- 山と雪
「アルプス一万尺」が、29番まであるって知ってた?
2012.12.18 Tue
子どもたちの手遊び歌としてよく歌われている「アルプス一万尺」は、アメリカ民謡であり、独立戦争のときに歌われた愛国歌、ヤンキー・ドゥードゥル(Yankee Doodle)に歌詞をつけたものです。手遊び歌として有名ではありますが、そもそもは、山の歌のようです。
山の歌というのは、今から数十年前の大衆登山ブームのおり、山岳会や大学のクラブなどの部歌として作られたり、山で亡くなった仲間を偲んで作られたり、山のつらさや、楽しさを歌詞にしたため、テントサイトや山小屋などで盛んに歌われた。作者がはっきりとしていることは少なく、いつの間にか口伝によって、歌い継がれることで形となることが多い。この曲も、作詞者は不明である。おそらく、歌い継がれるうちに、自然と歌詞が増えていったものと思われる。山の歌の中にはこのような「数え歌系」の歌は多く、山男と街女の報われない恋などを、おもしろ、おかしく自虐的ストーリー仕立てに表現されることが多い。
登山ブームといわれる昨今、今ではあまり歌われなくなった山の歌だが、このような形で一般的に知られるようになり、多くの人に歌われている例もある。 それにしても29番まであるとは……。
ちなみに、一番で歌われている、「小槍の上で、アルペン踊りを」という歌詞のなかの「アルペン踊り」というのは、そのような正式な踊りがあるわけではなく諸説あるという。そして、小槍というのは槍ヶ岳の本峰の横にそびえる岩峰のことで(写真左の小さな岩峰)、小槍と呼ばれているピークで、小槍の頂上は人が2、3人立てるほどの広さがある。
「アルプス一万尺」
曲: 作曲者不明(アメリカ民謡)
詞: 作詞者不明
1:アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さぁ 踊りましょ
2:昨日見た夢 でっかいちいさい夢だよ のみがリュックしょって 富士登山
3:岩魚釣る子に 山路を聞けば 雲のかなたを 竿で指す
4:お花畑で 昼寝をすれば 蝶々が飛んできて キスをする
5:雪渓光るよ 雷鳥いずこに エーデルヴァイス そこかしこ
6:一万尺に テントを張れば 星のランプに 手が届く
7:キャンプサイトに カッコウ鳴いて 霧の中から 朝が来る
8:染めてやりたや あの娘の袖を お花畑の 花模様
9:蝶々でさえも 二匹でいるのに なぜに僕だけ 一人ぽち
10:トントン拍子に 話が進み キスする時に 目が覚めた
11:山のこだまは 帰ってくるけど 僕のラブレター 返ってこない
12:キャンプファイヤーで センチになって 可愛いあのこの 夢を見る
13:お花畑で 昼寝をすれば 可愛いあのこの 夢を見る
14:夢で見るよじャ ほれよが浅い ほんとに好きなら 眠られぬ
15:雲より高い この頂で お山の大将 俺一人
16:チンネの頭に ザイルをかけて パイプ吹かせば 胸が湧く
17:剣のテラスに ハンマー振れば ハーケン歌うよ 青空に
18:山は荒れても 心の中は いつも天国 夢がある
19:槍や穂高は かくれて見えぬ 見えぬあたりが 槍穂高
20:命捧げて 恋するものに 何故に冷たい 岩の肌
21:ザイル担いで 穂高の山へ 明日は男の 度胸試し
22:穂高のルンゼに ザイルを捌いて ヨーデル唄えば 雲が湧く
23:西穂に登れば 奥穂が招く まねくその手が ジャンダルム
24:槍はムコ殿 穂高はヨメご 中でリンキの 焼が岳
25:槍と穂高を 番兵において お花畑で 花を摘む
26:槍と穂高を 番兵に立てて 鹿島めがけて キジを撃つ
27:槍の頭で 小キジを撃てば 高瀬と梓と 泣き別れ
28:名残つきない 大正池 またも見返す 穂高岳
29:まめで逢いましょ また来年も 山で桜の 咲く頃に