- 山と雪
憧れの「遠い飲み屋」。編笠山の青年小屋でとびきりの酒
2013.10.20 Sun
宮川 哲 編集者
山小屋の軒先にかかる赤ちょうちんひとつ。そこには「遠い飲み屋」の文字がありました……。
南八ヶ岳の編笠山(標高2,524m)と権現岳(同2,715m)の鞍部に建つ青年小屋は、知る人ぞ知る憧れの山小屋です。小屋の入口に提げられたちょうちんの文字からもわかるように、ここは歩いてしか行くことのできない「遠い飲み屋」なのです。
もうこんなシチュエーションだけでも呑ん兵衛には「憧れの的」ですよね。実際、ずいぶんとむかしから「行ってみたいなぁ」と思い焦がれていた場所でした。
キリリと冷えた秋の寒さも何のその。赤ちょうちんをくぐり抜け、談話室の引き戸を開ければ、そこはこたつの置かれた憩いの場。青年小屋にたどり着いた登山者たちは、この部屋で暖をとりながら夕食までの楽しいひとときを過ごします。
遠い飲み屋をめざしてきた人には、ここが憧れの場所なんです。こたつの上の棚には酒瓶がズラリ。なんと「ボトルキープ出来ます」の看板まで掲げられています。ずいぶんと古いブリキの看板からは、歴史も感じられるくらいです。
そこにあるのは、日本酒に焼酎、ウィスキーの酒瓶です。どれもこれも空きかけで、まさにキープされているものばかりのようです。“シーバス”に“ジャックダニエル”、“山崎”など呑ん兵衛おなじみの瓶もたくさん。けっこう多種多様なラインアップです。想像するに、これは青年小屋ファンの常連登山者が持参してくるものなのでしょう。
ボトルキープでなくとも、もちろん飲めます。今回の山行時には、青森の“田酒”や“縄文明水”に宮城の“わしが國”など、通好みの一升瓶が並んでいます。そのほか甲州らしく、特産の“ルミエールワイン”やサントリーの“白州”も。う〜ん。たしかに、飲み屋ですよね。これは魅力的。
南八ヶ岳の山の魅力に癒され、歩き疲れた身体に好みの一杯を含むときのシアワセ感といったら、もう……。青年小屋に何度も訪れるファンが多いのも頷けますね。
冒頭に「知る人ぞ知る憧れの山小屋」と書いたのは、実はこの「遠い飲み屋」だけが理由ではありません。青年小屋のご主人、竹内敬一さんに憧れてやってくる人もたくさんいるのです。
竹内さんは、日本を代表する山岳ガイドのひとり。エベレスト(8,848m)やアマダブラム(6,812m)にも登っている山のスペシャリストです。また、山梨県長坂警察署管内の山岳救助隊隊長でもあります。小屋の経営、山岳ガイド、そして遭難救助など、ここ南八ヶ岳をベースにさまざまな活動をされている方です。正直、カッコイイ、山の親父さんなのです。
そんな山のスペシャリストが「遠い飲み屋」のオヤジなのだから、山好き、酒好きが集まってくるのも当たり前かもしれませんね。
でも、今回は平日だったからか、残念ながら竹内さんにはお会いできず。小屋のスタッフに尋ねてみたら、土日には居ることが多いですよ、とのことでした。よし、今度は週末に行こう!
そうそう、ここは「遠い飲み屋」でもありますが、れっきとした山小屋です。消灯は夜の9時。長っ尻は厳禁ですよー。
■山小屋情報/青年小屋
場所:編笠山の北東部、権現岳(ノロシバ)との鞍部/標高2,400m
営業期間:4月下旬〜11月上旬
収容人数:150名
宿泊料金:1泊2食7,800円/素泊まり4,800円
テント場:約20張強/1人600円
連絡先:0551-36-2251/090-2657-9720(現地)