- アクティビティ
トレイルランニングをはじめたい! まず用意するギアはこれだ!!
2020.10.26 Mon
長谷川泰子 スカイランナー
未舗装路、つまり地面が土の登山道や林道、さらには岩場を登ったり走ったりするアウトドアアクティビティをトレイルランニング(以下、トレラン)と言います。ロードランニング歴は長いけど、どうやってトレランをはじめればいいのかわからない人も多いはず。
ランニングシューズを履き、動きやすい服装に着替え、街中を走るのとは大ちがいで、いろいろな道具(ギア)を用意しなければなりません。登山経験があればそのまま使えるギアもありますが、ランニングからトレランにチャレンジする人にとっては、はじめて目にしたり聞いたりするギアもあるかと思いますので、お役に立てれば幸いです。
自然のなかを駆け抜けるトレランの魅力は人それぞれ。身体を酷使して息を切らせながら登った山の、その眼下に広がる極上の景色を見たいがためにトレランにハマる人、多いと思います。ほかには、足場の悪い路面でいかにケガをしないで走るか、つねに足元へ細心の注意をはらいながら、ちょっとしたゲーム感覚で足運びを楽しむためにトレランする人もいると思います。ちなみに私は後者です。いずれにしろ、楽しむための準備は入念に!
山には自動販売機もなければコンビニもありません。もちろん病院も。山は癒しの場ですが、危険も潜んでいます。大げさに聞こえるかもしれませんが、登山でもトレランでも、入山したらゴールをめざすのではなく「生きて帰る」ことをつねに頭へ入れながら動きましょう。途中で天気が急変したり、体調を崩したりしても、しっかり対処できる装備と知識があれば安全にアクティビティを楽しむことができます。まさに “備えあれば患いなし”。ランニング歴が長いサブスリー(*1)ランナーであっても、きちんと準備をして入山する必要があります。
(*1) フルマラソンで3時間を切ること。
▶︎必携品(必ず用意しなければトレランがはじめられないギア)
①トレイルランニング用のシューズ
トレランでは舗装されていない自然のなかを走りますので、石がごろごろ転がっていたり、木の根っこがあったりする不整地がフィールド。障害物競走のように飛んだり跳ねたりしながら走るため、グリップ力に影響するラグ(靴底の凹凸)がしっかりあり、トレイルに転がっている岩や根っこなどにシューズを引っ掛けた際の衝撃から足を守る強い構造のトレイルランニング専用のシューズを履くことをおすすめします。
足を前後に動かし、前進するという動作はロードランニングと同じ。自分の足に合ったシューズを履かないと、走っている途中でケガにつながってしまうのも同様です。慎重にシューズを選びましょう。
②バックパック(ザック)
前述したとおり、山の中にはコンビニも病院もありません。万が一に備えて雨具や救急セット、さらには補給食や水分を持って山に入る必要があります。ただ、ふつうの登山とちがって、スピードと身軽さが勝負になるので、大きなバックパックを背負って走るわけにはいきません。
はじめて山を走るトレラン初心者なら、まずは容量の少ない8~10ℓ程度のものを選ぶといいでしょう。縦走もかねたロングスタイルのトレランや、夜通し走るレースなどにはもう少し容量の多いバックパックを選ぶ必要があります。ただ、経験を積んでいくとだんだん自分の荷造りスタイルも確立し、山に入るときに持って行くものを取捨選択できるようになります。私もはじめのころは荷物が多かったのですが、いまでは上の写真にある容量8ℓのバックパックを愛用しています。
最近はさまざまなブランドが多種多様なバックパックをつくっていますので、自分の走行スタイルに合ったものを選んで快適なトレランを楽しみましょう。なかなかゆっくりショップに行けなかったり、実物を見る前にちょっと情報収集したりする人のためにも、今後なるべく詳しくご紹介できればと思っています。
③トレランに適したウェア
フィールドが登山と同じなら登山ウェアを着ればいいの? 走るからランニングウェアでいいの? 答えは両方ともOKです。山の中で活動するアクティビティなので、登山のときと同じように軽量で速乾性にすぐれているウェアがいいでしょう。また、足を大きく動かすので、足さばきを妨げないランニング用のショーツ(短パン)もおすすめです。
距離が短いときはバックパックを背負わず、ハンドボトルを手に持って、補給食をポケットにしのばせたりすることもあります。そうしたとき、ランニング用の短パンにはポケットがないものが多いので、機能的で快適に長距離走れるトレラン用の短パンを履いたほうが快適に走れます。
④レインウェア
走り出した時点で晴れていても、山の天気は急変することがありますので、レインウェアは必ず携行しましょう。たとえ降水確率が0%だとしても、山頂だけ悪天候だったりします。また、汗をかいた体が冷たい雨風に当たると、まず体温が奪われ、次第に体力を著しく消耗し、最悪の場合、動けなくなってしまいます。山で体が動かなくなってしまったら命にかかわるので、体を冷やさないようなギアを選ぶことがなによりも重要です。
大げさに聞こえるかもしれませんが、レインウェアは命を守るための大事な道具です。値段はピンキリですが、安価なものは生地から水が染み込んできたり、寿命が短かったりします。少し値が張ってもいいものを選び、山の中のみならず街中でも愛用して相棒になるレインウェアに出逢ってください。各ブランドからさまざまな特徴のものが展開されていますので、目的に合ったレインウェアを選ぶといいでしょう。
⑤補給食および水分
ロードランニングでは、喉が渇いたりお腹がすいたりしたときにはコンビニや自動販売機でかんたんに買えますが、山ではもちろんなにも買えません。登山経験がある人なら「行動食」という言葉になじみがあるかもしれませんが、少し専門的な話になりますので今回は割愛します。なお、写真にある商品は私が愛用している補給食の一部です。
救護がむずかしい山の中でハンガーノック(*2)になっては命の危険につながりますので、長時間動き続けるためには途中で栄養補給したりエネルギーチャージしなければなりません。ただ、運動中に疲労をため込んだ内臓はなかなか食糧を受け付けてくれません。お腹を満たすためだけではなく、疲労を回復してくれたり、スタミナアップさせてくれたりする成分が入っているものを摂取します。各ブランドが多種多様なジェルやサプリメントを販売しているので、自分に合ったものを探すのもギア選びの楽しさですね。
(*1) 食べずに行動を続けるなどして、身体が極度に低血糖状態となり、行動に支障が生じること。いわゆるガス欠状態。
「山で遊ぶ」という点では登山もトレイルランニングもいっしょです。山は歩くものだと思ってませんか? もしくは、走るのは道路だけだと思ってませんか? ちがうんです。山の中を走って遊べるアクティビティもあるんです。しっかりギアを揃えて挑戦してみてください。
ただ、どんなスポーツにもルールがあるように、トレイルランニングにもルールがあります。野球やサッカーみたいに従わなかったらフィールド(山)から退場というわけではありませんが、自分の命、あるいはいっしょに行く人の命にかかわることなので、しっかりルールを守って遊びましょう。トレイルランニングのルールについてもまた別の機会にご紹介したいと思います。