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10月に甚大な台風被害を受けた海辺のキャンプ場。南房総・白浜フラワーパークの復興への挑戦。
2017.12.03 Sun
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
南房総にある白浜フラワーパーク。ジャングルを模した温室などがある、半世紀以上の歴史を誇る観光植物園だ。ここ数年では「あわのネ」や「ZIPANG」、今年は開催されなかったけれど「GREENROOM CAMP」の会場として、その名前を頭にインプットしていた人も少なくないだろう。白浜フラワーパークにキャンプというアイデアを提案し、海辺の草地を自ら開墾して、キャンプ場としてもスタートさせたのが米原草太さんだ。
館山で育った米原さんは、地元で何かおもしろいことをしたいとフェス「あわのネ」を立ち上げた。何年か開催を続けていくなかで、その会場として出会ったのが白浜フラワーパークだったという。
「2014年に『あわのネ』をここで開催したんですね。プールがあって、バーベキューエリアがあって。冬には花を見せる。ただ夜はまったく活用していなかったんです。だからもっといないなって思っていて。外部スタッフとして、キャンプ場をやらせてくれないかっていう話からスタートしたんです。一区画だけのゴージャスなキャンプ場にしたくて、海沿いのサイトをほとんどひとりで開墾して。いつしかスタッフとして働かせてもらいながら、プライベートサイトだけではなく、エリアを増やしていったんです」
白浜フラワーパークは、キャンプ場としても2015年にオープン。10張り程度可能でありながらも1日一組限定というプライベートサイトや、プールがある海辺のキャンプ場という特徴を持ったキャンプ場として人気を集めていった。今年の夏シーズン中には、のべ1万人ものお客さんが来場し、ここでキャンプやバーベキューを楽しんだという。
「いろいろスキルアップさせてもらっているし、いろんな人たちと繋がりながら仕事ができています。田舎にいて、東京の人たちと密に関わりを持てる仕事って、南房総では少ないんですよね。自分にとって、本当にいい職場だと思っています」
2017年にはビーチに近い区画やトイレが新設され、夏はもちろんのこと、オールシーズン楽しめるキャンプ場へ、少しずつ歩を進めていた。そんな矢先に台風21号に襲われてしまった。強風域が半径800キロ以上の超大型台風は、10月23日未明に静岡県の御前崎付近に上陸。神奈川や東京を通過し、朝8時に茨城県の日立沖に抜けた。
「自宅にいて、風はいつもよりちょっと強いかなという程度だったんですね。台風が過ぎて、ここに来て、びっくりを超えて文字通り立ち尽くしてしまいました。プールサイドのあたりは『少しやられたな、直さなきゃいけないな』っていう程度だったんですけど、プライベートサイトは、まったく無くなってしまったと言っていいほどでした。砂ごと波にさらわれていって。仮説トイレやキャンプ場の水場は50メートル以上も流されてしまったし、ジャングル温室の屋根は飛んでしまっています。経営が順風漫歩なわけでもないので、このキャンプ場はもう営業できなくなってしまうかも、という考えも脳裏をよぎりました。近くに住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんも、南房総で台風によってこれほどの被害がもたらされたのは初めてだって言っていました」
プライベートサイトだけではなく、今年オープンしたビーチラウンジも波が押し寄せ、ほとんどが芝生が砂に埋もれてしまっていたという。見慣れていた海辺の風景が変わってしまった。なんとかキャンプ場として復興したいと考えた米原さんは、クラウドファンディングでお金を集めることを決意。およそ一週間後の11月はじめにクラウドファンディングをスタートさせた。
「南房総ではかなりの被害が出ています。けれど、なかなかニュースにはなりませんでしたね。実は来年にナイトマーケットをやりたくて、そのためにクラウドファンディングの準備をしていたんです。観光客にも地元の人にも、夜を満たすイベント。そしたらこんな状況になってしまった。一企業として資金援助のお願いするのは、本当にお恥ずかしいことなんですけど、自分たちの資金では復活できないんです。1年前にキャンプ場としてブログを始めていて、台風被害の記事をポストしたら、多くの方から『クラウドファンディングをやらないのか、支援させてくれないか』という声をいただいきました。その声の後押しもあって、復興に向けてのクラウドファンディングを立ち上げたんです」
目標設定は200万円。1ヶ月後の11月終わりには、その数字は見事にクリアした。
「ボランティアの人も、ずいぶん来てくれました。本当に感謝しています。今はボランティアの人が来てもらってやれる仕事はだいぶ落ち着きました。人の手ではなく重機を入れるという作業時期に入っています。来年になったら、撤去という作業ではなく、例えば芝生をみんなでひこうとか、創作的なことをお手伝いいただければと思っています。ビーチラウンジは再生させたいですね。子どもたちと一緒に新たに作っていって、みんなの思いが詰まったサイトになればいいなと思っています。プライベートサイトは…。最初に作ったところだし、一番人気のサイトだったんですけど。なんとか復活させたいですね。場所は変わってしまうかもしれないけど。人が亡くなっていないということが前向きな気持ちにさせてくれる大きな理由だと思います。確かに大きな被害を受けてしまいましたけど、次の行動にポジティブに転換できています。みんなが応援してくれる復活したキャンプ場。利用してっていう言葉は適切ではないだろうけど、自然災害によって、いろんな人が関わってくれるキャンプ場になれたらいいなと思っています」
2018年5月にはキャンプ場として再スタートしたいという。クラウドファンディングの締め切りは12月17日。目標金額は達成したけれど、決してそれで十分ということはないだろう。人の思いが復興へと繋がっていく。それを白浜フラワーパークでも来年には感じられるかもしれない。
台風前のビートラウンジ・サイト。フェスではオートキャンプエリアとしても使われていた。
台風直後の白浜フラワーパークの空撮写真。ジャングル温室まで波が襲い、その海側にあったプライベートサイトは砂に埋もれてしまった。