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【読みもの】Icebreakerのメリノウールが夏に優れる理由を、9つに分けてわかりやすく説明します
2017.06.16 Fri
林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者
登山やバックカントリーなど、低温下で負荷の高いアクティビティを楽しむ人たちに愛用されてきたメリノウール。今回は、このメリノウールが夏場の肌着としても使い勝手に優れている、というお話です。え? 夏にウールって暑くない? そう思う人も多いでしょう。だけど、メリノの特性を知り尽くしたIcebreakerなら、意外なほどに快適なんです。順を追って説明しますね。
そもそもメリノとは?
1. 極細繊維を生み出す羊たち
「メリノ」とは羊の品種の名前です。その羊毛は一般的な羊と比較して半分の細さしかありません。数字でいうと17〜19マイクロメートル。想像もつかない細さですね。この極細の毛こそがメリノウールを高機能ウールに押し上げているのです。
- メリノ羊は、その背中の羊毛が極細であることから、最高品質のウールを供給するとして大切にされてきました
- 直接見ることはできませんが、メリノウールがいかに細い繊維でできているか、というイメージだけは伝わると思います。綿あめよりも柔らかく、はかない見た目ですが、繊維自体はとても丈夫。羊毛をピンと引っ張って弾くと、楽器の弦のように振動するほどです
2. 厳しい大自然が生み出す品質
メリノ羊は主にニュージーランドで育てられています。人よりも羊のほうが多いと言われるニュージーランドですが、羊牧場の多くは南島に集まっています。中でも南アルプスと呼ばれる、標高2000メートルの高地帯こそメリノ羊たちのパラダイス。夏は強い日差しが降り注ぎ冬は厳しい寒さに見舞われる、人間にとっては少々暮らしにくい土地ですが、メリノ羊たちはこの環境に見事に適応しています。その鍵となるのが彼ら自身の毛、つまりメリノ羊毛なのです。
夏の気温は35度を超え、冬はマイナス20度にもなる。裸の人間にとっては過酷な環境ですが、しっかりした羊毛に包まれていれば、夏はカラッと乾いて爽やかで、冬もじゅうぶんに温かい快適な場所なのかもしれません。その自然環境ゆえに生存を競う相手の少ないこの環境に、羊たちは羊毛で適応していったというわけです
3. 自然と調和する牧場の存在
ニュージーランド南アルプス地域は広大で、スイス一国よりも広い面積を誇っています。ここでは300万頭を超える羊たちが飼育されており、ステーションと呼ばれる数百数千の羊牧場が点在しています。そのうち約140の優れた牧場がIcebreakerと最長3年の長期契約を結んでいます。どうして3年もの長期契約が必要なのでしょうか? 答えはメリノウールの生産には羊のことをきちんと理解する生産者の存在と、彼らの考えを反映できるじゅうぶんな時間が不可欠だからなのです。
ある牧場の広さは300万エーカーと言います。これをメートル法に直すと約12000㎢にあたり、ほぼ新潟県と同じ面積にあたります。牧場運営とは、これだけの規模の環境を管理する責任が伴う仕事なのです。だからこそ自然に対して謙虚に向き合い、羊たちの置かれている状況を正しく理解しようとする姿勢が求められます
メリノウールはこうして作られる
4. 羊毛は12ヶ月かけて育てられる
羊の毛の刈り取りは1年に1回、毎年春におこないます。翌春までの間、羊たちには健康に暮らし、良質な羊毛を伸ばしてもらわなければなりません。なにしろ、1年をかけて伸びていく羊毛には、羊の身に起こったすべてが影響するのですから。メリノウールの繊維一本一本は、その豊かな飼育状況を物語る成長記録とも言えるのです。
刈り取られた羊毛はいったいどうやって生地になり、製品に変わっていくのでしょうか。その様子をわかりやすくまとめました。それは服を作るというよりも、羊から分けてもらった素晴らしいものを、人間が使えるように整えているような作業です
5. 羊たちの健康こそが品質の要
良質なメリノウールを作っているのは羊たちです。その羊たちが自由に走り回り、安全で健康的な環境の中に暮らすこと。それを叶えるため、メリノ羊牧場では羊たちの餌やその栄養管理、牧場とその周囲の自然環境、人間と羊の触れ合い方など全てを考え合せ、最適のバランスを探り、実現していきます。こうした前向きな努力を重ねる牧場こそが、メリノウールの製品を作り上げる源流です。もしも羊たちの飼育環境がバランスを欠くものになってしまったら、Icebreakerの求めるメリノウールはでき上がってこないでしょう。
