- キャンプ
キャンプとパーティーを融合させた「CAMParty」で、尾瀬の紅葉に、かたしな高原の自然、地産地消のおいしい料理を楽しもう
2020.10.09 Fri
河津慶祐 アウトドアライター、編集者
暦が10月にかわろうかというころ、ちょうど各地の山の紅葉が見頃を迎える時期に、あるイベントの誘いを受けた。
「CAMParty」
“CAMP” と “PARTY” をかけ合わせて名付けられたこのイベントは、キャンプだけではなく、そこにパーティー要素も組み込み、食事や音楽なども楽しんでしまおう、というものだった。
※環境省補助事業の一環。
秋の朝は肌寒い。「CAMParty」をおこなう「かたしな高原」は標高1,000mに位置するので、なおのことである。東京から車で移動してきたので、服装は半袖。車から出るとすぐにトランクからジャケットを取り出して羽織る。
続々と参加者が集まり、軽く挨拶をすませたら、早速、最初のツアー「尾瀬トレッキング」に向かった。
今回のツアーのガイドは、Akimamaにもたびたび登場してくれている国際山岳ガイドの近藤謙司(こんどう けんじ)さんと、夏は尾瀬のガイド、冬は「HighFive MountainWorks」でバックカントリーガイドをしている沼野健補(ぬまの けんすけ)さん。
なんて豪華なガイドメンバー! このふたりにガイドしてもらえることなんて、もう二度とないのでは!?
最初の目的地は「山の鼻」。鳩待峠からだと、やや下り基調の登山道を木漏れ日を受けながら歩いていく。
「あれはブナ。うちわみたいのはハウチワカエデ。手みたいのはトチノキ。あの赤く色づいているのはツタウルシ。黄金色に輝いているのは山菜でおなじみのコシアブラです」
こんな調子で、道中ずっと木々の説明をしてくれる沼野さん。説明が的確でわかりやすい。
バックカントリーガイドらしく、こんな話もしてくれた。
「至仏山は奇跡の山。こんな滑るためにできたような山はほかにないですよ。茶色の岩が見えるでしょ。あれは蛇紋岩。蛇紋岩があると木々の発育を妨げるため、森林限界が低いんです」
山の鼻まで残り半分ほどだろうか、登山道にクマ除けの鐘があらわれる。
「見てください。大きいクマ棚があるでしょう。ここからはクマが頻繁に出没する場所。注意してください。今年は2歳の子クマが多くて、警戒心がないからか、人間の近くにあらわれます」
「あれはウワミズザクラで、クマはさくらんぼを食べに登ります。あっちはミズナラでドングリですね」
沼野さんがそんな話をしていると、左側の上方で「バキバキ」と木が折れる音がした。みな眼を凝らし音のする方を見てみると……。
クマだ! ミズナラの上の方で黙々とドングリを食べている。
「人間に気づいていると思いますが、ドングリに夢中ですね。こんな光景めったに見られない。大きな音を出さずに少し観察してから、さきに進みましょう」
観察しているとクマは、ドングリのついた枝を器用にへし折り、実を食べたらお尻の下に差し込んでいく。運良く(?)クマ棚をつくる過程を見れてしまった。
聞くと、今年はとくにクマが人前にあらわれているという。子クマで警戒心がすくないというのもあるが、コロナ禍の影響で尾瀬を人が歩かず、それで登山道近くに縄張りをはってしまったようだ。
“自然の中に人間がおじゃまさせてもらっている” そんなことを考えさせられる。
数分、クマを観察したのち、機嫌をそこねる前にその場を後にした。
余談だが、その場に残っていた撮影隊は、クマが木からおり、山へと去っていくところも目撃したのだとか……。
もうまもなく山の鼻というところで、沼野さんがこんなことを教えてくれた。
「この辺りは “不思議の森” と呼ばれるんです。ミズナラの巨木が多いでしょう。ミズナラは陽樹で、その木々がつくった日陰で陰樹のブナが育ってくる。陽樹は育たないんです。ここはまだ大きなブナが生えていないので、ちょうどこれからブナ林になる転換期を迎えているところなんです」
ミズナラの寿命は500年以上と言われている。生きている間に森の移り変わりが見られるであろうか。
山の鼻につくとお昼時だった。山の鼻小屋に向かい昼食をとる。レトルトのご飯を出す山小屋が多いなか、ここは手作りのご飯を出してくれるという。ん〜、おいしい!
