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登山ガイド・岩田京子の「私、自転車始めました!」〜東京自転車散歩 編

2020.06.22 Mon

岩田京子 登山ガイド

~ツーリングへのきっかけ~
 ガイド仲間から「都内ツーリングするけど、いっしょにどう?」と突然の誘いがあった。

 少し悩みはしたものの、最近身体も鈍ってきた所だったのでいいチャンスだなと思い、勢いで「参加します」と返答してしまった。しかし、返答してから大変な事に気が付く。「あっ、私、自転車を持っていない……」

 勢いで返答してしまったが、われに返り焦っていた。誘ってくれた仲間に相談してみたところ、MTBやクロスバイクのレンタルができる店舗や、街中で電動アシスト自転車をレンタルできるアプリなど、いくつかを紹介してくれた。

 店舗でのレンタルは店がOPENしてからの手続きとなるので、集合時間に間に合わない。なので今回は、電動アシスト自転車のレンタル登録を利用しての参加となった。
 若いころ、MTB競技等のコース整備のバイトをしていたことがあり、自転車を見る機会は多かったものの、自身では自転車に乗ることはなかった。自分の記憶の中をたどっていくと、たしか高校生のときに通学で使っていたなぁ~という程度だ。いったい何年振りになるのだろう……。20年以上は自転車に触れていない自分が、はたしてちゃんと乗れるのだろうかという不安を抱きながらも、ワクワクしている自分がいた。この歳で新しいことにチャレンジするのは久しぶりだった。

~当日を迎える~
 ツアーの集合場所近くのレンタルステーションを調べると、いくつかのレンタル自転車があった。自宅の最寄駅から電車に乗り、徒歩でサイクルステーションまで移動し、自転車を無事にレンタル。そこから集合場所までは練習走行。案の定、久しぶりの自転車ということで身体も強張り、慣れるまでフラフラしていた。

 段々と慣れてきて、集合場所に着くまでには少し余裕もできた。無事についた安堵感と久しぶりの新しいチャレンジにワクワク感がにじみ出る。周りから見たら怪しい人だろうなぁ、私。

 10時、代々木駅に全員が集合。今回のツーリングは6名。集合場所で、自己紹介を簡単に済ませて、注意事項やルール等の説明を受けてから出発。

 この日のスケジュールは、原宿、代々木公園、渋谷、原宿、青山、外苑、というルートを走る予定。私以外はみんな、MTBやクロスバイク、ロードバイク等、ちゃんとした自転車だった。ついて行けるかなぁ……。しかし、そんな不安は走っているうちに消えるほど気持ちよく走行できた。
 まずは、都内最古の木造駅舎だった原宿駅を見学。耐火基準が満たされていないという理由で解体され、3月21日より新駅舎となった原宿駅がすぐ横に建てられていた。その後、代々木公園の脇を通り渋谷方面へ向かう。
 現在、渋谷といえばスクランブル交差点や道玄坂等が有名だけど、その昔賑わいを見せていたのは、この百軒店(ひゃっけんだな)通りだったそう。大正12年の関東大震災の後、コクドの前身である箱根土地は、購入した中川伯爵邸を分譲し、現在でいうところの百貨店を都市空間に再現しようとして計画したのが百軒店。復興のために被災した下町の有名店を誘致してつくられ、やがて聚楽座という劇場等も建てられ、近代的な商業空間として繁盛した。その様子は、当時宇田川町に住んでいた竹久夢二が「百軒店で軒別に見歩くのはおっくうになった」と言わしめる程だったそうです(現地にあった看板より内容を拝借しました)。
その近く、円山町のあたりは明治時代ころから芸者屋や料亭がたくさんあったそう。その後、芸子置屋、待合茶屋という感じに時代とともに変化を遂げ、いまではホテルが立ち並ぶ場所となっています。その昔活躍した舞妓さんや芸子さんたちの衣装、着物やぼっくり下駄や草履をはいた女性でも、歩きやすいようにつくられた段差の浅い階段がいまも残っている。

