- 料理
災害時にも役立つ。わずかな水でごはんをおいしく炊く方法
2015.03.17 Tue
渡辺信吾 アウトドア系野良ライター
先日、若洲公園キャンプ場で開催されたイベント「焚火クラブ」にお邪魔した際に、ジップロック®的なジッパー付食品保存用ポリ袋(以下「ジップ袋」という)でごはんを炊くワークショップをやっていたので参加してみた。
このワークショップは、STEP CAMPという集団? 団体? いや活動といった方がいいか? とにかく災害・被災時に役立つアウトドアのノウハウを、楽しく、実践的に学ぶ体験型の『防災キャンププログラム』を提案している人たち。代表は3knotの寒川ハジメ氏、サポートメンバーもアウトドアの達人揃いだから間違いない。今回教わったジップ袋を使った炊飯もそんな防災キャンププログラムのひとつ。防災に役立つことはもちろんだが、キャンプや登山をする人にとっても「なるほどっ!」「へぇ~」と言わずにいられないナイスなライフハックだ。
ジップ袋での炊飯以外にも、枯れ枝や牛乳パックを利用してお湯を沸かせるケリーケトル体験や、1分間でできるパスタづくりなどのプログラムも。
用意するものは
・シングルバーナー
・コッヘルまたはお鍋
・ジップ袋
・無洗米 1/4合~1合
・水(炊飯用)米と同量より少し多め
・水(煮沸用)ジップ袋が7~8割浸かる程度
たったこれだけ。簡単に説明すると沸騰したお湯に、お米と水を入れたジップ袋を入れて、煮沸しながら15分ほど炊くという炊飯方法だ。ただそれだけなのに、ここにはアウトドアのノウハウや知恵が詰まっている。
蓋はしないでコポコポ15分前後。鍋肌にジップ袋が当たらないようにご注意。
まず用意する水だが、キレイなお水はお米とほぼ同量より少し多めぐらいあればよくて、鍋で煮沸する用のお水は川の水でも雨水でもOK! つまり山でも災害時でもお水は貴重なわけで、直接口に入れない水はなんでもいいってことだ。食欲をそそるかどうかは別として最悪泥水だっていいのだ。もちろん無洗米を使うのも、米研ぎに水を使わなくて済むからだ。
ジップ袋で炊いたごはんは食器に移してもいいが、袋からそのまま食べてもいい。そうすれば無駄な食器を使わなくて済むし、もちろん洗い物も出ない。さらにもし食べきれなくてもそのままジップ袋にいれたまま保存できて、次に食べるときにはそのまま湯煎すればいいそうだ。
もう一つおまけに、炊いた後、粗熱が取れたら、袋から出さずにそのままおむすびが作れるのだ! ジップ袋の内側はお米からの水蒸気があるのでくっつくこともないし手も汚さない。逆に手が汚れていたとしてもおむすびが作れるとも言える。
炊きあがったらお塩やふりかけを入れて袋ごとおむすびに。手も汚さず、食器も使わずに三角おむすび完成
肝心の味の方もまったく問題ない。釜で炊いたときのようなお焦げこそできないが、ほぼほぼ失敗なく炊けるらしい。もし炊き上がりで芯があったとしても、さらに数分煮沸すればいいだけだ。実際、私が試したときには15分ぐらい炊いたところでチェックしてみたら少しだけ芯があったので、さらに5分ほど煮沸した。そうするとホカホカでみずみずしいごはんが炊けた。今回は吸水時間なしでやったが、炊く前に30分程浸しておくと芯が残りにくいかもしれない。
さて、せっかくなのでいくつかこの炊飯に関するコツや注意点を書き留めておこう。
・シングルバーナーは火口が広がるタイプがよい
火口が1点集中するタイプよりも鍋底全体に広がるタイプがムラなく炊ける。できればカセットボンベタイプの方が、災害時にも入手しやすい
・ジップする際には、できるだけ空気を抜いておく
煮沸時は袋の中で水蒸気が発生する。空気が入っていると袋がパンパンになって口が開いてしまう可能性があるので注意
・お米を入れすぎない
コッヘルや鍋、そして袋とのバランスにもよるが、たくさん入れすぎると袋の中で米が踊らない(循環しない)ので炊きムラになる。たくさん炊きたい場合は、袋を小分けにするとよい
・鍋肌に袋が当たらないように注意
電子レンジでも使用できるこのようなポリ袋は、耐熱温度が140℃前後なので、お湯の中にある分には溶けないが、熱せられた鍋肌に袋が当たると溶けて穴があく可能性がある。袋が鍋肌に付きそうな場合は、箸などでつついて保護する
・蓋はしない
袋が鍋肌に当たると溶けるのと同様に、蓋に当たっても溶ける場合がある
・炊く時間は約15分を目安に
夏と冬では炊きあがりに時間差が出るが、おおよそ15分を目安に炊きあがりを確認しながら調整しよう
・蒸らし時間も取ろう
通常の炊飯と同様に蒸らし時間も取ろう。5分から10分が目安
文面で伝えられるのは概ねこれぐらいだ。もしSTEP CAMPが開催されているイベントに参加できるなら、実際に体験するのが一番だ。またイベントに参加できない場合でも、自分なりに試行錯誤してみて、分量や時間、器具の選定などよりよい方法を探ってみてはいかがだろう。仮に失敗したとしてもそれは次へのステップとなる。アウトドアのレジャーでも、災害時であっても、実際に体験したことが活かされるのだから。
■STEP CAMPに関する詳細はこちら
STEP CAMPサポーターの仙田さんご夫妻。STEP CAMPのプログラムをやさしくレクチャーしてくれます。