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雨でも晴れでも天候の変化に負けない! フジロックを楽しむ準備はできてるかい?
2019.07.10 Wed
渡辺信吾 アウトドア系野良ライター
それまで降ってた雨が開演と同時にピタリと止んで雲間から筋状の日が差したとか、豪雨の中で繰り広げられたパフォーマンスが幻想的で神々しかったとか……、大自然の中で行われる野外フェスでは、時に自然と音楽の奇跡のコラボレーションを生む。
そんな奇跡の瞬間を見逃すことなく楽しむためにはしっかりとした準備が必要だ。
みんな! 楽しむ準備はできてるかい?
上のふたつの写真を見比べていただきたい。同じ場所から撮影された雨の日と晴れの日のグリーンステージだ。雨の日の写真を見ると、色とりどりのアウトドアウエアやポンチョがところ狭しと密集し、まるでジェリービーンズのようだ。
本格的な野外音楽フェスとしてフジロックが誕生してから二十数年。フェス文化の成熟とともにアウトドア文化が確実に浸透してきたことを実感できる写真だ。
記録映像などでご存知の方も多いと思うが、台風が襲った第一回目のフジロックでは、Tシャツ、短パン、ビーサン姿の若者たちが唇を紫色にしながら、ビニール袋をかぶって寒さに震えていた。その頃から比べると隔世の感がある。
昨年のフジロックは、直撃こそ免れたものの、台風の影響により雨と強風が会場を襲った。しかし大雨の中でも多くの人たちがグリーンステージに詰めかけ、ヘッドライナーのパフォーマンスに熱狂していた。そして終演後も、そこにはふた昔前ほどの悲壮感は漂っていなかった。
日本のアウトドアカルチャーは、フジロックをはじめとするフェスカルチャーとともに発展してきたと言っても過言ではない。学習したオーディエンスは、雨風をしのぐためにアウトドア仕様のウエアを身にまとい、会場でのキャンプインのためにテントを購入した。道具をに入れたことをきっかけにキャンプや登山に目覚めた人たちも多い。またアウトドア業界も、フェス需要に呼応するように機能だけでなくファッション性も重視するようになった。昨今のスタイリッシュなキャンプブームも、遡ればこの本流の中から派生してきたというのは言うまでもない事実だ。
各地で開催される野外フェスも立ち上げから十年、二十年の時を経て、今や過渡期を迎えつつある。フェスの新陳代謝に伴い、リピーターだけでなく新たな客層も増えつつある。 ITの恩恵により情報は多様化し、あらゆるところから入手できるようになったが、初めて野外フェスに行こうという人たちが、果たして正しい情報を取捨選択し、正しい備えで臨めているのだろうか。
その場しのぎの粗悪な道具を安価で購入し、痛い目に遭って、使い終われば用なしとその場に捨てて帰るような悲しい光景も目にする。
正しい準備をして、正しく道具を使いこなせば、悲惨な思いをすることなくフェスを楽しめるはずだ。それどころか、自然と音楽とアートが織りなす奇跡の瞬間を堪能できるはずだ。
昨年のフジロック、荒天に備えてテントのペグを打ち直し、張り綱を張り直し、深夜の暴風雨を耐えしのいだキャンパーたちが、翌日も開場時間とともに嬉々として入場ゲートに向かう姿に、アウトドアの本質を垣間見た気がした。
とある参加者が笑顔でこんな風に語ってくれた。「いやぁ昨晩は大変だったけど、忘れられない貴重な思い出になりましたよ」と。
暑くもなく寒くもなく、雨風に晒されることもないなら、そりゃ最高だ。でもどんなに天候が崩れても笑って楽しんでる人はたくさんいる。その勝敗の分かれ目とは? 本稿では、天候の変化に負けず、ポジティブに野外フェスを楽しむためのノウハウをお届けする。
雨に負けない!
夏の野外フェスは、雨が降るのは当たり前だと思ってほしい。過去にはほとんど雨が降らなかったという年があったとしても、それはレアケースだ。雨が降ることを前提として準備をしてほしい。
フェスの会場内では、傘の使用が禁止されている。となるとまず必要になるのがレインウエアだ。安価なものならビニール製のカッパがあるが、快適とは言いがたい。雨はしのげても、湿気が逃げないのでムレる。素肌にくっつくと不快なこと極まりない。その対極にあるのが、アウトドアブランドのレインウエアだ。防水性はもちろん内側からの湿気を逃す透湿性に優れた生地でできている。しかも上下セパレートタイプで動きやすく、下半身まで濡れないのも特徴だ。少し簡易なものではポンチョが人気だ。ポンチョの利便性は、バックパックなどを背負っていてもそのまま被れて、荷物を濡らすこともない。また最近ではポンチョにも透湿性のある生地が使われるようになり、より快適性を増している。ただし足元まではカバーできないので、長靴などと併用しよう。
足元も重要。長靴はぬかるんでいるところで最強だが、晴れている時は暑い。裾を折り返せるソフトタイプが便利。歩きやすく雨でも晴れでも対応できるのがトレッキングブーツだ。足が濡れても平気という人ならサンダルも有効だが、ビーサンはケガをしやすいので、つま先が保護されて、かかとが浮かないタイプがオススメだ。
トレッキングブーツや長靴が定番。逆に濡れたら最悪なのがスニーカー。水がしみる上に乾きにくい。まだサンダルの方がマシ?
