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キャンプにフェス、野外で遊ぶときにはこれを履け! サロモンの「CROSS HIKE MID GTX」
2020.09.14 Mon
河津慶祐 アウトドアライター、編集者
サロモン(SALOMON)から2020年の秋冬モデルに、ある注目のシューズがラインナップされた。そのシューズの名は「CROSS HIKE MID GTX(クロスハイクミッドGTX)」。名作と名高いトレランシューズ「SPEEDCROSS(スピードクロス)」の設計思想を受け継いだこのシューズは、ハイクだけではなく、どんなアウトドアアクティビティにも最適なシューズである。
8月下旬、もう暦では秋だというのに、うだるようなあつさが続くある日。さっそく手に入れた「CROSS HIKE MID GTX」を履き、白樺がうつくしい避暑地の八千穂高原へ来ていた。めざす場所は「八千穂高原 駒出池キャンプ場」。気温は100mにつきおおよそ0.6℃変わるので、標高1,285mにあるこのキャンプ場は都内と気温は約8℃ちがう。自然のなか特有のさわやかな風が吹けば、さらに心地がいいだろう。
キャンプ場に到着したら、まずは道具を広げる。今回はキャンプ場をベースにして近場のアクティビティを楽しむ予定なので、コンパクトな道具でそろえた。あっという間に設営が完了。
「駒出池でひと息入れようよ」
そう言いながら、友人の「ちゅーたさん」はキャンプ場の名称にもなっている目の前の駒出池へ駆けて行った。
未明まで雨が降っていて、まだ草木についた露が落ち切っていないので、草地を歩くだけで、すぐにシューズが濡れていってしまう。でも今回履いているシューズは「CROSS HIKE MID GTX」。GTXとあるように、このシューズは防水性のあるゴアテックス(GORE-TEX)メンブレンを使用していて、さらにベロと本体(アッパー)が一体となり隙間をなくす「ガゼットタン」により、どんなに濡れても水分の侵入をシャットアウトしてくれる。
駒出池を眺めていると、対岸に小川や明るい森、大きな岩など気になる場所が見えていた。
「ねぇ、けーすけくん。まだ時間が早いから、ちょっとキャンプ場内を探検してみない?」
池の畔を歩いて行くと、すぐに小川が現れた。小川と言っても幅は1.5〜2mほどあり、ジャンプするのはためらわれる。潔く橋を探していると、無邪気なちゅーたさんはゴアテックスの利点を活かし、10㎝ほどの水深を気にもせず、ザブザブと歩いて渡って行ってしまった。防水なだけでなく、ミッドカットのシューズだからこそできる荒技だ。
小川を渡ると明るく開けた斜面の森が広がり、端っこには大きな岩が転がっていた。
濡れた草地の斜面を歩いたり、苔むした大岩を登ったりと好き勝手に自然と戯れてみたのだが、「CROSS HIKE MID GTX」はどんなときも最高のグリップ力を発揮してくれる。ソールに使われている「コンタグリップ(Contagrip®)」は乾いた地面はもちろん、濡れているところにも強く、高いグリップ力を発揮してくれる。
とくに靴底(アウトソール)の溝(ラグパターン)は特徴的。「SPEEDCROSS」の矢尻型を進化させた三角形で、上下の動きだけでなく、多方向の動きにもきちんとグリップするようになっている。さらにミッドカットであるため、多少適当に足を置いたとしても捻ってしまう心配が少ないのもいい。
これらによって、どんな不整地だろうとなんなく歩けてしまう。
ラグパターンについてもう少し話すと、「CROSS HIKE MID GTX」は同様のシューズにくらべ、大きく深いラグとなっている。ラグが大きいとグリップ力が高まり、どんな場所でも安定して歩くことができるようになる。そして深いラグは地面をしっかりと掴み滑りにくくする。いちばん効果を発揮するのは土の地面。とくに水気を含みぬかるんだ地面ではほかのシューズより一線を画すだろう。
小一時間ほど遊んでいたら時間は昼前になっていた。
「軽く高見石までハイキングして小屋の前で昼ごはんにしようよ」
そう言いながら、ちゅーたさんはテントから顔を出していた。もう準備は万端らしく、シューズを履きはじめる。