羊の健康状態こそが、ウール製品の質を決めるポイント。メリノ羊たちはそう考える牧場主たちによって世話されています
6. 継続のための選択
サスティナビリティは近年、企業の経営理念として語られることが多くなったキーワードです。持続性、継続性などと訳されますが、その哲学は企業が何を一番大事にするかという優先順位に現れます。Icebreakerでは原料の選択、つまりいかに良質なメリノ羊毛を生産するか、言い換えれば一年を通じてメリノ羊をどれだけ健康的に育てるかに重きを置いています。そして、取れたメリノ羊毛を製品に仕上げるまでの過程が、社会的倫理観に沿った正しいものであることを心がけています。
健康な羊と正しい生産プロセス。これを大事にしているからこそ、Icebreakerはメリノ羊の牧場と、未来を見据えたパートナーシップを結んでいるというわけです。
単に暑さや寒さを和らげる衣類を作るというだけでなく、これは環境や人の生き方に関わることにつながる。Icebreakerはそう考えて、ものづくりに携わっています
夏にウールが優れる理由
7. 細い。だから柔らかい
さて、こうして取れたメリノウールは極細繊維で構成されています。メリノウールの優位性はこの「細さ」に尽きます。細いからこそ繊維は柔らかく曲がり、肌に触れてもチクチクしません。メリノウールならではの絹のような柔らかな肌触りや、体に無理なくフィットするしなやかな着心地は、すべてこの「細さ」から生み出されたものなのです。
極細繊維が生み出す、うっとりするような肌触り。着ていることを忘れるような軽さ。これらはみな、メリノウールならではの特徴です
8. 細い。だから涼しい
そしてこの極細繊維こそが、夏でもメリノウールが快適な理由になります。細い繊維は強い毛管現象によって汗を素早く吸い上げ、短時間に気化させます。このことによって肌はドライに保たれ、気化熱は肌の温度を下げてくれます。
またメリノウールは繊維が細いため、その生地中に細かな空気の部屋をたくさん抱え込んでいます。この空気の部屋が断熱層となって、真夏の熱気を遮断することにつながります。それでいながら、この空気の部屋は風や体の動きによってスムースに換気され、高い通気性を発揮します。
繊維が細い。そのことが、ドライ・温度低下・断熱・通気性といった効果を向上させているのです。
疑問に答えましょう。冬に暖かいウールが、夏には涼しいなんて矛盾じゃないのか。答えはNOです。Icebreakerでは製品によって、冬向きの製品は保温性を上げるように、夏向きの製品は通気性と毛管現象を向上させるように工夫しています。夏に適した製品は繊維の織り方や糸の太さ、生地の構造を工夫することで毛管現象を促し、気化熱による冷却効果を重視し、身体の発熱量に応じて空気の層をどう作っていくかというダイナミックな視点も取り入れています。Icebreakerのアウトドアウェアでは、写真のようにパネルよって異なる生地を使い分けるという手法も取り入れます。体の部位に合わせて、メリノウールの特性を最大限に発揮できる生地を使い分け、製品化していく。その技術の蓄積も、メリノウールの素晴らしさに共感したIcebreakerの情熱の結果です
9. ウールだから匂わない
もう一つ。メリノウールの匂いにくさも夏に優れる理由です。あの湿った嫌な匂いはバクテリアによるもの。木綿や化学繊維では繊維に汗と脂肪が絡みついて、バクテリアの温床になってしまいます。しかしメリノウールは雑菌が繁殖しにくいので匂いにくく、梅雨や汗の多い時期での不快さを低減させるのです。
何日間も着ていてもイヤな匂いがしにくい。メリノウールは長期の縦走や朝晩の寒暖差が激しい土地でのアウトドアのほか、長時間の野外作業にも愛用されています。常に清潔感のあるメリノウールは、汗で汚れやすい夏にこそ最適の素材と言えます
結論
平たく言えば健康なメリノ羊の極細毛からできたメリノウールは、季節に関わらず快適な衣服内環境を整えてくれる、というわけ。この素材が夏も冬も心地よく過ごさせてくれるということは、厳しい自然に適応してきた羊たちを見ればわかります。
自然は最高の素材を与えてくれる。Icebreakerはそう信じて、メリノウールの製品を作り続けています。
こうした一連のストーリーを、Icebreakerの創業者であるジェレミー・ムーン(Jeremy Moon)さんが語っています。Icebreakerの立ち上げのきっかけが、たった一枚のTシャツだったなど、驚きのエピソードが盛りだくさんです。こちらもぜひ!
●Icebreaker "NATURE IS BETTER THAN PLASTIC"
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