風に負けない!
昨年のフジロックでは、直撃こそしなかったものの台風の影響で強風が吹き荒れた。嵐の翌朝、いたるところに倒壊したり吹き飛ばされたりしたテントが目撃された。しかし、それら風の被害を受けたテントのすぐそばに、風にビクともせずしっかり立っていたテントも多数あったのだ。その差はなんだったのだろうか?
入場後すぐにキャンプよろず相談所に来てこんな相談をした青年がいた。「絶対土曜日荒れますよね? 風向きってどの方向からですか? 風を避けられるエリアってどのあたりですか?」と。彼はテントを設営する前から荒天を予測し、どうすれば回避できるかアドバイスを求めに来たのだ。風向きに合わせて設営するテントの向きを考え、風が吹くとしても、どのエリアならその影響が少なく済むかを確認したうえでそれに備えたかったのだろう。実際、彼に勧めたエリアは強風が吹き荒れた翌朝、見に行ったところほとんど影響がなかったのだ。
風だけではなく、さまざまな天候に対応するには、テントの設営方法や場所選び、それにペグの打ち方やテントの耐風性などさまざまな要因があり、それらをいかに準備するかなのだと思う(こちらの記事に詳しく解説)。
風の被害を受けたテントが倒壊した人たちを「敗者」と表現するのはいささか語弊があるかもしれないが、風を読みしっかり対策した人たちは間違いなく「勝者」だったに違いない。
この日キャンプサイトではペグや張り綱チェックを促すアナウンスをしていた。まだ雨風が到来する前にペグをチェックし補強していた人たち。
寒さに負けない!
フジロックが開催される苗場は標高1,000m近い高原。夏場でも朝晩は10℃前後まで冷え込むこともある。雨に濡れた状態ならさらに冷える。移動を考えるとできれば荷物は減らして軽量にしたいところだが、多少重くなったとしても防寒対策はしっかりしておこう。
オススメはレインウエアとしても使用できるアウトドア系のアウター。軽量なうえに防水、防風性を備えているので安心だ。さらに長袖のフリースなどの中間着もあるといい。薄手のダウンジャケットは軽量なうえに小さくたためるので一枚持っておくとかなり重宝する。日中は短パンでも平気だが、やはりロングパンツも一枚持っていきたい。
雨で衣類が濡れてしまったときに、そのままにしておくと気化熱で体温を奪われる。タオルで水分を拭き取って、すぐに乾いたものに着替え、できるだけ風をしのげる場所に退避しよう。肌に触れるTシャツや下着は常にドライにしておきたい。そのためにも滞在日数より多めに用意しておくことが肝心だ。
テント泊での就寝時には寝袋を使用したい。「夏だから毛布だけで大丈夫でしょ?」とタカをくくっていると、寒くてぜんぜん眠れなかったなんてこともある。もし暑い場合は、寝袋から出ればいいだけ。逆に寒いときに暖をとれるものがないのはかなりつらい。「暖は涼を兼ねる」と思って準備しておこう。
朝まで遊べるエリアもあるので、夜遊びにはしっかり防寒して臨もう。万が一酔いつぶれても風邪をひかないようにご注意を。
太陽に負けない!
天気が良ければ最高!…… とばかりは言いきれない。太陽は時として大敵にもなるのだ。
もっとも気をつけたいのが熱中症だ。高原とはいえ真夏だ。しかもアーティストのパフォーマンスに熱狂し、踊り、汗をかく。熱中症は発汗とともに、水分とミネラル分が欠乏することが大きな要因だ。
水分補給と称してビールを飲んでも、排尿とともにミネラルもさらに排出され、アルコールの分解には水分が必要で脱水症や熱中症のリスクはさらに高くなる。
まずはこまめな水分補給とミネラルの補給を心がけよう。ミネラル(ナトリウム)はスポーツドリンクや塩飴などで補給できる。行動中に濡らしたタオルや手ぬぐいを首に巻いておくなどの対策も有効だ。
初期症状としては、めまいやふらつき、筋肉の硬直などがあり、意識が混濁するようになると重篤な状態だ。もし熱中症が疑われる初期症状に気づいたら、木陰など涼しい場所に移動し回復するまで安静にしよう。脇の下や太もものつけ根など動脈を氷や冷水で冷やすのも有効だ。症状が重い場合は、早めに救護に助けを求めよう。
日差しの下では紫外線のリスクも増える。日焼け止めはもちろんだが、帽子やサングラスなども準備しておこう。絶対に日焼けしたくない人は長袖の着用を。
究極の日焼け対策はこのスタイル? 体温調節と水分・ミネラル補給に気をつけて、オシャレもフェスも思いっきり楽しもう !
(文=渡辺信吾/写真=sumi☆photo、宇宙大使☆スター、Kaoru Ito)
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