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フェスのチケット代は、もっと高くてもいいんじゃない? FRUE、クラウドファンディング実施中。
2023.12.14 Thu
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
新型コロナウイルスが5類に以降されたのは、今年5月。まだ数ヶ月前しか経っていないのだけど、訪日外客はコロナ前の近い数字まで戻ってきているという。海外アーティストの来日公演も、コロナ時代に比べれば確実に増えている。
コロナが収束して、今年は数多くのフェスが開催された。10月に開催されたメタモルフォーゼなど、10数年ぶりに復活したフェスもあった。どれもが賑わったというわけではなく、チケットがソールドアウトになったフェスもあれば、集客に苦戦していたフェスもあった。
1O月に11年ぶりに開催されたメタモルフォーゼ。アフリカ・バンバータやカール・クレイグなど、かつて出演したアーティストをラインナップしたが、集客は厳しかった。
自分が今年参加した20近くのフェスのなかで、昨年よりも確実に賑わっていたフェスの筆頭が、11月に開催されたFESTIVAL de FRUEだった。ブラジル音楽界の奇才エルメート・パスコアールや、ジャック・ジョンソンのアルバムなどのプロデュースで注目を集めているブレイク・ミルズ、日本人アーティストも中村佳穂やGEZANなどが出演した。知名度や一般的な人気ではなく、オーガナイザー自身の耳や体験をもとにしたアーティストセレクションによって、このフェスのテーマである「魂の震える体験」を参加した多くの人が実感したからこそ、年を重ねての集客につながっているのだろう。
そのFESTIVAL de FRUEが、クラウドファンディングを実施している。今年の急激な円安と航空券や日本の宿泊費など、フェスを開催する経費が予想を超えたスピードで高騰しているのが理由だという。
エルメート・パスコアールやブレイク・ミルズなどが出演した今年のFRUE。
クラウドファンディングのページでは、具体的な数字も表している。7月のFRUEZINHOと11月のFRUEで招聘したアーティスト&スタッフは42人。航空券は約500万円、渋谷でのホテル宿泊費は約155万円も想定より高くなっていることが明かされている。FRUE 2023の2日通し券は早割1万7000円〜当日2万1000円、FRUEZINHO 2023の1日券は早割1万2000円〜当日1万6000円だった。
FRUEクラウドファンディングの返礼品のひとつ。エルメート・パスコアールの直筆の楽譜の手拭い。
海外からアーティストを招聘しているフェスは、きっとFRUEと同じように苦労しているに違いない。オーガナイザーとしては、去年の金額よりも一気に上げることは難しいだろう。チケットの値段を上げれば集客が減ってしまうという危惧もつきまとう。今年のフジロックの3日通し券は4万8000円で一日券は2万1000円、サマーソニックの2日券は3万4000円で一日券は1万8500円。朝霧JAMはキャンプ利用も含めて1万9800円。2024年のアメリカのコーチェラフェスは649ドル(約9万1000円)。ちなみにフジロックやサマーソニックでヘッドライナーと務めたことのあるノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの11月の来日公演のチケットはSS席が1万5000円で、来年2月に予定されているクイーン+アダム・ランバートのSS席は2万5000円だ。
フェスの面白さは、いろんなアーティストが一堂に会することにある。多様性を受け取れる場所がフェスであり、知らなかった文化に出会えるのがフェスだ。老若男女、誰もが同じ目線で、同じように数日間が楽しめる場所。そこには衣食住楽がある。もしかしたらその存在は奇跡と言ってもいいのかもしれない。アーティストだけではなく、日本のフェスに行きたいという海外のフェスファンも確実に増えている。その場を持続さられるように、ひとりひとりが協力する心を持っていたいと思う。
例年より2週間遅くなって開催された朝霧JAM。雄大な富士山が目の前に広がるシチュエーションは、出演する海外アーティストからの人気も高い。