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カヌーイスト“義男さん”が、バックパックと日本を愛する理由
2015.11.05 Thu
ドイターのプロダクションマネージャー、義男さんが来日した。
プロダクションマネージャーとは、開発責任者のこと。その仕事を義男さんこと、トーマス・”義男”・ヒルガーさんが担当している。
義男さんはドイツ人の父と、日本人の母のもとドイツのアウグスブルクで生まれ育ったハーフ。20〜30歳代にかけてはドイツのカヌー選手として活動し、ナショナルチームにも所属したことがあるほどの実力の持ち主。日本から訪れたカヌー選手との触れ合いも多く、友人もたくさんいる。かつては、奥多摩の御岳でもカヌーをともに楽しんだことがあるそうだ。
義男さんは、いまでは登山にクライミング、ツアースキー、MTBツーリングなど、数々のスポーツを愛する46歳。ドイター入社後は、グラフィックデザイナーを経て、プロダクトデザイナーとして長年勤務し、現在はプロダクトマネージャーとしてドイターの製品開発とプロダクトデザインを統括している。
そんな義男さんは、ドイターのものづくりは「基本に忠実であること、そしてユーザーが本当に快適だと感じるものをつくることにある」と話す。それは、ときに見えない部分に使用するパーツであったり、細かな縫い工程であったりするもので、実際にトレッキング時の荷物を入れて背負ってみなければわからないものばかり。
そして、ドイターのものづくりの姿勢をユーザーに伝えるための仕組みとして考案されたのが、「フィットステーション」である。来年の春から日本でもいくつかの販売店でウェイトサックを置き、実際のトレッキングやハイキングでの荷物の重さをシミュレーションすることができるようになる。
ドイターは背面メッシュパネル採用の通気性の高いシステムで特許を取ったことで知られているが、じつは耐久性を向上させるための仕組みや、ユーザーの利便性を高める多くの細かな仕様を考案し、つくり上げてきた。
たとえば、チェストストラップに伸縮性のあるストラップを使って、ユーザーの呼吸を楽にするものや、パック上部の引き紐(ドローコード)の出口に補強を行なったこと、ヒップフィンがより腰にフィットするための工夫などである。もちろん、義男さんもこれらの開発には深く関っており、キメの細かな「日本人らしい」気づかいをドイターのパックにもたらしてきた。
義男さんは今回、日本の販売代理店のイワタニ・プリムスの招きによって、日本側のスタッフとの製品情報の伝達、日本マーケットの視察を行うために来日。カヌーの思い出が深い奥多摩を訪ね、スタッフたちと日本のハイキングを楽しんだ。
季節は秋に向かうまっただなか。いたるところで日本の山の美しさをカメラに収めていた。ドイツの山は針葉樹や岩が多く、植生豊かな森を歩くことがあまりないという。ハイキング中に多くのハイカーとすれ違い、「こんにちはー」と声を掛ける義男さんは、すっかり日本に溶け込んでいた。お母さんから教わったというていねいな日本語と、そのやさしい口調が周囲を和ませる。
これからもますます、ドイツらしく“基本に忠実”で、日本らしく“かゆいところに手が届く”ような気づかいがあるバックパックをつくってくれることだろう。
(text by takuya kamo)