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2通りの使い方が選べる! カモックの次世代型ハンモック「Sunda2.0」
2022.07.07 Thu
野沢 ともみ ハンモッカー
設営場所に困らないハンモック
「ハンモックって張れる場所が少なくて困りませんか? 木が2本必要なわけだし……」
ふだんハンモック泊をしている、という話をすると、かなりの確率でこの質問をされる。たしかにハンモックを張るためには木が2本必要だ。しかも木と木の間は狭すぎても広すぎてもダメ。ちょうどいい絶妙な2本を見つける必要がある。
キャンプでのお昼寝用としてハンモックを持って行った場合であれば、もし木がなくても仕方なくお昼寝を諦めればいいだろう。しかし問題はハンモックで泊まるつもりだった場合だ。
実際、私も一度だけ木がなくてハンモック泊をできなかったことがある。事前に木があるか確認してからキャンプ場にチェックインしたのだが、現地に着いて見渡してみたところ “ちょうどいい木たち” がないことが判明した。……絶望。
事前の確認に安心しきっていた私は、ハンモック泊に必要なものだけを持参していたため、残念ながらテントやマットを持って行っておらず……。年の暮れの氷点下近い気温だったこともあり、この装備では朝まで泊まれないと判断し、泣く泣く撤退した。仕方なくあたたかいうどんをすすりながら、とぼとぼと帰路についたのはいつまでたっても苦い思い出だ。
あの日の私のような、“樹木難民ハンモッカー” を救ってくれるかもしれないアイテムが発売された。カモック(KAMMOK)の「Sunda2.0(サンダ2.0)」だ。
ハンモックでありながら自立式テントとしても使用できるというハイブリットな商品で、地上でも空中でも使えるらしい。ハンモックを張りたいけれど木がないかもしれないという不安を解消するのに一役かってくれそうだ。
カモックといえばハンモック界のポップスター的な存在で、華やかなカラーリング展開の「Roo(ルー)」シリーズや、細部に気が利きまくっている多機能オールインワンハンモックの「Mantis(マンティス)」シリーズなど、ハンモッカーたちをワクワクさせるアイテムを多数リリースしている。
そんなカモックのニューアイテムということで、期待を膨らませながらSunda2.0を試させてもらった。
サイズ・設営
ハンモック兼テントというだけあって、ふつうのハンモックとくらべると、だいぶ大きい。自立式の2人用テントとして考えた場合はそれなりの大きさだ。大きすぎて運ぶのに困るというサイズではないので、バイクキャンプなんかにはちょうどいいだろう。
Sunda2.0はくるくるとロールできるタイプの収納袋に収まっている。きちんとポケットが分かれているので、ハンモック本体とハンモック設営用のツリーストラップ、フットプリント、ペグ、ポール、ガイロープをキレイに収納できる。さらに袋のとても見やすい位置に設営手順のイラストが縫い付けてあるので、風で説明書が飛ばされてしまうこともないし、久々に設営するときにも戸惑う心配もない。
すばらしい気づかいに、カモックのやさしさを感じずにはいられなかった。
設営はふつうの自立式テントの要領とほぼ同じで、本体のスリーブにポールを通すことが主だ。まずは左右のアーチになっている箇所を仕上げ、そのあと左右をつなぐ長いポールを貫通させる。そして天井のいちばん高くなる部分を短いポールで広げる。
文字や図にするとたったこれだけなのだが、2人用テントというだけありサイズが大きいのと、端でポールをグロメットや縫い目に差し込んで止める作業が、けっこう硬くて力がいるので思いのほか苦戦した。
説明書と、わかりやすく色分けされているポールのおかげもあり、頭では十分にわかっているはずなんだけどなぁ……。女性の力だと少し大変かもしれない。
ポールを通せばすっかりテントの形になる。この段階でフットプリントをつけてペグダウンしたらテントモードが完成するが、ハンモックモードで使う場合はここからもう少し手順を踏む必要がある。
先ほどまでの手順で力を使い果たし、握力を失いそうになっていた私。一瞬、「疲れたしこのままテントで泊まってしまおうか」という考えが頭をよぎる。いかんいかん! ハンモック好きとしてはどうしてもSunda2.0のハンモックとしての寝心地が気になって仕方がないのだ。
ハンモックモードにトランスフォームするには、フライシートとインナーテントをつなぐバックルを外し、インナーテントの端から出ている細いロープを引っ張る。すると……。
「おおおお! ハンモックが! テントの下にいる!!」
思わず声をあげてしまう。なるほど、インナーテントだった部分の端が絞られてハンモックの形になるのだ。それにしてもテントらしき物の床からチラリとハンモックがはみ出しているその姿は、なんとも不思議だ。
あとは一般的なハンモックの設営手順と同じ。2本の木にツリーストラップを巻いて “テントの下にいるハンモック” と接続する。ツリーストラップはデイジーチェーン式というもので、カラビナを引っ掛ける位置によって好きな高さに調整をする。
おそるおそる高さをあげ、ハンモックを地面から離陸させる。よし! できた!! と思った瞬間……。
あれ???
