- 道具
店員を悩ませる 「憧れのMADE IN USA」。“Race Ready”が上陸!
2014.09.06 Sat
※東京・水道橋の老舗山専「さかいやスポーツ」の高橋典孝さんからの寄稿第一弾。
売り場に立ってウン十年の道具目利きが、野外道具と登山の今後を洞察します!
アメリカンブランドは数あれど、世界的な分業が進む現代では、製造まで本国で行なう「MADE IN USA」にはなかなかお目にかかれない。
それでもMADE IN USAが好きなユーザーは今も多い。かくいう私もそのひとり。アメリカかぶれというわけではないけれど、輝けるアメリカンアウトドアの熱い洗礼を青年期受けた世代としては、“MADE IN USA”の文字には無条件に惹かれてしまう!
先進的なアイデアと技術を満載しがら、ハンドメイドのにおいが香るMADE IN USA。陽気なアメリカのおじさんが、鼻歌を歌いながらコーラを片手に作っている。そんなイメージ。
しかし、多くのアメリカンブランドが生産の拠点を海外に移すにつれ、そんな空気感を無くしてしまった。品質は安定しているけれど、あの「におい」に欠けている。
そんなにおいとともに失われたのが、「おおらかなものづくり」。目留めがいい加減で水が漏るテント、生地の裁断がいい加減でどう張ってもゆがむテント、縫い目が蛇行しているジャケット、新品なのに取れかけているベルクロ……。
物を売る側の人間としては、品質の向上は喜ばしいのだけれど、この「いい加減さ」もMADE IN USAの魅力。そこかしこに現れる不具合を自分で修理しているうちに、作り手の思想が伝わってきたり、より自分に合ったものになる。
買って、使って、カスタムをする(強いられる?)。これこそMADE IN USAを使う醍醐味だ。
そんなことを考えていた今年の夏、さかいやスポーツで新しいアパレルブランドを展開することになった。その名も“Race Ready”。
いま大流行となっているポケットを多数装備したトレラン、トレッキングショーツだけを専門に作っているメーカーで、MADE IN USAのガレージブランドだ。
シンプルで軽く、動きやすいナイロンショーツの腰部分には、食料やウィンドブレーカーまで入るメッシュの袋状ポケットを並べている。腰前側にはiphoneだって入っちゃう。アバウトだけど合理的な設計。おまけに走っても揺れづらい。すばらしいじゃないか!
ロングディスタンスのトレランを「シンプル」に「心地良く」必要最低限の補給食などを持ち運ぶために生まれた印象的なこのUSAブランドの入荷を、どきどきわくわく(でも、緊張も)しながら受けとった。
さっそく自分用に購入して試走後洗濯をしたら、一発でロゴマークが剥がれ、縫製は緩んでしまった。う~ん、いいぞ、いい感じだぞ! シンプルだからこそ、意外とうまく直せるぞ!
(*上から3つめの写真は手縫いで付け直したブランドロゴ なかなか良くできてるでしょ?)
ああ、久しぶりのこのUSA感! 独創的で先進的で、ちょっといい加減なものづくり。そして、不具合を補ってあまりある、道具としての魅力。
不具合はあってはいけないことなんだろうけど、すごくよい製品なので、理解をしていただけるお客様にはぜひ使ってもらいたい。そう思って店頭ではこんなPOPをぶらさげて販売中(本当に勝手な言い分でスミマセン)。
でもこれも大正解! おかげさまでお客様たちの理解を得ることができ、しかも購入後のお叱りは今のところゼロ!! そればかりか多くのお客様から「良いものを紹介してくれたねー」とお褒めの言葉もいただいた。う〜ん、感無量。
よくも悪くも、売り手と使い手を悩ませるMADE IN USA。しかし、不具合まで理解して使えば、必ず満足できる魅力がある。これからも悩まされ続けますよ、「MADE IN USA」!
(文・写真=高橋典孝 構成=藤原祥弘)
■Race Ready/ハイクレディー 7インチ
ハイキング、ファストパッキング、ウルトラランニング向けのショーツ。生地は高強度のナイロン、前面に2個のポケット、背面には3個のメッシュポケットを装備。
サイズ:S、M
カラー:カモフラージュ
価格:¥4,900(税別)
問い合せ先 さかいやスポーツウェア館 tel 03-3262-0432