• 山と雪

覚悟を決めて、雪山に挑戦!
こんな山に登ってみたい!!
Akimama Mountain File vol.02

2013.02.10 Sun

宮川 哲 編集者

西穂独標(にしほどっぴょう/2701m)

 それにしても、今年は雪がよく降りますね。2月の厳冬期、山々の頂は厳しくも静寂の同居する独特な世界に包まれています。雪山に少しでも憧れを持つなら、この時期に肚を決めるべきでしょう。狙うは、3月下旬から4月の春先、天候の安定した残雪期の山々です。そのための準備期間として、いまから雪山の計画をしっかりと立ててみてください。ただし、間違っても初心者のみでの入山は止めてくださいね。雪山経験豊かな仲間がいれば、迷わず相談を。まずは、その道のプロに同道を願うべし、です。
 
 さて、雪山入門のコースとして人気の高い西穂独標のこの時期の様子をご紹介します。ここ西穂界隈は、新穂高温泉から通年営業の新穂高ロープウェイを使えば一気に標高2,140mの高みまでアクセスできるとあって、その手軽さから年々人気を増しているエリアです。山頂駅の西穂高口から、夏道で1時間30分も登れば西穂山荘に到着します。降雪の状況にもよりますが、冬なら2時間強といったところでしょうか。西穂山荘から独標までは片道で夏道1時間半ほどの距離。雪がない季節なら、そのまま独標まで行くことも無理なくで来ますが、やはりこの季節は難しいでしょう。初日は、迷わず西穂山荘に宿を取りましょう。

 2日目は、まだ薄暗いうちから行動開始。夏道1時間半とはいえ、雪道では少なくともその倍くらいは掛かる心づもりでいてください。突然の暴風雪にホワイトアウト、転・滑落の危険もあります。雪山ではいつなんどき何が起こるか分からないのだから、時間的な余裕はたっぷりと取っておくことです。小屋の中でウェアの装備を完全に整えてから、小屋の前でアイゼンを装着。ピッケルを手に、ヘルメットも忘れずに。

 焦らず、ビビらず、ゆっくりと一歩一歩を確実に歩みましょう。西穂山荘の前の斜面をひと登りすれば、丸山のピークに出ます。ここは標高2,452m。朝焼けの北アルプスの視界が一気に広がるポイントです。初めての雪山であれば、その景観を前におそらくは一声も出ないでしょう。体も温まってきたころなので、ベンチレーターの調節をするなど、細かな体温調節も忘れずに。雪山では汗などの濡れは禁物。レイヤードはもちろんですが、その場その場の対処も大切です。

 徐々に標高を上げて斜面も急になって来るので、不安があればロープを結ぶタイミングかもしれません。そこから稜線を登ること約1時間で、独標の頂上直下に到着します。めざす山頂はすぐそこですが、思わず見上げてしまうほどの壁が目の前に立ちはだかります。胸の高鳴りが最高潮に達する場所ですね。もちろん、万が一にも転落すれば、穂高の谷へ真っ逆さま。慎重にアイゼンを効かせ、ピッケルを雪面に食い込ませながら登っていきましょう。ほんの数十メートルほどの距離ですが、ともすると永遠にも思えるかもしれません。そしていざ、標高2,701mの山頂へ。体をピークに立たせるやいなや、奥穂に前穂、西穂が形づくった岳沢の荒々しいカールが目も眩むほどの壮大さで目に飛び込んできます。

 こんな風雪の造形は、おそらく雪山でしか味わうことのできない世界です。山肌の雪の白と影がつくる黒、そして空の青。その三色が織りなす独特の配色美は、登った者にしか得られない宝物です。ぜひとも、この特別な世界へと飛び込んでみてください。きっと、人生が少なからず変わると思います。

 ちなみに独標から先、西穂高岳までは雪山登山のルートにはなっていますが、ここはまぎれもなく山の玄人の世界。経験者同伴とはいえ、そう簡単には進めるエリアではないので要注意です。自己責任は登山の大前提なれど、もしも雪山で遭難してしまうと遭難した本人よりも、その周辺に降り掛かる苦難は想像を絶するものに……。決して、安易な行動はしないように心掛けてくださいね。自然はともすると、人間にとって過酷なまでの牙を剥くことを忘れずに。

 天気図とにらめっこしながら、天気の安定した春先にトライしてみてください。予定優先よりも、安全優先で。西穂独標は逃げませんから。

                                                                                        ●西穂独標登山情報(冬期)
登山ルート:1日目=新穂高ロープウェイ・西穂高口(2時間)西穂山荘泊 2日目=西穂山荘(2時間)西穂独標(1時間30分)西穂山荘(1時間30分)西穂高口
登山情報:TEL0263-36-7052(西穂山荘)、TEL0578-89-2252(新穂高ロープウェイ

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