サロモンのシューズの多くは「クイックレース(Quicklace)」を採用している。「CROSS HIKE MID GTX」も同様だ。この靴紐(シューレース)は、ケブラーという丈夫な素材でできており、ストッパーを引き下げるだけで足全体を均一に締め上げ、包み込むようなフィット感を実現させている。シューズの着脱はストッパーをスライドさせるだけ。強くて軽い、そして着脱が早い。紐の余った部分はベロのロゴ部分にある袋へしまえ、じゃまにならないようになっている。これに慣れてしまうと靴紐を結ばなければならないシューズには戻れない。
駒出池キャンプ場より車で20分ほど行くと白駒池の駐車場に到着する。用意はすませてあるのでバックパックを背負いすぐに歩き出す。歩きやすい木道を進むと「高見石」と書かれた看板を見つけた。看板の方向へ苔むす森をさらに進んでいく。
白駒池から高見石までの間の登山道は歩きやすいとはいえ、木道や大きな石、ぬかるみ、木の根っこ、高い段差などさまざまな場所を歩かなくてはならない。そんな道でも「CROSS HIKE MID GTX」は安定して歩ける。
登山道を歩いていておどろいたのは、ミッドソールと呼ばれるかかと部分に仕込まれた「エナジーセルプラス(Energy Cell™+)」だ。「SPEEDCROSS」でも採用されていたこの素材は、衝撃吸収と反発力を兼ね備え、かかとから着地(ヒールストライク)してもダメージが少ない。ほかのトレランシューズやトレッキングシューズとくらべ、かなりの厚さなのが見てわかる。取り出すとわかるが、中じき(インソール)もかなり厚い。足への負担を極限まで減らしているのだろう。
高見石小屋へはゆっくり歩いても小一時間ほどだった。晴れ間が見えるうちにと駆け足で高見石に登る。雲は多いが、心地いい風が吹き、太陽が顔を出していて気持ちがいい。いちばん高いところまで行くと白駒池がキレイに見えた。
登山道でも岩場でも、歩いていて足がとても軽い。「CROSS HIKE MID GTX」の重量は396g(27㎝)。他ブランドの同系統のシューズとくらべ最軽量の部類に入る。クイックレースが軽いのはもちろん、縫い目をなくしシームレスにすることで軽量化を図っている。軽量なシューズは今回のような荷物の軽いファストパッキングに向いている。細身のシルエットで足捌きがしやすく、前後に足首を動かしやすいつくりのため、軽快に歩ける。これだけ歩きやすければ、ときには走ってしまうのもいいだろう。
高見石で景色を楽しんだら小屋の前でお昼タイム。ちゅーたさんが「おなかすいたー」とバックパックから買ってきたパンを取り出し、お湯を沸かしてコーヒーを淹れ、休憩をとる。
あとは下山するだけなので少し寄り道をして白駒池に向かった。白駒荘から青苔荘まで畔を歩く。水位を見ると水量は少なさそうだ。
「景色、最高だったねー」
休憩を入れても3時間ほどだったが、高見石からの絶景に白駒池周辺の神秘的な原生林、と満足のいく山行だった。明日も一日空いている。どこの山へ向かおうか……。
今回、「CROSS HIKE MID GTX」をキャンプとハイクで使用してみたのだが、このシューズ、ひとつのシチュエーションだけで使うのはもったいない! この旅のような、キャンプをベースにしたハイクだったり、不整地を長く歩き雨が降る可能性の高いキャンプインフェス、あとはフェス×ハイクっていうのもありかもしれない。ほかに川原遊びだったり秘湯巡り、ロングトレイル……さまざまなアウトドアアクティビティをクロスオーバーさせて、「CROSS HIKE MID GTX」のスペックをフル活用しよう。もちろん、雨の日のタウンユースにも最適だろう。ふつうなら避けていくような水溜りに平然と入っていったときの周りの人たちの顔が楽しみだ。
CROSS HIKE MID GTX
重量:396g(27㎝)
ソールスペック:ヒール20㎜ / トゥ10㎜(ドロップ10㎜)
サイズ:25.0〜28.5㎝
カラー:Phantom / Black / Ebony、Magnet / Black / Lime Punch、Goji Berry / Black / Red Orange
価格:22,000円(税込)
CROSS HIKE MID GTX W
重量:340g(24㎝)
ソールスペック:ヒール20㎜ / トゥ10㎜(ドロップ10㎜)
サイズ:22.0〜25.0㎝
カラー:Phantom / Black / Ebony、Lead / Stormy Weather / Charlock
価格:22,000円(税込)
(モデル=ちゅーた、河津慶祐 写真=小林昂祐 文=河津慶祐)