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全世界から注目を集める3日間! 進化する音楽シーンの「今」をフジロックで目撃せよ
2018.06.08 Fri
伝統と革新。音楽(ライヴ)は振り子のようにその両極端を常に
行ったり来たりしながら、今という時代を失踪している。
今年のフジロックは、まさに今という時代を象徴するヘッドライナーになった。
フジロックのオフィシャルフリーマガジン『フェスエコ』で、2017年に「旬で雑多」と表現したフジロックのラインナップが、苗場開催20年目の節目となる2018年は「旬」の文字がどデカくなって帰って来た。
ビジネス的な話を冒頭で語るのははばかられるが、今回は声を大にして言いたい。
7月から8月にかけて全世界でプロモーターがメインアクトを巡って壮絶な獲得競争を繰り広げているなかで、今年のフジロックのN.E.R.D、ケンドリック・ラマー、ボブ・ディランという3日間のヘッドライナーは壮観の一言、間違いなく2018年のベスト・フェスのひとつになるだろう。
初日27日(金)のトリを務めるファレル・ウィリアムス、チャド・ヒューゴ、シェイ・ヘイリーの2人によるスーパーユニット、N.E.R.D。
近年ではスーパープロデューサーとしてのファレル・ウィリアムスの活躍はこの紙面では列挙できないほどだけれど、N.E.R.Dとして昨年末に7年ぶりのアルバム『ノー ワン・エヴァー・リアリー・ダイズ』をリリースし、アメリカやヨーロッパの各地で開催される、2018の音楽フェスの目玉といえる存在となった。贅沢を言えばケンドリック・ラマーをフィーチャーした「ドント・ドント・ドゥ・イット!」の再演を期待している。もし実現すれば一生ものの思い出になりそうだ。
28日(土)はケンドリック・ラマーが登場する。
先日アルバム『ダム』がピューリッツァー賞音楽部門を受賞。クラシックとジャズ以外で選出される初の快挙も伝えられたばかり。グラミー賞で最優秀ラップ楽曲賞を受賞した「オールライト」が「ブラック・ライヴズ・マター運動」(黒人の命も大切だ)で合唱されるなど、黒人への白人警官の暴力や殺害を受けての抗議が世界レベルのムーブメントへの後押しになっている。音楽界のみならず彼の影響力を伝えるニュースやテキストを通して、その活動や詞に込められたメッセージを受け取りながら、それを取り巻く社会問題に向き合いライヴに臨むのもひとつの考え方だろう。一方で超一流のパフォーマンスを体験することで得られることも少なくない。現在、世界で最も重要なヒップホップ・アーティストがケンドリック・ラマーだ。
同じようなニュアンスで紹介したいのが、29日(日)の大トリであるボブ・ディランのフジロック出演という快挙だ。
特に彼の音楽に詳しくない、知識がないので構えてしまうと感じているいる人は、何よりもフジロック開催時に77歳になっているディランが、今なお最高のライヴパフォーマーであることを体感して欲しい。数十年聴き続け、ディランのライヴに通ったところで、有名曲もまったく違うアレンジで演奏するし、常に正解がないのが彼の音楽。「日本のフェス初出演」「ノーベル文学賞受賞後初の日本公演」「101回目の日本ライヴ」などちまたではズッシリと重い言葉が並んでいる。そばから見ても「一見さんお断り」的な敷居の高いイメージのある「ディラン体験」が、苗場の自然の風通しの良い空間で世代を超えた幅広い人たちの体験になる何よりの機会だと感じている。
3日間にヘッドライナーの最強ぶりばかりを強調してしまったが、今年はさらに世界の音楽シーンのトレンドに沿ったよりジャンルレスなメンツが勢揃いしている。
(Text by Hideki Hayasaka)
N.E.R.D
ケンドリック・ラマー「Alright」
ボブ・ディラン「Knockin' On Heaven's Door (Unplugged)」