- 料理
登山にキャンプにおつまみに。あこがれの干し肉「スモーク・ジャーキー」を作ろう!
2016.03.14 Mon
藤原祥弘 アウトドアライター、編集者
古くからある肉の保存法といえば、塩干と燻製。腐敗のもととなる水分が抜けると、肉はぐんと長もちするようになります……
と、ここまで読んで「あれ、このタイトルと展開、前にも見たことがあるぞ」と思ったそこのあなた、すばらしい記憶力をお持ちですね! 今回の記事は昨日アップされた「干し野菜」の姉妹編です。
野菜同様、肉も水分を抜くことで保存期間を伸ばせます。塩干に加えて燻煙すれば、植物中に含まれる防腐・殺菌成分を肉に付着させることができ、なにより、食欲をそそる味と香りをつけることもできます。
そんな燻製を「手作り」でというと、思わず身構えてしまいそうですが、意外にも燻製は野外料理のなかでは手軽な部類。特別な道具も必要ありません。
入門者におすすめなのが鶏の胸肉を使った「スモーク・ジャーキー」。脂が少ない胸肉は燻製中の失敗が少なく(脂が多いと脂が燃えたりする)、燻煙によって旨味がぐんと増す(元々美味しいものはそのまま食べたほうがいい)ので、燻製デビューにうってつけの材料です。
用意する調味料は醤油、砂糖、ニンニク、ショウガ、コショウといった台所にあるものでOK。もちろん、これらにお好みでスパイスを追加しても構いません。それでは以下、下ごしらえの解説です。
材料一式。今回の胸肉は100g65円の実力派。ニンニク、ショウガはすりおろして醤油と合わせ、砂糖、コショウをお好みで追加
肉は皮と脂身を取り除いてから、薄く長くスライス。肉を薄くすることで液がしみやすくなり、また水気も抜けやすくなります。スライスした胸肉はジップロックに入れて液と合わせて揉み込み、半日ほど冷蔵庫でなじませます
半日経ったら、肉を引きあげて皿の上に薄く広げて再び冷蔵庫で半日。冷蔵庫で風乾することで余計な水気を抜きます。写真は半日経ったもの
肉を段取りしている間に作るべきは「スモーカー」。上を見れば数万円する高級モデルもありますが、今回挑む低温の燻製(温燻)なら煙を閉じこめられる箱状のものならどんなものでもOKです。
求められる条件は(1)肉を吊り下げることができ(2)煙を留められて(3)スモークウッドを入れられて(4)ときどきのぞいて確かめられること。
ということで、デビュー戦はこれらの条件を満たすもっとも身近な素材「ダンボール」で簡易スモーカーを作ってみましょう。
用意するのは50×50×70㎝程度のダンボール箱。これより小さくても大きくても使えますが、小さい箱は煙がよくこもる反面操作性が悪く、大きい箱は煙が散らばってしまって燻煙が薄くなりがちです。ダンボールは上開き、横開きどちらでもよいですが、上開きのほうが肉の吊り下げが簡便です。
それでは、すべての開口部をガムテープで留めてから、天側をコの字型に開きましょう。続けて底側にスモークウッドを入れるための開口部をこれまたコの字型に細工。必要な作業は以上。これでスモーカーができあがりました! 所要時間はおよそ2分といったところでしょうか。
風乾が済んだ肉は、金串に刺してすだれ状にしておきます。この金串を開口部に渡していきますが、ただ渡すだけでは蓋をしたときに肉がくっついてしまうので、開口部にスリットを入れて少しだけ下げましょう。
構想から完成まで約2分。総工費、タダ。安いけれど、仕事はきっちりするスモーカー。今回はみなさんに「自分もできそう!」と思っていただくために、わざとクオリティをさげています。わざと、ですよ!
スモークスタート。なぜか卵のようなものやタコの足のようなものが見えますが、たぶん気のせいです
肉を設置したら、市販のスモークウッドにバーナーで火をつけて箱の中へ。金属製の皿などにのせ、小石や金網などのスペーサーをダンボール箱の底に置いてからその上に載せましょう。スペーサーを入れないと、食材を煙で包む前にスモーカーが炎に包まれるかもしれません。
ホームセンターなどで売られているスモークウッド。燻煙材はチップ状のものもありますが、最初は手間いらずなウッドタイプがおすすめ。今回は1本が3分割されて燻煙時間の調整がしやすい「いぶし処 スモークウッド 老舗さくら」を使用。460円
スモークの効き方は気温やスモーカーの大きさ、吊るす食材の量によってまちまち。ときおり蓋を開けてのぞき、表面の色を見て燻煙の度合いを確かめましょう。
今回はスモークウッド2個ぶん、計3時間程度いぶしたところで色味が頃合いになったので完成としました。燻し加減は良かったものの、若干水気が残ったので干し網に入れてひと晩さらに風乾。カッピカピに仕上げます
こちらが完成品。すぐに食べる場合はもっと水分が多くてもよいですが、保存が利くようにしたかったので、かなりきつめに乾かしました。ウイスキーはもちろん、赤ワインとの相性もばっちり。行動食として持ち歩けば、ワイルドな自分を演出することもできます
干し野菜と合わせて煮込み、塩コショウで調味すればポトフ風のスープに。味の薄い鶏の胸肉でも、一度燻製にするとしっかりとした旨味が出ます。干し野菜とジャーキーがあれば、旅先で水さえ入手できればこんなスープを作ることができます
今回紹介した燻製方法は、もっとも手軽な「温燻」という方式。スモーカー内を最高で80℃程度に保ち、熱によって乾燥と殺菌を行ない、煙で抗菌成分も付加します。
ところがこの温燻、誰でも手軽に楽しめる反面、温度管理がちょっと難しいのも事実。しっかり色がついても熱の入りがイマイチだったり、その反対もありえます。
となると、心配なのが食中毒。私のまわりでは燻製に失敗して当たったという話は聞いたことがありませんが、中毒が起きないとはいいきれません。
温度管理に自信がもてない人は、液につけるタイミングで70℃弱のお湯で1時間ほど煮て滅菌するなど、くれぐれも衛生面には気をつけて自己責任でお楽しみください!
「食中毒は怖いけど、その気になっちゃったよ!」という人は、茹で卵や茹でダコなど、あらかじめ熱が通った食材でどうぞ!