なんじゃこりゃ。フライシートが重くて横倒しになってしまった。
天に向かって大きく開いたその姿を見て、本来、見えてはいけない中身が丸見えになっている感じが妙に恥ずかしくなる。
「ごめんな、Sunda。こんな姿を晒してしまって……」
そう謝りながら、そそくさとペグダウンをした。べつに、だれに見られているわけでもないのだが、Sundaには少し申し訳ない気持ちになった。
ちなみに、ガイラインをペグダウンすれば横倒し問題はすぐに解決する。
ハンモックモードで寝る
少し時間はかかったが、念願のハンモックモードが完成したので、早速、横になってみる。
ひ、広い……! 圧倒的な天井の高さに感激した。
外から見るよりも圧迫感がなく、むしろハンモックにしては天井が高すぎて、自分が一体なにに寝ているのか分からなくなりそうなくらいだ。
あまりに広いので、ここはどこ??? って思う瞬間もあるほど。
テントの形をしているということもあり左右にはベンチレーションがついている。ハンモックに寝転んだときの、頭側と足側にそれぞれ窓があるような感じだ。ここは網戸にもできるし、完全に開けてしまうことも可能なので、外でなにか気配を感じたら、スナイパーのごとくこの窓からじっとのぞいてみるのもありだろう。
宅配ピザとかを頼んでここから受け取れそうでもある。
また、頭側・足側だけでなく左右もまくり上げ、開けておくことができるので、風の通りがよくてとても気持ちがいい。ここまで閉鎖的な空間だと蒸れるのではないかと心配したが、しっかりと風が通るので、じめっとした季節でも活躍するだろう。
さて、肝心の寝心地はというと、小さな宇宙船のような見た目とは裏腹に、ちゃんとハンモックだ。しっかりと体を包んでくれる。幅が広めなのでゆったりと横になることができ、寝返りも打ちやすかった。
一晩泊まって分かったSunda2.0の良さとイマイチなところ
Sunda2.0のハンモックモードで一晩過ごしてみた。
一日過ごしてみると、ハンモックは横になって眠る以外にも椅子がわりに腰掛けて使うシーンも結構ある。特殊な形状のハンモックだと、座ったとき、膝の裏に生地が食い込んでしまうこともあるが、Sunda2.0はまったく問題なかった。
また、先に述べたように
・ベンチレータが多くて気持ちがいい
・深く包み込んでくれるハンモックらしい寝心地
というほかにも、じつは「タープを張らなくてもいい」というのも大きなメリットだと気がついた。
夜に小雨が降っても快適に過ごすことができたし、なによりもタープを張る手間がかからないので設営も時短になっていたのだ。雨が降らなかったとしても夜露から荷物を守れるので、設営したら自動的にタープも張られている形は、めんどくさがりなタイプには非常にありがたいスタイルだと思う。
と、ここまで褒めに褒めちぎり「やっぱりカモックの商品は細部までこだわっているのがよくわかるし、ハンモッカーの心をくすぐるポイントが多いな〜」と、すっかりSunda2.0にデレデレなわけだが、どうしてもどうしても気になる点があった。
それは設営時・撤収時の「ハンモック着陸問題」だ。
通常のハンモックは重量が軽く、収納袋も工夫されているものが多いので、ハンモックを張るとき、地面にハンモックをつけることなく空中で設営ができる。撤収時も同じく、地面に下ろさなくても空中で収納袋にしまうことができる。たとえば地面の状態がドロドロであっても、ハンモックを汚すことなく設営と撤収が可能なのだ。
