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背面が涼しいドイターのバックパック「フューチュラ」がリニューアル! ワンダーフォーゲル部員に、試しに背負ってもらいました
2021.03.01 Mon
桑田実結 女子大生ハイカー
背中に空間ができ、通気性にすぐれた構造のバックパックは、夏山用として人気があります。そんなシステムをいちはやく取り入れてきたドイツのバックパックブランド「ドイター(deuter)」から、この春、リニューアルとの知らせが!
見た目はたしかに涼しそうだけれど、実際の使い心地はどう? どんな登山で活躍しそう? という疑問を解消するべく、さっそくフィールドで使用感を試してみることにしました。
今回の主役! 新作「フューチュラ(Futura)」
リニューアルしたフューチュラがこちら。ロゴの変更も相まって、ずいぶんと雰囲気が変わったような印象を受けます。カラーリングも一新し、機能面はもちろんですが、山の景色になじむやさしい色合いも魅力的です。
ドイターのバックパックのなかでも “背面の通気性” に強みを持つシリーズ「フューチュラ」。パックと背中のあいだに空間ができるため、熱気がこもらないことがいちばんのポイントです。
アーチ状のフレームにメッシュパネルを張り、通気性を持たせた背面システム「エアコンフォート」。
背面が背中に密着する通常タイプのバックパックとくらべ、フューチュラはほんとうに涼しいのかを検証してみたい! ということで、実際に山を歩きながら、要所要所でサーモガンをもちいて背面の温度を計測してみました。
今回使用したバックパック。リニューアルした背面に空間がある「フューチュラ32」(左)と、背中に密着するタイプで同程度の容量のバックパック(右)。
今回のフィールドテストにあたって協力をお願いしたのは、慶應大学ワンダーフォーゲル部のみなさん。なかでも体格の似た、男子ふたりにそれぞれのパックを背負ってもらい、くらべてみることにしました。
サーモグラフィーでは体温の高い部分が赤く、そして黄色→緑→青の順に温度が低くなっていきます。背面中央の温度は両者ともに30℃。最近は店舗の入口で目にする機会も多くなり、なんだか身近な存在になったような気もしますね。
まずは登山前のふたりの背面温度をチェック! もちろん、まだ両者にちがいはありません。体力のある大学生がスピード登山で使っても、快適なまま背負い続けられるのか!? いざ、出発です。
登山開始! まずは樹林帯をはやいペースで進みます
スタートは新中の湯登山口。見落としそうなちいさな看板と、集合写真を一枚。
今回めざしたのは北アルプスにある百名山の焼岳。日帰りで登頂できる北アルプス、と聞くと魅力的ですが、その分、登り一本調子の登山道が続きます。
「いつも通りのペースで好きに登ってください」と登山前にお願いした通り、同行したスタッフが置いていかれるくらいの、ものすごいスピードで進みます。みなさん、「付いてきているかな?」と気にかけてくれながらも、ペースは崩しません。
序盤は整備の行き届いた樹林帯の道が続きます。人気のルートだけあって歩きやすい!
早足ながらも、楽しげにおしゃべりしながら登ります。最近登った山やルートを聞いていると、このペースも納得。ふだんはテント装備を詰めた大きなバックパックを背負い、沢や道なき道を歩いている強者ぞろいのメンバーでした。
樹林帯を抜けた広場ではじめての休憩。まだまだ余裕そうな表情が浮かんでいます。
ひと息であっさりと登ってきてしまいましたが、ちがいはいかに? ここまでハイペースで登ってきた分、たっぷり汗をかいているはず。見た目だけで分かるかなぁと首をかしげつつ荷物を下ろしてみると……。
「おぉ!」と声が上がるくらいの結果。さては、検証のために考えられたペースだったのかな? と思うくらいです。
想像していた以上に大きなちがいがありました。見た目だけでも、汗のかき方に差があることがわかります。フューチュラを背負っていない右の背中は、汗でぐっしょりと濡れてしまっているのがわかります。
結果がどれくらい色に出るのかが気になって、思わず全員で画面をのぞき込んでしまいました。左のフューチュラを背負っていた男子の背中には、赤い部分がなく、熱がこもっていないことがわかります。温度は、左の男子が31℃に対して、右の背中に密着するタイプの男子は37℃。6℃はかなりの温度差です。フューチュラは登山開始前とほとんど差がないところも背面通気システムのすごさがわかります。
背面温度を画像で比較してみても、やはり歴然とした差がありました! とくに、荷物の重さがかかっている背中の中央部のちがいが大きいですね。ふだんの私たちも、知らず知らずのうちに、こんなにも背面温度が上がった状態で歩いていると言えそうです。
背負っていても、横から見るとパックと背中に空間があり、通気性がいいことがよくわかります。写っているのは、同じくリニューアルした女性用モデルの「フューチュラ30 SL」。今回、唯一の女子部員に背負ってもらっていました。
このちがいの理由は、やはり背面システム「エアコンフォート」にありそうです。下ろしたバックパックを見てみると、背中に触れていたメッシュパネルも汗で濡れておらず、さらっとしていました。
山頂までは気持ちのいい、ひらけた道を進みます
見通しのいい道をサクサク楽しく登っていきます。このあたりから晴れ間がでてきて気分も爽快。
森林限界をこえると、一気に山の雰囲気が変わります。湿度のある樹林帯から一転、直接日差しを感じるコンディションに。風の通りもいいので、登っていても涼しさを感じます。
焼岳山頂に到着! すこし雲が出てきたものの、高度感のある景色に感動しました。
慶應大学ワンダーフォーゲル部のみなさん、最後まで一定のはやいスピードで山頂まで登ってきました。さわやかさを残した表情で、余裕の登頂です。
登頂後、少したってから撮影した背面の様子がこちら。左がフューチュラですが、右とくらべて熱がこもっておらず、背面の温度に差が少なそうに見えます。右の男子の腰を見ると、汗冷えからか、20℃ほどまで温度が下がってしまっています。
山頂付近のような風のある場所では、いちばんの敵は冷え。背面システムで熱がこもらないようにし、汗をかくことを抑えることで、冷えて一気に寒くなるということを防げるようです。
使用感はどう? どんなシーンにおすすめ?
