- 料理
人気コミック『山と食欲と私』の主人公・日々野鮎美と歩く 使える山ごはんアイテム探しワンデリング 三鷹・吉祥寺編(後編)
2016.04.29 Fri
柳澤智子 ライター、編集者
前半では、三鷹のハイカーズデポさんにお邪魔して、
よもぎの粉や野草のグラノーラに興味津々だった私たち。
後半は、三鷹からJR中央線で隣駅の吉祥寺編です。
————————————————————————————————————
高 アウトドアタウンとして名高い吉祥寺に移動しましたー。
木 山幸、エイアンドエフ、エルエルビーン、ICI石井スポーツ、オッシュマンズ、モンベル、L-Breath、パタゴニア、バーグハウス、スマートウールを扱うシーズンなどお店がたくさんあるよね。
高 センセイは、どんなお店に行かれるんですか?
信 あんまり最新ギアに興味がなくって、あんまりお店は行かないんですよー。取材としては、のぞきますけど。
高 ああー、なんだかわかる。コミック1巻のカバー外した表紙まわりに描かれた鮎美ちゃんの山道具、全部渋めですもんね。
重量まで書いてあるので目を凝らしてよく見てね。もしくはコミックス買ってね!
信 自分が好きで使っている道具を、鮎美にも使わせているんです。鮎美は見た目は女性でも、その実おっさん趣味。
木 私も登山靴、SIRIOなので嬉しいなー。
高 マンガ上では、OSIRIになってるけどね(笑)。鮎美ちゃんの調理道具、スノーピークのソロクッカーとトランギアのメスティンなんですね。両方、私も持ってる。これで鮎美ちゃんは、カップラーメンとソーセージを同時に茹でたり、水戻しパスタを作ったり、ごはんを炊いたりしているわけですね。ところで、読者人気が高かった料理ってなんだったんですか?
サッポロ一番に、ピリ辛、レモン&パセリ、ペッパー&ガーリック3種入った“御殿場ソーセージを一緒に茹でる”という回。これは間違いない味でしょう!
信 反響の大きさで言えば、ラーメンにウィンナー(しかも、ちょっといいやつ)をそのまま入れてしまうウィンナ〜麺(2話)、湧き水で淹れるコーヒー(コーヒー豆は京都小川珈琲のオーガニックハウスブレンドという珈琲通もうなる設定!・3話)、メスティンでの炊飯(14話)、天かすとポン酢をごはんにのせた「ぽんかす丼」(15話)、ウィスキーとショウガを入れる「大人のココア」(19話)あたりかなあ。ツイッター、インスタ、youtubeでレシピを再現してくれる読者の方がいて、とても嬉しいんですよ。
高 確かに真似したくなるレシピが多いですよね。ぽんかす丼は目からうろこでしたよ。
木 「大人のココア」の回に出てきた男性が、かっこよかったですよね。
道に迷ったときに、ともに雨宿りをした翻訳者の男性のこと。この男性が鮎美に体が温まるココアをふるまってくれ、鮎美がときめく、という話しでした。
信 どのへんがかっこよかったですか?
木 持っていた敷物とビニール紐で、簡易のタープをはってくれたところでしょうかね。こういう機転がかっこいいというか。
高 確かにちょっと枯れたルックスで紳士的で、かっこよかった!でも、私より全然年下の設定で、若干しょんぼりしたけど。
————————————————————————————————————
一行は、アウトドアショップではなく、掘り出しものを探しに乾物屋と100円ショップに行くことに。
まずは、吉祥寺駅北口、ダイヤ街にある乾物店・土屋商店さんへ。
高 いろいろ乾物がありますねー。この、店の外にまではみだしている青空スタイルが素晴らしい。
信 こういった店は、きっと鮎美も好きですね。切り干し大根や高野豆腐はいいですよね。食物繊維が多くて(笑)!! (と栄養素が書かれたパッケージを真剣にチェックする)
高 おしりにやさしい食物繊維(笑)
木 この塩昆布おいしそう。私、行動食として塩昆布持っていくんですよ。
高 え、歩きながら食べるの?
木 うん。
高 喉渇かない?
木 ちょっとずつだし渇かないよ。アミノ酸たっぷりな感じで食べやすいし。
高 ほほー。確かに塩昆布あれば、キャベツやきゅうりと一緒にジップロックに入れてもんだりしてもいいし、お茶漬けやパスタにもできるし、いいね。
作中にも乾物は出てきますよね。鮎美ちゃんがスーパーで買い物している場面で、ごまや乾燥わかめ、乾燥野菜、乾燥ネギ、桜エビを小分けにして調味料バッグに入れている、という。センセイもそうなんですか?
信 そうですね。あと、カレー粉は絶対入れる! ごはんに飽きた時、カレー粉があったら生き返るね。インスタントスープも数種類、入れてます。やっぱり、山の上でも好きな味を選びたいじゃないですか。
高 しょうゆとか油はどうしていますか?
信 液体のものはいれないんですよ。山でもそんなに使わないし。
ところで、あの店なんですか?
