ」の流れをくんだクライミング用リュックサック「alpiniste」が以前まで販売されていたが、現在は販売が終了している。このころのアルピニズムのDNAを引き継いだのが「ultimate」レーベルなのだ。これから、また新たな一歩をカリマーは踏み出そうとしている。
「ultimate」は、60・35の2サイズで展開する、レーベル名を冠しているリュックサックだ。生地は軽量で高強度、そして耐水性にもすぐれている。
「ultimate 35」の形はシンプルな一気室&雨蓋付き。この容量では、雨蓋がないものもあるが、これはさまざまなシチュエーションに対応できるよう、取り外し可能な雨蓋にし、軽量化をはかれるようになっている。
サイドにはコンプレッションベルトと、登攀のジャマにならない程度の小さなポケットが付属し、ストックの先を入れ、不意に落ちてしまうのを防ぐようになっている。もちろん、アックスホルダーやロープストラップもあり、積雪期のアルパインクライミングに必要な装備は備えられている。
特筆すべきなのは、ショルダーハーネスとヒップベルトのギアラックだ。角度がつけられ、カラビナの脱着がしやすいよう工夫がしてある。肩掛けのギアスリングとリュックサックは干渉しやすく、併用すると使用できないラックも出てくるので、ベストな位置につけられた、このギアラックは重宝するだろう。
(左)60と35では少し取り付け方が違うが、アックスホルダーがついている。(中)ショルダーハーネスのギアラック。(右)60のみだが、アイゼンポケットもついている。
と、ここまではカタログにも載っているし、アイテムを見てわかることだろう。実は一点、カタログにも載っていなく、何に使うか不思議なパーツがあった。それは……
この部分。荷室の底にループがあるのだ。
いまこの記事を読んでいる読者は、これをなんだと思うだろうか!? 筆者は「ホールバッグとして使うときに、ロープ末端を結んだカラビナをかける場所」と考えた。そしてすぐにカリマーの担当者へ答えを聞いてみたのだが、その答えとは……!?
「このループは、外側のアックスホルダーの留め具ですね。ロープを結べるかもしれませんが、本来はそのためのものではありません。」
との返答が。
実は最初から構造的に留め具であろうと思っていたのだが、ギアラックと同じチューブが取り付けてあるし「もしや意外な使い方が!?」といろいろと思案してしまったのだ。
ちなみに、担当者は「新しい使い方! 新しい発見です!! 」という言葉と、ロープを結ぶために使ってもいいと言ってくれているので、好きな使い方をしていいのだろう。当然、高い強度があるわけではないので、強い力がかからない範囲での使用に限るが。
取り外し可能な背面パッド〈Fformat〉。抜けば軽量化でき、さらに持ち運びもしやすくなる。ハイドレーションにも対応している。
最後に、ひとつ気になる点はヒップベルトが取り外しできないところか。35の容量なら、軽量の一泊装備くらいならいけるだろうから、それなりの重量を背負えるようにパッド付きのベルトなのはありがたい。が、汎用性高く使える容量なだけに、固定されてしまっているのは残念だ。
ultimate 35
容量 :35ℓ
サイズ:高さ68 × 幅31 × 奥行き28(㎝)
背面長:47㎝
重量 :1,240g
素材 :TPX LAMINATE NY(ナイロン100%)
価格 :28,000円+税