新作のフューチュラを背負ってもらったふたりに聞いてみました!
「バックパックの最初の印象は、まずなにより軽量なこと。日帰り登山に使いやすいサイズ感で、早足で歩く体力のある大学生の登山には最適でした。背中が濡れないことでストレスなくスピードを上げられます」
ドイターのバックパックを背負うのははじめてとのことですが、背中が痛くならない! という感想をくれたのは、女子部員さん。これまで背負ってきたバックパックがあまり合わず苦労していたようで、今回はこのフィット感をとくに評価していました。
岩場を登り降りするときは、足だけでなく、手や肩など体全体を動かすため、フィット感が重要になってきます。フューチュラのショルダーストラップは取り付け部が可動することによって、さまざまな肩の形状に合わせることができ、さらに細いスタビライザーストラップを引くことでフィット感を高めることができます。このショルダーストラップと、背面からウエストベルトまで一体となっているクッションパッドによって、体を包み込むようなフィット感が得られるようになっています。
じつはメンバーのうちのひとりが、かなり前のモデルのフューチュラを持っているそうなのですが、それとくらべると背面の空間が小さくなっているようです。
「以前のものは、空間が大きく取られていることで、荷物がすこししか入らなかった。それに、荷物が体から離れることで、後ろに引っ張られる感じがした。このバックパックは空間が小さいのに潰れない、絶妙なバランス。荷物の出し入れもしやすいし、なにより、しっかり肩から腰にかけて背中全体に乗っている感じがして背負いやすい」と、ベテランらしい観察眼から感想をいただきました。
新作フューチュラは、やはり背中が快適!
今回のフィールドテストでは、背面の通気性によって背中に熱がこもらないことが目に見えてわかる結果となりました。
日本は高温多湿で汗をかきやすい気候だといえます。新緑の5月から紅葉の9月、10月まで、荷物を背負って山を登れば、おのずと汗をかくことになるでしょう。このフューチュラは夏山だけではなく、春や秋の山でも汗をかきにくくし、体温の上昇によって体力がうばわれてしまうことと、汗からくる冷えを防ぐことができるでしょう。
汗っかきな人や、スピードハイクを楽しむ人には体温コントロールが重要です。フューチュラは汗によるストレスを減らし、快適に登山を楽しむためにおすすめなバックパックではないでしょうか。
右)ドイター/フューチュラ32
容量:32ℓ
重量:1,440g
サイズ:65×30×20㎝(高さ×幅×奥行)
カラー:グラファイト×シェール、アークティック×スレートブルー、ターメリック×グリーンカレー
価格:20,900円(税込)
※ほかに、画像と同型のトップローディングタイプは26ℓ、パネルローディングタイプは23ℓと27ℓのサイズ展開
左)フューチュラ30SL(ウィメンズフィット)
容量:30ℓ
重量:1,420g
サイズ:63×30×20㎝(高さ×幅×奥行)
カラー:グラファイト×シェール、ダスク×スレートブルー、パプリカ×シエナ
価格:20,900円(税込)
※ほかに、画像と同型のトップローディングタイプは24ℓ、パネルローディングタイプは21ℓと25ℓのサイズ展開
・自在に動くアクティブフィットショルダーストラップとエルゴノミックヒップフィンが体にフィットし快適性を高める
・濡れたものを入れておくことのできる通気性の高いフロントポケット
・24SLと26はフロントアクセス機能を、30SLと32はボトムアクセス機能を備え、雨蓋を空けずにメイン荷室からの装備の取り出しが可能
・レインカバーを内蔵
・繊維素材の50%はリサイクル素材が、主な材料はブルーサイン認証を受けた素材を使用
(撮影協力:慶應義塾大学ワンダーフォーゲル部 写真:Chica Suzuki 文:桑田結実 編集:河津慶祐)