昼食後、まだ時間があったので尾瀬ヶ原を少し散策することになった。草紅葉の最盛期は10月なかばと聞いていたが、尾瀬ヶ原にはあたり一面、黄金色の湿原が広がっていた。
ここでもガイドのふたりから、さまざまな話を聞くことができたのだが、全部書いてしまうとツアーに参加したときの楽しみがなくなってしまうので割愛。ぜひイベントに参加し、直接聞いてみてほしい。
さて、尾瀬トレッキングツアーを終え、かたしな高原に戻ると夕食まで自由時間だ。付属している大きなアスレチックで遊ぶも良し、木工クラフトやストーンペイントなどの体験アクティビティに参加するも良し、おもいおもいに楽しもう。
筆者は残念ながら仕事が残っていたのでワーケーション……。かたしな高原はWi-Fiやワークスペースの設備が整っているところもポイントのひとつ。お父さんだけトレッキングに行かず仕事を、なんてこともできたりする。
(撮影:河津慶祐)
(撮影:河津慶祐)
あたりが暗くなってくると、待望のグランピング形式のディナーがはじまった。ナイフにフォーク、ワイングラスとかなり本格的にセッティングされている。一品目はオードブル、そしてスープに魚、肉料理とコース料理が次々をサーブされる。地産地消とテーマとし、この地域で取れる食材を使用しているという。いっしょに出された日本酒も地元のものであった。
ありきたりな言葉だが、どれもおいしい!! どの野菜も味が濃いのだ。特筆すべきは最後に出てきた豚肉。旨味が強くやわらかい。そして脂身がスーッと溶けていく。これらの料理だけでも、このイベントに参加した甲斐があるだろう。
宿泊するロッジはベッドタイプだった。もちろんバストイレも完備。テレビに冷蔵庫に電子レンジ、電気ケトルもついている。今回は一泊だったが、ロングステイも楽しいかもしれない。
(撮影:河津慶祐)
翌朝、目を覚ましカーテンを開ける。いい天気だ。「朝食も外で食べよう」ということなのでテントに向かう。
テント内のテーブルには大きなバスケットが用意されていた。中を見るとホットサンドメーカーが。ハムやチーズ、卵といった定番の具材から、鶏肉やポテトサラダなども入っている。
参加者各々、好きな具材を挟んで焼きはじめる。話に夢中になってしまい、気づいたら焦げはじめていたり、具を欲張りすぎてはみ出てしまったりと、個性が出ておもしろい。
グリーンサラダと、保温ボトルに入っているコーンスープもあり、優雅な朝食となった。
朝食を食べ終わりちょっとひと休み。荷物を片付け終わるとまだまだイベントはつづく。つぎは昼食に向けて野菜の収穫だ。
ロッジなどがあるメインスペースから道を下っていくと収穫体験ができる「ミッフィー農園」がある。各自、カゴとハサミを持ったら収穫開始! ナスにトマト、パプリカにニンジンがなっている。ビニールハウスだから夏野菜も取りごろだ。
収穫が終わったら、お腹を空かせるために沢へ移動した。沢沿いには遊歩道が設置されていて、自然を堪能しながら散策できるようになっている。各々、収穫した人参を洗ったり、自然観察を楽しんでいた。
お腹が空いてきたら昼食づくりに取りかかる。収穫してきた野菜を切って、生地を丸く伸ばし、盛り付けて石窯に入れると……、ピザのできあがり!! 収穫直後の取れたて野菜を、すぐにピザにして食べるって、なんて贅沢なのだろうか。
ピザを食べ終わったら、ついに解散の時間となった。たのしい時間も終わりを告げる。時刻は昼過ぎ。このまま帰れば渋滞にも巻き込まれず、夕方ごろには帰宅できるだろう。
今回参加させてもらった「CAMParty」。最初はわりとありきたりなイベントなのかな、と思ってしまっていた。だが、実際は大ちがい。片品村や尾瀬が誇る豊かな自然環境と食、そして関わっている人々、それらすべてが魅力にあふれていた。
「CAMParty」は10月中にあと2回開催されるようだ。10月17〜18日のガイドは今回と同じく近藤さんと沼野さん、10月31日〜11月1日は沼野さんと、新潟でバックカントリーガイドをしている永井さんの滑る系コンビが担当する。ちょうど紅葉シーズン真っ只中なので、今回よりももっとすばらしい景色が見れるだろう。
この記事だけでは語り尽くせないことがいっぱいなので、ぜひ参加し、実際に体験してみてほしい。
かたしな高原 CAMParty 2020
開催日時:10月17日(土)~18日(日)/10月31日(土)~11月1日(日)
場所:かたしな高原キャンプ場/尾瀬国立公園
人数:各20名
参加費用:16,500円(2日間の保険代/宿泊費/食費・夕:1、朝:1、昼:1)
※GoToトラベルキャンペーンで申し込むと、なんと35%オフになり、2,000円のクーポンが!!
要件:2時間程度の散歩ができる健康な人
宿泊:かたしな高原キャンプ場(Wi-Fiやワークスペースが確保できている宿)
食事:3食(地産地消型の食事の提供)
案内:専門の山岳ガイド2名/補助スタッフ2名(自然解説員含む)
【1日目の日程】
9:00 集合/受付(かたしな高原キャンプ場)
9:30 尾瀬国立公園へ移動し、鳩待峠から山の鼻までのトレッキングツアー開始
11:30 昼食(地産地消型 サンドウィッチなど)
12:30 鳩待峠に戻る
16:00 かたしな高原にて自然科学教室などに自由参加
17:30 グランピング形式で食事
20:30 宿泊希望者はテントまたはバンガローで就寝
【2日目の日程】
7:30 朝食(ホットサンドなど)
8:30 集合
9:00 自然環境教育(地産地消型 料理教室/農園で野菜の採取)
12:00 昼食(地産地消型 ピザ作り)
15:00 解散
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(画像提供=CAMParty 写真=ヒロスイ写真館 文=河津慶祐)