しかしSunda2.0だとそれは少々きびしい。
フライシートにポールが通っていて、しかも重みがあるため、空中で設営撤収ができない。設営時も撤収時もハンモックが地面に触れてしまう。
もしかしたら、なにか裏技的な術があるのかもしれないが、この “ハンモック着陸問題” はハンモックが汚れるというだけでなく、ハンモック本体のスレの原因にもなるかもしれない。最悪、穴が空いてしまうのではとヒヤヒヤするので、どうにかいい方法を見つけたいところだ。
テントモード
木がなくてハンモックを張れないときを想定して、テントモードでも使用してみた。
二人用(*)とうたわれているだけあって、ひとりだと少し持て余すくらい広々としている。大の字で寝ても、寝相が悪くてコロコロと転がっても、ヨガとかはじめても大丈夫そう。
(*) ちなみにテントモードは二人用だがハンモックモードのときは一人用。ハンモックモード時の対荷重は約181㎏らしいが、さすがに、ふたりでひとつのハンモックに眠るのは現実的ではない。きっと狭っ苦しくて朝まで眠れないか、途中でジャンケン勝負が勃発してどちらかがハンモックから離脱させられるハメになりそう。
前室といわれる部分は脱いだ靴とバックパックを立てかけておく程度の大きさしかないが、荷物は自分が寝ている横におけばまったく問題ないだろう。
長辺に出入り口のドアがついているタイプなので、フライシートをまくりあげて網戸にしておけば、しっかりと風が通る。ハンモックで寝るのも気持ちがいいけど、ここで吹き抜ける風と大地を感じながら眠るのもまた気持ちいいだろうなぁ。
テントとして使う?ハンモックとして使う?
Sunda2.0はとてもおもしろい。トランスフォームさせることでハンモックとテントの両方が使えるという形状はもちろんのこと、じつは細部もすごい。絶妙な位置にループがついていたり、たくさんポケットがあったり、フライシートの内側が “光を増強する特殊な生地” になっているおかげでLEDランタンひとつでも明るく感じたり……と、なにかと気が利いている点が多い。実際に使い、細部を見たときに気がついてうれしくなるようなポイントが満載だ。
Sunda2.0はハンモックがメインでテントがおまけ的な感じかと思っていたが、じつはそうでもなさそうで、ハンモックでもあり、テントでもあるというのが正しいのだと思う。
テントモードで使用するにしても、ハンモックモードで使用するにしても、快適に過ごせるようにつくられている。
どちらでもいい!
どちらもいい!!
ハンモック泊のつもりだったが、木がなかった場合のリカバリー的な役割として頼りになるというだけでなく、あえて現地に行ってから、どちらにしようかなと考えるのもまた楽しいかもしれない。
場所の制限にとらわれず、キャンプ旅をより自由にしてくれるアイテムであることはまちがいないだろう。今度「ハンモックって、張れる場所が少なくて困りませんか?」と聞かれたら、食い気味でぜひSunda2.0をオススメしたいと思う。
ハンモック設営時/長さ254×幅127㎝
収納サイズ/17.7×48.2㎝
インナーテント生地・テントメッシュ部分/ナイロン
フライシート/ポリエステル
ポール/アルミニウム
収納袋/ナイロン