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創業は1981年。たった30年少々で世界的ブランドに成長したMERRELLの歩み
2016.03.31 Thu
思わず出かけたくなる、時には走り出したくなる。それとも遠くまで行きたくなる? MERRELLの製品に漂う空気感は、創業当時から変わりません。いつの時代も多くの人の心を沸き立たせ、旅心に火をつけ、未知のトレイルを歩むことを後押ししてきました。どうしてそんな製品が生まれてくるのか? それを知るには、MERRELL誕生の物語をお話するのが分かりやすいかもしれません。
■はじまりは職人気質
MERRELLは1981年に設立されました。もともとカウボーイブーツをカスタムメイドで作っていたランディ・メレルが、腕試しとしてハンドメイドハイキングブーツを作ったことがきっかけです。高い技術、丁寧な仕上げ、顧客の要望に添った細かな作り込みなどから、ランディのブーツは「過去最高品質のハイキングブーツ」として支持され、当時アウトドア好きの間でもっとも人気を得ていた雑誌「バックパッカーマガジン」では「北米でもっと機能的で快適な靴」に選ばれたほどです。
このブーツに興味を持ったのが、ジョン・シュバイツァーとクラーク・マティスでした。ジョンはスキー会社勤務、クラークはクロスカントリーの元オリンピック選手。スキーを通じて知り合った二人は、夏山を安心して登れる理想のハイキングブーツを捜していたのです。そんな時、ランディと出会い、彼の作るブーツこそ自分たちの求めていたものだ!という確信を得たのです。一方のランディも、自分の製品を徹底的に理解してくれる二人に出会えたことで大きな勇気を得ることになります。こうして製造はランディが、マーケティングはクラークが、経営はジョンが担当。それぞれが得意分野で力を発揮する形を取り、メレル・ブーツ・カンパニーを誕生させたのです。
MERRELLは最初から理想を追求する人たちが、高い技術で夢を叶えるという熱意の中で生まれました。しかも創業からはまだ30年と少々。若さと情熱、柔軟な発想が推進力となり、数々の革新的な製品を驚くほど短い時間の中で生みだしてきたのです。
カウボーイブーツ
ランディー・メレルが手作業で仕上げていたカウボーイブーツ。顧客一人一人に合わせて仕上げるカスタムメイドのスペシャルモデルでしたが、自分の技術を試すためにランディは多くの人がユーザーとなるハイキングブーツにトライします。言わばMERRELLは、自己への挑戦から始まったのです
クラーク・マティス
クロスカントリーでオリンピック出場経験もあったクラークは、夏山も愛する生粋の山男でした。その彼が求めていたのが、安心して山を歩ける信頼性の高いハイキングブーツ。オリンピックに出場するなど、アスリートとしての高みを経験したクラークだからこそ、ハイキングブーツにも妥協を許すことができなかったのかもしれません
■より軽く、より速く
もちろん初期のMERRELLはランディの作るレザー製の『オリジナルレザーハイキングブーツ』が主流でした。しかし、MERRELLは次の時代の流れを感じ取っていました。なぜなら、ランディやクラーク、ジョンを始めとしたMERRELLのスタッフは皆、熱狂的なアウトドアファンであり、フィールドでどんなことが起こっているか、アウトドアで遊ぶ人たちが次に何を求めているかを敏感に感じ取っていたからです。
求められているのはスピードだ。そのためには軽く、快適なことが必要になる。そう判断したランディたちは新たなハイキングシューズの開発に着手します。ほどなく、ランニングシューズの快適さと、バックカントリーで力不足を感じさせないパワフルさを融合させたモデルを生みだしました。それが1985年の『イーグルブーツ』です。
この頃からMERRELLは、軽さと丈夫さを上手くバランスさせることをテーマにしていました。後に『イーグルブーツ』はベストセラーへと成長。MERRELLスタッフがフィールドで感じていたことが間違っていなかったことが証明されました。
オリジナルハイキングブーツ(1983)
MERRELLの特徴は、このオリジナルハイキングブーツの頃にはすでに確立されていました。しっかりとしたレザーにビブラムソールを使い、タフでありながらしなやかに足を包み込む。その心地よい履き心地は、まるで荒野のソファーのようだと評されました
イーグルブーツ(1985)
トレイルを速く歩ける。そして、頑丈である。一見、相反する特性を融合させたイーグルブーツは、MERRELL初のマルチスポーツテクノロジーを実現したモデルとなりました
XCD ベルクロ(1985)
1985年に発表されたこのブーツは締め具の代わりにベルクロを使用しました。特徴的なブルーのベルクロのイメージは、後に「ウィルダネス」へと継承されていきます
スキー&ホッケーブーツ(1986)
創始者のうちジョン・シュバイツァーとクラーク・マティスはスキーヤーでした。考えてみれば彼らがランディの技術を借りてスキーブーツを作ったことは不思議ではありません。これらのブーツはかかと部分にエアークッションミッドソールを採用し、競技者のパフォーマンスアップに貢献しました
■フットウェアを進化させる
