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【北の漢の山道具】Vol.3 初心者モデルとしてより進化した「サロモン/SENSE RIDE3」はパフォーマンス抜群。この履き心地はくせになりそう
2020.06.08 Mon
さとう アウトドアショップバイヤー
サロモン(Salomon)を代表するトレイルランニングシューズ「SENSE RIDE(センス ライド)」。“サロモンといえば” というくらい、おなじみのシューズである。
SENSE RIDEは2017年の秋に発売した。サロモンのラインナップのなかでも汎用性の高いモデルであり、さまざまなサーフェスに対応が可能なオールマイティなシューズである。
SENSE RIDEが発売されるまでは「SENSE PRO」というモデルがオールマイティであり、SENSE RIDEと近しい位置づけで1~3までが発売されている(3は若干スパイクよりとなり、ややキャラクターは異なるが)。そのSENSEの遺伝子を受け継ぐモデルとして登場したのがSENSE RIDEというわけだ。
トレランシューズのなかでもやわらかく、軽いのが特徴で、ロードランからトレイルランへ転向するランナーにはとくに人気があり、違和感なく履けるとして入門モデルとしても人気だ。
歴代のSENSE RIDE。左:SENSE RIDE1。中央:SENSE RIDE2。右:SENSE RIDE3。すべてのモデルは8㎜DROP。どのモデルも270~280gとロードシューズのように軽く、ソールも薄いのが特徴だ。見た目のライトさとは裏腹にトレイルの悪路を走るスペックはしっかりと詰め込まれている。
アウトドアショップで「トレランはじめたいんですけど~」と言うと、トレラン好きな店員さんならばSENSE RIDEを勧めるだろう。
ただやわらかく軽いだけではなく、70㎞以上のロングレースでも信頼できる機能性も持ち合わせている。後半戦、足がしんで上がらなくなってきてからも、本格的なクッション性能を発揮し衝撃からランナーの足を守る。ロングディスタンスのレースでも愛用する人は多いのだ。
SENSE RIDE2では、サロモン独自の振動吸収テクノロジー「Vibe™」を搭載し、ソールに「OPAL」という緩衝ジェルを配置することで、さらにクッション性能と快適性を増した。
カラーは全4色。左からWHITE、BLACK、BALSAM GREEN、LYONS BLUE。都会的なデザインはファッションアイコンとしても人気が高い。タウンユースでも愛好家が多く、セレクトショップなどでも販売されているほどだ。
北海道のトレランの大会では非常に着用率が高いシューズで、大会スタート時には右も左もさまざまなカラーのSENSE RIDEであふれかえる。スタート直前には同じSENSE RIDEを愛する者同士、アイコンタクトでほほえみ合い、コミュニケーションをとるのがここ最近の僕のルーティンとなってきているw ただ、だいたいは相手にされず、ひとりさみしい思いをするのだが……。
それくらい履いている人が多い。
僕は大会でのシューズのチョイスにいつも悩みがちだ。山岳セクションの長いレースであればグリップ力が欲しいから、SPEEDCROSS(スピードクロス)やinov-8(イノベイト)なんかのスパイクがいいし、長い距離のレースであればクッション性能を優先したいのでHOKA ONE ONE(ホカ オネオネ)や厚底のシューズがいい。ただなぜかいつもSENSE RIDEをチョイスしてしまう。
なぜならば、ある程度グリップ性能があるし、長距離にも対応できるクッション性能をバランスよく搭載しているからだ。ナイキやアディダスなどのオンロードシューズのように軽いので厳しいレースを前にした緊張感のなか、ちょっとそこまで走ろう的な気軽な感じでリラックスして履ける感じもいい。ラグも浅く、アスファルトも走りやすいので、非常に北海道のコース設定と相性がいいのだ。
北海道の大会の特徴は山岳セクションが少ない。林道、特に舗装路がコースの大部分を占めるコース設定が多く、シューズのチョイスはいかに林道、舗装路を快適に走れるかが重要なファクターとなる。おそらく北海道のレースで着用率が高いのはそういった理由からだろう。
僕は初代のSENSE RIDE1から愛用していて、たくさんの大会に出ている。昨年、アップデートした2も2足履きつぶした。そして、今年、心待ちにしていた最新のSENSE RIDE3が発売されると速攻で購入した。
トレランシューズは汚れる宿命にある。ドロドロになったトレランシューズはなんかカッコいい気がする。
あいにく最初のテストの日は小雨……。真っ白なカラーをチョイスしただけに汚すのはなんだか気が引けるが、思い切ってドロドロのトレイルを走ることに。
ただ、そんな憂鬱な気分は数分後には吹き飛ぶことになる!
