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北極男、北極点への今期チャレンジ中止を決定。新たな挑戦へ!
2016.01.25 Mon
北極冒険家の荻田泰永さんは、2016年における北極点無補給単独歩行へのチャレンジを中止した。その代わりに新たな「北極圏1000キロ単独行」を実行すると発表し、自身にとって未踏の北極圏を冒険する。荻田さんは、2002年から北極圏での単独行に挑戦し、2012年と2014年には無補給単独歩行による北極点到達をめざしたが、いずれも途中でリタイアしている。中止する最大の理由は、遠征費の高騰。総予算は前回比で、およそ1.5倍の約3,500万円にふくれあがってしまったという。高騰の主な原因は、現地での飛行機のチャーター代だ。
今回のチャレンジ中止の背景の前に、北極とはどんなところかを説明しておきたい。北極は南極と違って陸はなく、氷の塊だ。水深約3,000メートルの海表面が数メートル凍っている状態を想像してみて欲しい。薄く凍った氷(厚いところでも約10メートルという)を、わたしたちは北極と呼んでいるのだ。海氷、つまり北極は、海流や風といった気象状況の影響を受けて、海上を絶えず動いている。そして、北極は夏に向けて徐々に融解していく。徒歩で北極点をめざせる時期は一年のうち3月から5月のわずか2ヶ月ほどしかないという。
荻田さんの冒険スタイルは、単独無補給徒歩。どこからも補給を受けず、装備の一切をソリに載せ、たったひとりで徒歩にて北極点をめざすというもの。海氷がしっかり凍り付く2ヶ月間のチャンスを目一杯使っての挑戦だ。本人の体力気力はもちろんだが、天候や海氷の状態などの外的要因にとても左右されるチャレンジでもある。さらに北極点に到達できたとしても、帰路のときはすでに氷が溶け始めており、徒歩で戻ることは不可能。北極点でピックアップする飛行機が必要になるというわけだ。
2014年までは、カナダ側からの挑戦だった。地理的環境も優れている点からも、各国の冒険家たちも皆、カナダ側から挑戦している。カナダ北極圏レゾリュートを拠点にディスカバリー岬までチャーター機で移動し、そこからスタートしていた。カナダで唯一、冒険者を乗せていた航空会社がすべてのチャーター便を廃止したことで、北極点への道はロシア側からのみとなってしまったのだ。ロシアからの新たなルートには、計画全行程の見直しや現地での関係作りをイチから構築する必要がある。これまで調整を重ねてきたが、飛行機のチャーター代の折り合いがつかず、苦渋の決断となった。今期のチャレンジは中止となったものの、荻田さんは北極点到達をあきらめてはいない。
荻田さんはこの16年間、ただひたすら北極圏に通い続けてきた北極ひとすじの北極男だ。これまでの北極圏総移動距離は5,000キロに達する(ちなみに本州の長さは約3,000キロ)。そんな北極を知り尽くした北極男も未踏の区間があることに気付く。その未踏区間が今回の挑戦するグリスフィヨルド(カナダ最北の村)からシオラパルク(世界最北の村)までの約1,000キロだ。ここを1ヶ月半かけて単独行する。ホッキョクグマやジャコウウシなどの大型哺乳類も生息している地帯で危険も多いというが、最果ての村に暮らす人々の暮らしぶりというものも興味深い。来月に出発を控え、気持ちも新たに荻田さんは準備を進めている。「グリスフィヨルド〜シオラパルク1000km単独行」は、2月25日(予定)に日本を出発し、現地でトレーニングを重ねて3月14日(予定)にスタート予定だ。北極男の今後に乞うご期待。
【関連ホームページ】
一般社団法人N.A.P.(荻田泰永北極点事務局) http://northpoleadventure.jimdo.com/