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コロナ禍で開催されるフジロック。YouTubeでのライブ配信も決定。70年代からロックし続けるレジェンドたちも見逃すな。
2021.08.17 Tue
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
フジロック2021の開催まであと数日となった。コロナ禍によって、海外からやってくるアーティストがまったくいない特別なフジロック。感染確認者も全国で増えているなかでの開催には、多くの意見があるだろう。出演するアーティストも、様々な意見があるということを十分に理解して、ステージに立つ。20年ぶりに再始動したAJICOのメンバーとして、ホワイトステージでライブをするUAも、SNSでこんなメッセージを発している。
「週末はFUJI ROCK。無事に開催されますように。メンバー、スタッフ全員PCR検査しました」。
コロナ禍によってライブする機会が激減しているアーティストにとっても、2021年のフジロックは特別な時間になる。
タイムテーブルを見ていくと、フジロックらしさをいたるところで見つけることができる。日本のロックを70年代の黎明期から作り上げてきたレジェンドと、ここ数年の間に浮上してきたアーティストたちのミックス。三世代が一緒に楽しめるフェスを目指してきたフジロックの核が、今年のラインナップに現れているように思う。今年のフジロックで見たい、レジェンド・アーティストをここで紹介したい。
August 22 (Sun) 17:20-18:20 FIELD OF HEAVEN/カルメン・マキ(Vocal)、春日hachi博文(Guitar)、川上シゲ(Bass Guitar)、武田"チャッピー"治(Drums)、厚見玲衣(Keyboards)
カルメン・マキさんが「時には母のない子のように」でデビューしたのが1969年。寺山修司さんが作詞したこの曲はミリオンセラーを記録し、NHK紅白歌合戦にも出演を果たしている。
70年代に入ってロックに転向。92年にOZを結成した。渋谷にライブハウス屋根裏がオープンしたのが75年。西荻窪ロフトのスタートがその少し前の73年だから、東京にはライブハウスというカルチャーが形成されていなかった70年代前半に、カルメン・マキ&OZはキャバレーなどを巡ってライブを続けていたという。そして75年にファースト・アルバムをリリース。このアルバムに収録されている「私は風」は、日本語ロックのマスターピースとして、今も多くのアーティストにリスペクトされ続けている。75年にはジェフ・ベック・グループやグランドファンク・レイルロードのオープニングアクトも務めたことからも、日本語ロックを代表する存在だったことが明らだ。
カルメン・マキ&OZは77年に開催。結成から5年、レコードデビューからはわずか3年弱という短い活動期間だった。
18年に41年ぶりに単独公演を行い、翌19年にはデビュー45周年を記念するツアーで5大都市を巡った。昨年11月に「閉ざされた町~コロナの時代を超えて再び~」をクラブチッタとメルパルクホールで開催。圧倒的なパフォーマンスに支えられた、時代を経ても変わらないメッセージ性。70年代から続くロックの今をヘブンで体感させてくれるだろう。
August 20 (Fri) 13:50-14:50 FIELD OF HEAVEN/岡井 大二(Drum)、根本 要(スターダスト☆レビュー) (Gt./Vo.)、西山毅(ex.ハウンドドック)(Gt.)、山崎 洋(Bass) 、三国 義貴(Key.)