履いてすぐに感じたのはアッパーの剛性だ。
「あれ! 結構かたくなってる!!」
下りでもがっちりとホールドされる好きな感じだ。
じつは昨年の春、SENSE RIDE2にアップデートされた際、軽量化によりアッパー部分の素材変更があった。シューズ自体がかなりやわらかくなってしまい、ホールド性能が大きく失われた。
初代のSENSE RIDE1はかためのアッパーで、トレイルの悪路でもホールド感があった。下りに強い印象で好みだった。そこが人気の秘密だったと思う。SENSE RIDE2にアップデートされてから、10gの軽量化と通気性能は向上したが、正直、やわらかすぎて下りでのホールド感は失われてしまった。
また、メッシュがやわらかすぎるがゆえに、切られた笹や木の枝がメッシュ越しに刺さりこんできてしまうこともあり、足の置き場を常に考えながら走る必要がついてまわった。
個人的にSENSE RIDE1のほうがかたくてよかったな~、なんて思いながら昨年は走っていたので嬉しさは格別だ。「待ってましたよサロモンさん! これよこれ!!」とにやけが止まらない。最初のテストは10㎞の予定で山へ入ったが、倍の20㎞を走ってしまった。それくらい気持ちがいい。
左:SENSE RIDE3。右:SENSE RIDE2。見た目にも2はメッシュが薄いのがわかる。シューズのホールド性能はアッパーのメッシュ素材で大きく変化する。SENSE RIDE3はメッシュ素材が強度のあるものに変更されている。トレランシューズのアッパーは悪路を走るため、ある程度の剛性が必要不可欠。トレイルランナーはかためのアッパーを好む人が多いので、今回の3を気にいる人は多いはずだ。
SENSE RIDEは3代目となり、革新的な進化を遂げていた。さらに、最大の進化はヒール部分にある!
SENSE RIDE1、2はソール全面に緩衝材OPALを配置していたが、SENSE RIDE3は思い切ってヒール部分にのみ配置。あえてつま先側に緩衝材を入れないことで蹴りだしのパワーの軽減も防止している。つまり、初心者に多いヒールストライク、いわゆるかかと着地の人向けにつくられており、より初心者向けのモデルとなっている。「ヒールストライク専用モデル」そういってもいいくらいだ。
厚底のモデルと比較しても変わらないくらいSENSE RIDE3のソールは大きい。厚底のシューズを履いた感覚と似たやわらかさで、グニュっと路面へ食い込むが、ソールの厚さは27㎜とそれほど厚くないため、重心は低く安定している。ヒールカップも深くなり、かかと部分のホールド性能も十分だ。これにより一歩一歩と荷重が増す下りでも、柔軟にヒール部分で衝撃を受け止め、快適な走行が可能である。
このシューズのヒールストライクは別格だ。下りでの安定感は抜群で、吸い付くようなかかと着地ができる。
その秘密はヒールの形状にある。SENSE RIDE1、2と比較するとヒール部分が立体的に飛び出ているのがわかる。さらに、かかと部分の振動吸収テクノロジーも「Optivibe™」となり、緩衝機能がアップしている。ソール自体がとてもやわらかくなっていて、強烈に路面とグリップするので全体重を預けてもおどろくほどグリップする。かかとが超巨大なシューズを履いているような感じで、全体重をかかとだけに預けて走れるイメージだ。結果、下りはかなりはやく走れてしまう。この感覚がとても新鮮で面白い! くせになるのだ!!
ランナーであれば、ヒールストライクはあまりよくない走法という印象を持っている人が多く、フォアフットを意識して走っている人が多いはずだ。そんなことはない。ガンガンかかとで着地してもOK! SENSE RIDE3はそんなシューズだ。まさにSENSE RIDEシリーズの完成形といってもいいだろう。
ソールのスリットを増やし、より路面とフィットするように工夫がされている。地面との摩擦力が高く、以前よりもグリップ性能が増している印象だ。
ランニングやトレランの楽しみ方は人によってさまざまである。このSENSE RIDE3はゆっくりと自然を楽しみながら走るにはもってこいのシューズだ。
新型コロナウィルスの影響もあり、今年はほとんどのトレランの大会が自粛になる予定だという。目的を失い、喪失感を感じているランナーも多いだろう。ただ、自然はなにも変わらずに広がっているし、山も森もいつもどうり人々を受け入れてくるだろう。世界が一日もはやく、いつもの日常に戻ることを祈りながら、今日もSENSE RIDE3を履いて里山を走ろうと思う。
サロモン/SENSE RIDE3
平均重量:280g
サイズ:25〜28.5㎝
ドロップ:8㎜
カラー:White、Black、Balsam Green、Lyons Blue
価格:16,500円(税込)