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参加者しか入れないパウダーエリア?! スノーパーク尾瀬戸倉のGPGツアー
2017.02.08 Wed
渡辺信吾 アウトドア系野良ライター
GPGというサービスがある。ゲレンデ・パウダー・ガイド(Gelände Powder Guide)の頭文字といえばお分かりいただけるだろう。ゲレンデ内のパウダーエリアをガイドするというサービスだ。
先日、スノーパーク尾瀬戸倉のGPGツアーに参加してきたのでレポートしたいと思う。
その前に、ちょっと前置き。大事なことなのでちゃんとお伝えしたい。
言わずもがなだが、スノーボーダー、スキーヤーにとってパウダースノー(広い意味で粉雪、新雪、深雪など)は垂涎のシチュエーションだ。日本のパウダースノーは世界的にも評価が高く、「JAPANESE POWDER ≒ JAPOW(ジャパウ)」を求めて海外からも多くのスノーボーダー、スキーヤーが来日しているのは周知のことかと思う。実際、「#japaw」の投稿は、インスタグラムだけでも98,000件を超える(2017年2月8日現在)。
スノーリゾート側もそんな需要の高まりに対応するべく、非圧雪コースを拡大したり、自己責任エリア(滑走スキルと装備に自ら責任を持つ人のみ滑走可能なエリア)を設定したり、バックカントリーへのアプローチを容易にする代わりに登山届の提出の義務付け、ビーコンゲートの設置などなど、パウダーという観光資源を活かす努力がなされている。
しかし、当然ながらパウダーを求める人たちはそのようなスキー場に殺到し、降雪後の朝一番はパウダー渋滞必至。競争率が高いところでは朝の9時にはもうギタギタでノートラック皆無なんて状況も多々あるのだ。
GPGをいち早く始めたスノーパーク尾瀬戸倉は、逆に自己責任エリアを一切設けていない。コース外への立ち入りを厳しく管理する代わりに、ツアー参加者だけが滑走を許可されるというこのサービスを、片品エリアでガイドサービスやスノーサーフスクールを行う「HIGH FIVE Mountain Works(ハイファイブ・マウンテンワークス)」とタッグを組んで数年前からスタートさせた。
これによって、ゲレンデからリフトアクセス可能なサイドカントリーの非圧雪林間エリアが、荒らされることなくツアー参加者のために確保されるというわけだ。もちろんコンディションは、時期や気候によって変わるが、谷川連峰を越えたドライパウダーが降り積もるこのエリアは、知る人ぞ知るパウダー天国なのだ。
前置きはこれくらいにして、ツアーの様子をレポートしよう。
ツアーの定員は10名前後。もちろん事前の予約が必要だ。9:30までにツアーの事務所がある「OSSA(尾瀬スノースポーツアカデミー)」にチェックイン。
GPGの受付は、リフト券売り場の隣、OSSAの建物にある。GENTEM STICKのテストセンターとしても機能している
書類に必要事項を記入し、料金を支払う。ツアーの料金は平日で9,720円、土日が10,800円(リフト券代別)。ビーコン、ショベル、プローブのレンタルも可能だ。また、ここはGENTEM STICK(ゲンテン・スティック)のテストセンターでもあり、GPG参加者はなんと+1,500円でGENTEMの板をレンタルできるのも魅力だ(通常は2,500円)。
ツアー参加者の目印となるのがこのパタゴニアのバックパックだ。こちらにショベルとプローブを入れ、ビーコンは身体に装着
この日のガイドは、メインガイドが片柳圭介氏、サブガイドが立嶋亮氏。競技から山岳まで経験豊富なガイドだ。
準備ができたらゲレンデに出て、ビーコンの発信チェックを行う。同時にビーコンを使用したことのない方には、使用方法もレクチャーしてくれる。行程などのブリーフィングを終えたら出発。リフトに乗ってGPGエリアへと向かう。
サイドカントリーとはいえ、雪崩のリスクがないわけではない。ビーコンの発信チェックと、未経験者には簡単なレクチャーも行う
GPGの対象となるルートは十数本あり、その日のコンディションによってルートを選択するので、GPGのツアーが連日入っていても、トラックの入ったルートを避けることもできるらしい。
この日は穏やかな晴天に恵まれた。前日までが強い冬型の気圧配置で、積雪だけでなく北西の風も強かったらしい。風の当たる尾根やノール部分はカリカリだが、吹き溜まりとなる沢には軽くて柔らかい雪がたっぷり。底当たりもないようだ。メインガイドの片柳氏が先頭で滑り、無線でテールガイドの立嶋氏に状況を伝える。我々は、その状況を聞きながら、進むべきラインを選んで次々にドロップインする。吹き溜まりの軽い腰パウに刻まれるトラック。舞い上がる雪煙。ゲレンデの喧騒から少し離れただけの静かな森の中に、控えめなイエーイの声が響く。
参加者の皆さんの滑り。スプレーから舞い上がる雪煙からも雪の軽さが伝わってくる
午前の部の最後に向かった斜面は、南斜面のオープンバーン。やや気温が高かったことと、日射で雪面が溶け始めていたようで、”妖怪板ツカミ”が現れるストッピングスノー。こういった雪質でのボードコントロールも、春先のバックカントリーに入る上で大きな経験となる。
気温が低ければ最高のオープンバーンだが、日射の影響であいにくのストッピングスノー。しかしこれも良い経験。バスルートと呼ばれるこのルートは、路線バスに乗ってスキー場に戻ってくる
ルートを都度変えながら、午前、午後でトータル6本。ノーハイクでノートラックを6本。しかもわずか12人だけで滑るのである。楽しくないわけがない。参加者の満面の笑みがそれを物語っていた。
サブガイドの立嶋氏。テールガイドとして殿(しんがり)を務め、颯爽とした滑りを我々に見せつけてくれた
メインガイドの片柳氏。GENTEM STICKを操りスノーサーフな滑り。自然と微笑みが漏れる
GPGの主旨は、単にサイドカントリーのパウダーを案内することが目的ではなく、バックカントリー滑走技術の習得が本来の目的である。深雪の中での滑走技術やルートの見つけ方はもちろん、地形や雪面の変化、深雪の中でのバインディング装着、トラバースなどなど、すべてが経験値となる。HIGH FIVEは、レベルに応じたバックカントリーツアーサービスも提供している。GPGで経験を積んだら、次のステップとしてバックカントリーツアーの参加を相談してみるのもいいだろう。
パウダー激戦エリアで競争するよりも、遥かに濃密な1日を過ごせるGPGツアー。バックカントリーでのスキルアップをめざす方は、ぜひ一度体験してみてほしい。
■お問い合わせ
HIGH FIVE Mountain Works
(文・写真=渡辺信吾)