1993年に発表された『フロントレンジ』は、MERRELL初のクロストレーナーシューズです。MERRELLは1981年にはフルレザーのブーツを作っていました。しかし高性能な素材を採用することで、より軽いフットワークとヘビーな状況にも対応できる頑強さを身につけることができました。それはもっと遠くへ歩けるスピードに繋がります。さらに、タフでありながら走れるほど軽いという、今まで相反するとされてきた二つの性能を高次元でバランスさせることに成功したのです。そんな不可能を可能にする前衛的な技術の集結によって、このシューズは誕生しました。そしてこのことが、以降のMERRELLの個性を大きく特徴付けることになったのです。
やがて1996年にはハイキングブーツの『メレルミレニアム(通称 M2)』と、テクニカルアプローチシューズの『フォーティーファイブディグリーズ』を発表します。こうしてアウトドアシューズのさまざまなジャンルの中で、キャラクターや特徴をハッキリ打ち出した明快な製品が次々と生みだされていくことになるのです。
フラッシュダンス(1988)
窮屈なシューズに足を押し込むのではなく、心地よい装着感とグリップ力を両立させる。その快適さから、岩を登る姿が踊っているかのように楽しそうだ。ロッククライミングの世界に旋風を巻き起こしたモデルは、こうして名付けられました
フロントレンジ(1993)
より軽いクロストレーニングシューズを求めて、ナイロンと軽量レザーをアッパーに使用。ランニングにもハイキングにも使えるマルチスポーツモデルは、MERRELLの次のステージを指し示すものとなりました
ミレニアムシリーズ(1996)
より速く、より軽く、より快適に。現在のモアブなどに続く軽量ハイキングシューズの先駆けとなったのが、このミレニアムシリーズです
45°(1996)
あらゆるアウトドアシーンに対応するテクニカルアプローチシューズとして開発されました。使用目的を明快にすることが、製品の位置づけを際立たせる。あれもこれも、と欲張らないこともMERRELLの職人気質故なのです
■新しいギアの創造
1998年こそMERRELLのランドマークになる年でしょう。くたくたになるまで遊んだハードな日の夜、リラックスできるシューズに足を入れられたらどんなに幸せだろう。MERRELLではこの点に注目しました。リラックスしたいなら、徹底的にリラックスできることにこだわってみたらどうだろう? こうして成形されたナイロンアーチシャンクやEVAフットフレーム、メレルエアークッションやスティッキーラバーソールなど、MERRELLが誇る高い技術がリラックスシューズに注ぎ込まれたのです。それらのテクニカルな要素を、カジュアルなスリップオンスタイルでラッピング。こうして高性能シューズで得た快適性を、完璧なフィット感と優しい履き心地にフィードバックすることで『ジャングルモック』が生まれました。
家の中では靴を履かない日本では、アフタースポーツ用のシューズは求められないだろうと思われていました。けれど『ジャングルモック』の履き心地は、気持ちを解放できるキャンプやフェスのムードとよくマッチしたようです。今では『ジャングルモック』は、アウトドアライフシューズとも言える新たなジャンルを創造しつつあるのです。
ジャングルモック(1998)
使用目的をより突き詰めて、持てる技術をすべてつぎ込む。ランディが最初にハイキングシューズを作ったときと同じです。MERRELLのスタッフは快適さを極限まで追い求め、その結果として「ジャングルモック」という製品が生まれたのです。これを作ろうとしたのではありません。こんなものが欲しいと望み、想い描き、形にしてみたら「ジャングルモック」だったのです。2000年にはその快適さを、こんなヴィジュアルでアピールしました
ウィルダネス
MERRELL創業の頃の空気をそのままに伝えるオーセンティックなデザインと、実用性を頑なに貫いた頑強な作り。そして、ていねいな作業から生みだされる極上の履き心地。ランディ・メレルの作風を現代に引き継いだ逸品です
以降、2000年には快適さを追求したハイクシューズとして「カメレオン」がデビュー。軽く、しなやかで、ソファーのような贅沢なフィット感。快適な履き心地はハイキングの楽しさを何倍にもしてくれると、今も世界中で多くの人に愛されています。さらに2013年にはクロストレイルシューズ『オールアウト』を、2015年にはスピードハイキングシューズ『カプラ』をリリース。新しい分野にチャレンジし、よりレベルの高いものを実現しようとする姿勢は創業以来、まったく変わっていません。同時に、オーセンティックな価値観をも重んじていることは初期のMERRELLのムードを漂わせる「ウィルダネス」をラインナップさせていることからも伺えるでしょう。
常に未知の領域を求め、同時に歩んできた道を慈しむ。MERRELLの箱を開けた時にたちのぼってくるアドベンチャーの香り。思わずどこかに出かけたくなるあの衝動はアウトドアを思い切り楽しむ好奇心と、細部にまでこだわる職人気質、それを追い続ける熱意のから生まれたものでした。そしてどんな時でも妥協を許さず、理想を追い続ける。その姿勢こそ、我々の心を沸き立たせ、じっとしていられない衝動を呼び起こすMERRELLの個性そのものなのです。
■MERRELL