71年に結成された四人囃子。ハードロックというよりもピンク・フロイドに通じる日本では数少ないプログレッシブバンドとして、同世代から絶大な支持を集める存在だった。74年に『一触即発』でメジャーデビュー。フロントマンだった森園勝敏さんがセカンドアルバム発表後に脱退したことで、よりポップなロックへとサウンドが変容していった。
スピンオフ・四人囃子は、このバンドのフォローワーを自認するミュージシャンによって企画された四人囃子ナンバーをステージパフォーマンスするセッションバンド。とはいえ今回のフジロックのライブでは、バンド結成の核となった岡井大二さんが参加。根本要さん(スターダスト★レビュー)、西山毅 さん(ex Hound dog)らがメンバーとして名を連ねている。
今年3月にスピンオフ四人囃子としてライブを開催。四人囃子の全アルバムからの選曲となったそのライブが、フジロックにも繋がっていくはずだ。四人囃子という稀有な存在のロックバンドが、日本のロックの先端を切り開いてきたことが証明される時間になるに違いない。
August 22 (Sun) 21:00-22:30 WHITE STAGE/平沢進、会人SSHO、会人TAZZ、サポートドラム:ユージ・レルレ・カワグチ
P-MODELのボーカル・ギターとして79年にメジャーデビュー。YMOをトップランナーとするテクノポップ・ムーブメントの一躍を担い、P-MODELはプラスチックス、ヒカシューとともに、「テクノ御三家」と称された。この3つのバンドの中でも、特にインテリジェンス性と先駆性を持ち合わせていたのが、P-MODELだったのかもしれない。
80年代後半にP-MODELが「凍結」し、平沢進さんはソロ活動を本格的に始動。以来、様々なプロジェクトやユニットを生み続けている。平沢進+会人(EJIN)は、ペストマスクを装着した正体不明の二人組「白会人」とのユニット。19年のフジロックでの平沢進+会人(EJIN)は、この年のベストライブにあげる人がいるほど、注目を集めた。99年には日本でいち早くインターネットによる音楽配信を開始するなど、時代に先駆けるスタンスで創作活動を行っている。
常に時代のエッジを音によって表現してきた。ホワイトのヘッドライナーというポジションは、平沢進さんが開拓してきた時代の先端にある世界同時性という意味でも、うってつけのステージだ。
残念だったのは、昨年夏に脳腫瘍の摘出手術をした高橋幸宏さんの不参加だ。72年にサディスティック・ミカ・バンドに加入。日本のみならず、海外でも認められたミカ・バンドは、74年にロキシー・ミュージックの全英ツアーのオープニングアクトも務めている。ミカ・バンド解散後の78年に、細野晴臣さん、坂本龍一さんとYMOを結成。83年の「散開」まで、YMOのテクノは日本を席巻した。フジロックにはMETAFIVEで出演する予定だったが、「ライブのための体力の回復にもう少しだけ時間がかかる」と8月5日に発表された。
どのアーティストも、懐かしむためにライブをするのではなく、今の時代に向けての表現として、それぞれの音楽をライブという時間の中に凝縮させている。日本ロックのレジェンドたちの進行形のライブ。そのクオリティは海外のアーティストと比べても、決して遜色はない。
今年もフジロックではYouTubeでのライブ配信が行われる。どのアーティストからのライブからも、強烈な思いが伝わってくるに違いない。コロナ禍でフェスに集い、ライブという時間の中で何を表現していくのか。苗場に行けない人にとっても、今年の特別なフジロックは見逃せない。
配信予定のアーティスト
RADWIMPS
King Gnu
電気グルーヴ
AJICO
THE ALEXX
青葉市子
4s4ki
Awesome City Club
THE BAWDIES
BEGIN
THA BLUE HERB
カルメン・マキ&OZ
cero
CHAI
Char
Dachambo
DENIMS
ドレスコーズ
DYGL
envy
FINALBY( )
EY∃(BOREDOMS) x COSMIC LAB x TAIKI NIIMI x KANTA HORIO x MASUKO SHINJI
GEZAN
H ZETTRIO
秦 基博
平沢進+会人(EJIN)
羊文学
忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER with ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA feat. 仲井戸”CHABO”麗市
GUEST:UA、エセタイマーズ、奥田民生、GLIM SPANKY、甲本ヒロト、チバユウスケ、Char、トーキョー・タナカ/ジャンケン・ジョニー、トータス松本、YONCE
indigo la End
Kan Sano
カネコアヤノ
KEMURI
Ken Yokoyama
KID FRESINO (BAND SET)
君島大空 合奏形態
KOTORI
LITTLE CREATURES
前野健太
MAN WITH A MISSION
Mega Shinnosuke
METAFIVE (砂原良徳×LEO今井)
millennium parade
民謡クルセイダーズ
MISIA
光風&GREEN MASSIVE
MONO NO AWARE
NUMBER GIRL
OAU
OKAMOTO’S
折坂悠太(重奏)
くるり
ReN
ROVO
サンボマスター
SIRUP
THE SKA FLAMES plus Special Guest 元ちとせ
5lack
草田一駿 五重奏体系
THE SPELLBOUND
STUTS (Band set : 仰木亮彦, 岩見継吾, 吉良創太, TAIHEI)
SUMMIT (PUNPEE, GAPPER, OMSB, MARIA, SIMI LAB, DyyPRIDE, BIM, VaVa, in-d, C.O.S.A. × KID FRESINO, BLYY, TWINKLE+)
砂原良徳
サニーデイ・サービス
Tempalay
TENDOUJI
TENDRE
手嶌葵
tricot
上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット
Vaundy
Yogee New Waves
yonawo
yonige
スピンオフ四人囃子 feat.根本 要&西山 毅