• 山と雪

安達太良山から「FUKUSHIMAは青かった!」 おい責任者、登ってこいやぁ

2013.03.18 Mon

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

 雲ひとつない、青空のもと、安達太良山の頂上から見える福島の山並はどこまでも美しかった。
 
 奇しくも3月14日、2年前のこの日、福島第一原発3号機が水素爆発を起こし、大量の放射性物質が、福島県のみならず、日本の広範な国土を汚染、11日から15日までの4日間でおよそ17万人もの人が避難を余儀なくされました。その世紀末的な状況は今も変わらず、いまだ自分の家にさえ帰れない悲劇は続いています。

 安達太良山は、二本松ICから車で15分ほどの岳温泉を登山口として、四季を問わず毎年多くの登山客を迎えています。とくに今のシーズンは、あだたらスキー場のゴンドラを使えば、手軽に日帰りでもアクセスでき、山中には、通年を通して営業をする温泉の湧く「くろがね小屋」もあり、極楽、快適な冬山登山を楽しむことができます。

 天候にも恵まれ、モルゲンロートに染まる稜線をめざし、くろがね小屋を出発。およそ2時間ほどで、安達太良山の頂上に到達しました。前日からの強い風で、ところどころ氷化している雪面にしっかりとアイゼンを蹴り込みながら、稜線に出ると眼下には福島県全域をのぞむことができます。西側には、磐梯山をはじめ、会津の山並み、そして北側には吾妻や蔵王の山々が、そして東には標高は低いものの、飯館村や浪江町、そして双葉町、大熊町といった避難区域の山々が一望できます。

 かつて、人類として初めて宇宙への有人飛行に成功したガガーリンが、宇宙から地球を眺めたときに、その地球の美しさを語ったように、安達太良山の頂上から見わたす福島の山河はあまりにも美しく、さらに、この広大な山並みが汚染されてしまっていることを思うと言葉がみつかりません。

 人間は取り返しのつかない、途方もないことをしでかしてしまった……このたびの事故の恐ろしさにあらためて驚愕するとともに、いくら懺悔してもしきれません。一度失ってしまったものを取り戻すことはできないのです。とにかく一度、安達太良山に登ってください。くろがね小屋では空間放射線量の値を定期的に測って発表しています。登山をするには何の危険も問題もありません。一度その目で福島の山々を見わたしてください。その山々の麓には人間の営みもあるのです。山頂からは一人一人の営みまでは見ることはできませんが、この広大な大地を見れば、そこに住む人々、住めなくなってしまった人々の叫びと嘆きが、風に乗って聞こえてきます。

 二度とこのような事故を繰り返さないためにも、今、再稼働に躍起になっている方々は一度、安達太良山に登ってください。本当にお願いします。

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

本サイト『Akimama』の配信をはじめ、野外イベントの運営制作を行なう「キャンプよろず相談所」を主宰する株式会社ヨンロクニ代表。学生時代より長年にわたり、国内外で登山活動を展開し、その後、専門出版社である山と溪谷社に入社。『山と溪谷』『Outdoor』『Rock & Snow』などの雑誌や書籍編集に携わった後、独立し、現在に至る。日本山岳会会員。コンサベーション・アライアンス・ジャパン事務局長。

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