土屋商店の斜め前、メンチカツをもとめて長蛇の列ができることで知られる精肉店サトウを指差すセンセイ。このときも、揚げ物のいい匂いが辺りを包んでいました。
木 ここ、メンチカツが本当にジューシーでおいしいんですよ。
高 精肉店でステーキハウスも経営していて、松阪牛の切り落としを使っているらしいですね。
信 ちょっと並びましょうか。
高 あー、もう夕方でメンチカツは売り切れてますね。とんかつはまだあるみたい。
信 並びましょう、並びましょう(小走りで去っていく)
木 じゃあ、私あっちの塚田(おでんのタネ屋さんで、かまぼこやさつまあげがおいしい)に行ってます。
それぞれにとんかつとさつまあげを手に持ち、商店街のすみっこで立ち食い。しかし、サトウのとんかつは巨大でサクサクでうまし。
信 うまーーい!あ〜〜、うまい!! これは、めっちゃうまい!!(興奮気味に)あ〜〜〜、うまいな〜〜〜!
ここいちばんのテンションが上がる信濃川さん。取材時の食事が、400円のとんかつ立ち食いでめんぼくない。でも、ここのってどれもとってもおいしいんですよね!
信 最後に100円ショップ行きましょうか。意外に山で使えるものがあるんですよ。
というわけで、ぞろぞろとサンロードのダイソーへ。
ダイソーは、吉祥寺北口サンロードにあります。シーズン的にアウトドアものが充実のよう。
木 ステンレスのマグカップがある。
信 (折りたたみのスプーンとフォークを手に取り)これなんていいんじゃないですか。
木のスプーンはいいですよ。寒い時期でも、冷たっ!ってならないしね。
信 この木のスプーンもなかなかじゃないですか。コッヘルにカチカチとあたる音が嫌で、スプーンは木のものにしているんですよ。
高 本当だ。このピンクのお花のパッケージがなんだかなあ、ですがスプーンはかわいいですね。れんげまである。
液体の調味料入れに。贅沢をいうと、登山にはもうふたまわり小さくてもいいかなあ。キャンプには使えますね!
信 こういう小さい調味料入れも使えますよね。食材コーナーも行ってみますか。
ダイソーオリジナルの品がたくさん。コストパフォーマンス、高いです。
高 ドライフルーツやあんこがありますよ。行動食にいいんじゃないですか?
木 パルメザンチーズもありますよ。
信 こういう少量パックはいいですね。あのクラフトの緑の丸い筒のやつは持っていけないですからね。
みんな大好き、ラーメン。
高 棒ラーメンのようなラーメンがありますね。豚骨としょうゆがある。ほかにも小さめの春雨やフォーもあって、麺が充実していますね
鮎美ちゃんって、テントと食料背負って、単独で登っているからけっこうな体力の持ち主。酒好きだからお酒も持って行っているだろうし(360mlのではありますが、ワインボトルを持ってあがっている描写あり)。私と木下さんは山小屋に泊まる派なので、あんまり山で料理をしないんですが楽しそうですね。
木 バーナーでバケットあぶったり缶詰を温めたりと、つまみくらいは作るけどね。
信 いやー、実は鮎美もそこまで凝った料理はしていないんですよ。激しい登山もしているようでしていないし、テント泊も数回だけ。
高 これから鮎美ちゃんがどんな山に登るのかも興味がありますし、いろんなキャラが出てくる予定だそうで、展開が楽しみですね。
信 今回もいい勉強をさせてもらいましたよ。ULは漫画でも描きたかったので、ハイカーズデポさんみたいなお店はおもしろいですね。8月9日には、2巻がでますので楽しみにしていてください!!
———————————————————————————————
今回のみっけもの?
ダイソーにて300円の腕時計
信濃川センセイいわく、低山ハイキング程度だったら時計は安くてもいいんじゃないかと。センセイの時計は、カシオの980円らしいです(これは、出張で時計を忘れたことに気付き、あわてて間に合わせで買った物が、意外に調子がよかったため、使っているとのエクスキューズあり)
紛失することもあるし、私もスントを持っていますが、高度計や気圧計、コンパスモードを使いこなしているかと言われたら、あうう。そこで、この300円の時計です。低山くらいならば時間がわかればよしとする、の精神でこれもあり? ちなみに鮎美ちゃんの時計は、「Oasic PRO-TRECER」という設定だそう。
———————————————————————————————————————
信濃川日出雄(しなのがわひでお)
漫画家。山好きがこうじて、山の漫画を描きたいと、くらげバンチに『山と食欲と私』を連載中。1巻が好評発売中、2巻は8月9日に観光予定。他作品に『fine. 』(ビッグコミックスピリッツ/小学館)、『ヴィルトゥス』(同)(ビッグコミックスピリッツ/小学館)、『少年よギターを抱け』(ジャンプ改/集英社)、『茜色のカイト』(フィール・ヤング/翔伝社)など。2011年に、北海道に移住し、静かな山のなかで暮らす。「読者のイメージをこわしたくないため、本人の姿、形は出さないでね」とのこと。メガネが似合う素敵な知的な男性です。
木下綾乃(きのしたあやの)
イラストレーター。手紙を書くことが好きで、手紙にまつわる著書多数。『手紙を書きたくなったら』『木下綾乃のレターブック』『切手な北古賀』 (以上WAVE出版)、『手づくりする手紙』(文化出版局)、『文房具さんぽ』(世界文化社)など。共著に『しりとり世界いっしゅう』(mille books)。『わたしの鎌倉』(学研)。文系のイメージが強いが、ここ6年ほど登山にはまり、北欧のロングトレイルにも足を運ぶ。仲間と登山と温泉をめぐる山岳会「岳泉会」を結成し、ピークハントをめざさない山歩きを愛する。