 その後、少し走り、京王電鉄・井の頭線の神泉駅に到着。この周辺にはフォンテーヌという名のついた店が多かった。なぜだろう……と不思議に思いながら走行していると、ガイド仲間がフランス語だということを教えてくれた。“泉”“噴水”という意味らしい。神泉だけにね。
 さらに、走り続けると、街の雰囲気が変わってきた。大きな施設や明治神宮外苑が見えて来たかと思ったら、映画やドラマの撮影などでもよく使われる「神宮外苑のイチョウ並木」を走っていた。ここは、青山通りから明治神宮外苑まで続く並木道で、146本のイチョウが植えられている。その場所をよく知らなかった私は「なんだか同じ樹木がキレイに並んでいるなぁ~」と景色を楽しみながらに走っていた。ふとこの樹は何という名前だろうと記憶をもとに思いだしていた際、樹木に葉っぱが生えているイメージを思い浮かべてみると、自分が思い出した映像と合致した。「イチョウだ!」帰ってから調べてみると11月~12月が見ごろで「神宮外苑いちょう祭り」というのも毎年開催されている。今後は秋にゆっくり見に来たいものです。
 裏原宿のキャットストリートを走行している最中、ある場所で停まる。そこには穏田橋(おんでんばし)という欄干のモニュメントがあった。
 この場所は昔、隠田川が流れていて、水車小屋があったそう。調べてみるとこの水車は、葛飾北斎の富嶽三十六景「隠田の水車」でも描かれている。渋谷駅付近で宇田川と合流し、合流地点より下流は渋谷川と呼ばれる、隠田川。現在の道路でも緩やかなカーブが残っていて静かに眺めていると、昔ここには川だったのだろうか……とタイムスリップした気分になってくる。
  青山霊園の桜のトンネルを軽快に走り抜ける。ここの桜はソメイヨシノ、ヤマザクラ、八重桜等が約500本。すばらしい桜並木。この霊園には著名な人の墓もあり、外国人の墓も目立ちます。そんな中でも、私にもわかるものがあった。忠犬ハチ公の飼い主でもあった、上野英三郎さんとハチ公の墓。
 そのあとは、鳩森八幡宮。ここは小さい敷地内にたくさんの見所がギュッと詰まっていた。

 まず、「将棋堂」。将棋の世界では有名な場所で、お堂の中には王将の駒が奉納されている。将棋に関わる人には守護神として崇められているとか。
 次に「富士浅間神社」。御祭神が“木花咲夜邪(このはなさくやひめ)”。木の花(桜の花)が咲くように美しい女性という意味があり「女子力アップ」の神様としても知られているとか。その美しさにあやかろうと女性の参拝者が多いとのこと。

 御朱印も可愛らしいと人気だそう! 鳩のかわいいスタンプが押されていて限定の御朱印もあるみたい。
 そして、私がいちばん気になったものが「富士塚」。都内最古の富士塚とのこと。登山口は3ヶ所。登山をする私にとっては、登らないで帰ることはできず、ちゃんと登頂してきました! ミニチュアながらも、ちゃんと地図もあり、亀岩、烏帽子岩、食行身禄像や山頂部には奥宮まであり本物を忠実に再現されていた。

 そんな東京の魅力をたっぷり味わうことができた、はじめての自転車ツーリングは終了。歩くだけではこんなに広い範囲を移動するのはむずかしく、電車やバス、自家用車等での移動では気付けない景色など、自転車ならではのよさを今回のツーリングで味わえたと思う。

 いままで、自転車の所有がめんどうで諦めていたが、気軽にレンタルできるシステムがあることも知り、楽しみが増えた。今回は電動アシスト自転車のレンタルだったが、仲間たちのようなクロスバイクにも興味が出てきてしまった。でも、もう少しレンタル自転車を楽しんでみようかなとも思っている。

 今回案内してくれたガイドは、インバウンドのツーリングをしていて、外国人に日本の景色を紹介しているとか。もちろん、日本人でも案内してくれるそうなので、興味があればぜひ相談してみてくださいね! レンタル自転車込みのツアーもあるそうです!!

詳しくはこちらまで。
 

(※この取材は2020年3月中旬に実施しました)

岩田京子 登山ガイド

日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。アウトドア業界でのイベントの企画運営の仕事の経験を生かし、現在はガイド業をするかたわら、海外添乗員も兼務。プライベートでは、ヒマラヤの山々にチャレンジしている(チョーオユー、マナスル登頂)。2019年5月、エベレストーローツェへの連続登頂に挑戦。見事、成功を収めている。2024年、マカルーへの登頂も果たし、8,000峰は6座目に。
WEBサイト:山plus

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