ハワイのモロカイ島はハワイアンの魂が残る島

2023.03.30 Thu

すず バックパッカー

 ハワイ諸島は主要6つの島からなる。ハワイ島にオアフ島、あとは……そうそう、カウアイ島!

 ここまではハワイに行ったことがない人でも答えられるかもしれない。ちょっと詳しい人はマウイ島まで出てくるかも。

 残りふたつは?

 いちばん小さな島がラナイ島、そして2番目に小さなモロカイ島。

 今回はモロカイ島の話をしたいと思う。

 なぜマイナーな島の話かって?

 それは、6つすべての島を旅した私がいちばん好きな島だからだ。

 ここには昔のハワイがそのまま残ってる。いちばん力強くハワイアンのスピリットを感じる場所なのだ。

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 モロカイ島へはオアフ島から飛行機に乗って行く。2022年はコロナの影響もあってか、マウイ島からのフェリーは利用できなかった。

 オアフ島のダニエル・K・イノウエ国際空港からモロカイ空港までは、モクレレ航空の11人乗りの小型セスナに乗って行くことにした。

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 ダニエル・K・イノウエ国際空港のターミナル3。ここはモクレレ航空専用の小さいターミナル。ほかのターミナルから独立して離れたところにある。

 ターミナル3にはスタッフがふたり。小ぢんまりしていてアットホームな雰囲気。荷物の検査もなく搭乗の時間がくるまで空港で待つ。早く着きすぎた。

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 早朝の4時に空港から見える朝焼けの空。はじめての小さなセスナに乗って、モロカイ島に降り立つことを考え胸が騒ぐ。遠足の前日に興奮しすぎて眠れず朝を迎えた子どもみたいな気持ちだった。

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 小さなセスナ機! “Mokulele” のレトロな文字とハイビスカスのロゴがかわいい。

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 パイロットが気さくに話しかけてくれ、空の旅がスタート。低く飛ぶので眼下の景色が間近に見えた。

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 モロカイ空港に到着し、目に入った絵。この、つぶらな瞳を守りたい。筆のタッチが素朴なんだよなぁ、味がある。

 公共交通機関が充実していない場所だからこそ、レンタカーは必須。

 古めいたセダンの車種を予約していたのに、駐車場で眩い輝きを放っていた赤いZeep(ジープ)に惹かれアップグレードしてもらった。

 ひと目で観光客とわかるいで立ちだが、とにかくヤシの木と青い空が似合うこの車に乗って走りたかった。

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 さて、この島をどう楽しもうか?

 とりあえず町の中心地に向かい、コーヒーショップや観光案内所でおすすめの場所やアクティビティを聞き込み。

 紹介してもらったシュノーケルやボートツアーもいいのだが、なにかもっとここだからできる特別な体験を期待しているところがあった。

 というのも、私たちはある人物を探していた。

 ある人物とは、“モロカイ島でするべき15のこと(Top15 Things To Do Moloka’i)” というYouTubeビデオで見た “エディおじさん” 、モロカイのローカル案内人だ。

 だが、観光案内所で聞いてもエディおじさんの情報は得られなかった。

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 赤いZeepを走らせビーチに向かう。

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 エディおじさんの情報を得られなくても落胆することはなかった。ここには手付かずの自然がある。この自然に溶け込んでのんびり過ごすことが、すでに特別なことなんだと思えたからだ。

 余談だが、旅の目的地が決まり、そこでなにをするか? どこに行こうか? とプランを考えるとき、おすすめしたいのは、英語で検索すること。

 日本語で検索するより、検索結果が何倍にもなるということもあるが、なにより、アウトドア系→いわゆる自然で遊ぶことを得意としている人→つまり、いちばんおもしろいことを知っている人たちや、プロの冒険家などといった人たちは圧倒的に世界共通語の英語で発信しているからだ。

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 海の透明度はどの島よりも高い!

 私たちのほかに人はいなくて、ただ自然が生み出す音が聞こえる。ずっと遠くに水平線が見える。東京の雑音のなかで忙しく働いていたころ、「ひと時でいいからだれもいない南の島でぼーっとしてみたい!」と妄想していた景色が、いま目の前に広がっていた。

 都会に住み目標に向かって必死に働くこともすばらしい。その経験があるから自然の中でゆっくりすることのありがたみをより強く感じる。

 この海には派手な魚はいない。海の水と同じ色の透き通った飾り気のない魚がちらほら泳いでいた。

 ひとしきり泳いだあと、カニを見つけてひたすら観察していると、使い古された1台の車が駐車場に停まった。

 “使い古された” ところにローカルな味を感じ、なにかいい予感がして、駐車場まで行ってみると、なんと! エディおじさんが偶然にも現れたのだ!!

 私たちはあなたのことを探していて、モロカイ島で最高の体験をしたいんだ、ということを伝えると、「明日、最高の場所に連れて行くから、朝9時に私の家の前に集合な!」と言って名刺をくれ、その日は別れた。偶然の出来事と明日のことでワクワクが止まらなかった!

 エディおじさんもゲストを探していたのだろう。観光客まる出しの赤いZeepを選んだ1時間前の自分たちに感謝した。

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 翌日9時、塀の上にびっしりとならんだお酒のビンが強烈な個性を放つ家に到着。エディおじさんが言った通りですぐにここだとわかった。

 エディおじさんが運転する車について目的地に向かう。この島には信号機がひとつもない。なににも止められることなくスイスイと気持ちよく車を走らせる。

 島の人口は約7,500人ほどで、ハワイ諸島6島のなかではもっとも観光開発が進んでいない。古き良きハワイに浸ることができる。

 どこに連れていってくれるんだろう、というドキドキ感、そして車窓から見えるまぶしいほどに鮮やかな海の元気なパワーを浴びて、今日を楽しむ序章曲のように心のボルテージが上がっていくのを感じた。

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 エディおじさんが車を停め、いよいよ冒険のスタート地点に到着!

 この荒廃したくぐり門がまたいい雰囲気を醸し出している。地図で確認すると、ここはハレワパーク(Halawa Park)の入り口のひとつのようだ。

 エディおじさんはステッキになりそうな長い木の枝を見つけて手に取ると、仙人のような出立ちで門をくぐった。

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 バナナやモンステラなどの南国らしい木が生い茂る道を進む。

「あそこにならんで生えているのはカロだよ」

 カロはタロイモのことで、ハワイアンの主食なんだそう。タロイモをすり潰して発酵させた “ポイ” はハワイアンのソウルフード。「ハワイアンはカロから生まれた」なんて神話があるほど大切なものらしい。日本人にとってのお米のようなものだ。

 あまりにエディおじさんのプレゼンが上手で、カロを食べてみたくなって、翌日、カロのチップスを購入。スライスしたカロを揚げて塩をかけただけのシンプルなもので、すごくやさしい味がした。ジャガイモのチップスよりも気に入った。

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 ときに枝を掻き分けながらジャングルの中を進む。

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 エディおじさんによる自然体験学習の時間。

「地面に転がっている黒い実を集めて! とくに振るとコロコロ音がするものをね」

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 20個ほど集めてエディおじさんに渡すと、石でその殻を割り、中の実を取り出した。

 実に火をつけると炎が出てずっと燃えている。

「これはククイナッツだよ。油分が多いから電気のない時代、灯火として使われていたんだ」

 今度は実をすり潰して、肌に塗ってみるとボディオイルになった。

 ロミロミというハワイのマッサージにもこのククイナッツオイルが使われ、かなり気持ち良く疲れがとれ、お肌がよみがえるらしい。

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 目の前に、不思議な球体を見つけた。

 なにかの実? たまご?

「これはノニのフルーツだよ」

 ノニって、あの独特な匂いがするジュースの? これが原型か。

 生で食べたら舌が痺れるほどエグいらしい。ノニは奇跡のフルーツと呼ばれ、古くから万能薬として使われたそうだ。

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 私たちは歩けば歩くほど、ハワイの歴史や自然、神話などの知識を知ることができた。

 本やネットで調べるのとはちがう、ハワイのローカルの人の声で、本物の自然の中で聞くこの講義は代えがたい特別な体験だ。

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 いろんな話をしながら歩き続けること約2時間、景色が急に変わり、目の前に大きな滝が現れた。落差80mのモアウラ滝(Moa’ula Falls)だ。

「モアウラ」には「赤いトカゲ」という意味がある。この名前は、トカゲの形をした水の精霊モオが、滝の下の深い池にまだ住んでいるという伝説に由来する。モウの気分次第では泳ぐ人を襲うかも? なんて言われている。

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 滝の近くのトレイルは大きな岩がゴロゴロとしていて、なかなか歩きにくい。70代のゲストの人々もいっしょにここまで歩いてきたのだが、この箇所は手を取りながら協力して進んだ。

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 滝を堪能したあと、腹ごしらえをし、すばらしい景色も見れ、引き返すのかな? と思ったら、エディおじさんが靴を脱ぎはじめ、滝つぼにダイブした。

「気持ちいいぞー!」と言って、みんなに来るように手招きする。

 岩のすぐ近くは浅いが、2mほど泳ぐと足がつかなくなり、かなりの深さがある。恐怖もあったが十数メートル先にいるエディおじさんの元へ行きたい好奇心が勝ち、泳いでいった。

 おどろいたことに、70代のゲストたちも服を脱いで滝つぼにダイブ。チャレンジ精神は年齢に関係ない。ひとりはガンを患っていると言っていた。病気や困難があるとき、どんな風に人生を過ごすかは自分次第なんだと感動した。

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 一度はやってみたかった滝行を、このモロカイの地で体験できるとは! 滝に打たれた体験はただただ最高だった。

「ここ泳ぐの!?」というおどろきにはじまり、年配のゲストの挑戦に感動し、勇気を振り絞って泳ぎ着き、叩きつける水しぶきの爽快さを知った。短時間でいろいろな感情が押し寄せると、快感として心に残るのだろう。

 歩いてきた疲れが一気に吹っ飛び、帰り道の足取りは軽かった。太陽のように豪快に笑うエディおじさんとの時間はこの旅を特別なものにしてくれた。

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「NO TOURIST!」

 ときどき、このような看板を見つけた。

 このモアウラ滝までのトレイルは、私道を含むため、ガイドやローカルの案内が必要だ。古き良きハワイを堪能できるモロカイ島は、観光開発が進んでいないからこその魅力がある。訪れる際は、「だれかの家におじゃまする」感覚でいてもらえるといい。人の家へ挨拶せずに土足で入ることはないように、ローカルと話をし、学び、自然をリスペクトする。そうすれば歓迎してくれ、より多くの特別な体験ができる。

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「またいつか絶対にこの島へ戻ってくる」と心に決め、モロカイ島をあとにした。

すず バックパッカー

仕事人間だった人生に終わりを告げ、ポーランド人のシシューとともに、バックパックひとつで167日間の世界一周の旅を経験。旅の目的は「絶滅してしまう前に多くの野生動物を見ること」「破壊されてしまう前に、世界中の自然が作り出す神秘の場所に訪れること」。旅やアウトドアの魅力を発信するとともに、環境保護活動も行なう。トラベルライターであり着付師。
旅や自然が好きな人、旅に行きたい人、ぜひ情報交換しましょう!
Instagram:@suzu_6996

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