• 山と雪

ロングトレイルは雪の下。スノーシューで登ってみた白一色の鍋倉山

2014.03.16 Sun

宮川 哲 編集者

 日一日と春めいてくる季節ですが、まだ、あるところにはあるのです。それも、たっぷりと。なにがって? 雪ですよ、雪。

 先日、スノーシューを履いて長野と新潟の県境にある関田山脈に行ってきました。その最高峰は、標高1,288mの鍋倉山。

 あれ? 関田山脈ってなんか聞き覚えがあるな、とピンッと来た人は、おそらく山歩きが大好きな人でしょう。そうです、あの信越トレイルが80kmにわたってその山稜を結んでいる山脈の名前です。

 でも、その信越トレイルですが、この雪の季節はガッツリとクローズされています。というよりもクローズ扱いとなっています。

 それもそのはずで、この関田山脈は日本有数の「超」が付くほどの豪雪地帯。風下側の吹きだまりなんて、6mとか8mなんてあたりまえのことも多々あるんだそうです。

 当然、稜線には雪庇が列を為して張り出していたりもします。いったん吹雪き始めれば、雪山歩きに慣れていない人には、とてもとても手も足も出ないような状況になることも。

 だから、信越トレイルのオープンは、雪解けが終わってコースが整備される6月の後半以降になるそうです。

 そう。だから、雪の季節の関田山脈は「稜線歩き」には、あまり向かないんです。でも、ピークをめざして麓からエッサエッサと登っていくには、なかなかに魅力的な山なのです。

 もちろん、足元にはスノーシューが必要です。ツボ足では、たぶんたどり着けません。スノーシューでもラッセルが必要な箇所もあって、真冬でも大汗をかいちゃうくらいですから。

 今回は偶然にも、前夜に吹雪いてくれたおかげで、サラサラキュッキュの雪がたんまり。おまけに、大陸から高気圧が張り出してくれたので、朝から雲ひとつない真っ蒼な晴天に恵まれました。

 アレやコレや言うよりも、写真がすべてを物語ってくれると思いますが、麓から汗をかきかき、歩くこと4時間強で山頂にたどり着くことができました。

 よくスキーやらスノーボードの滑り系の人々が使う言葉に“THE DAY”なんてのがありますが、これ、スノーシューにもバッリチと当てはまる言葉でした。この日はまさにTHE DAY、それもスペシャルの。

 鍋倉山の山頂からは、信越トレイルの全貌を見わたすことができます。もちろん、360度の大展望も。西の妙高火打から反時計回りに、雨飾、黒姫、飯綱、斑尾、志賀高原から苗場、八海山方面の山々、そして日本海まで!! ぐるりぐるぐる大展望です(違和感があったのは、柏崎の海岸にポッコリと突き出た煙突と凸凹の白い建物ですかね……ちょうど3月11日だったこともありまして)。

 鍋倉山がおもしろいのは、山頂の手前すぐのところまで樹林に覆われているのに、山頂直下に出た途端に大展望が拓けるところでしょう。山頂域の一画だけが、樹林帯から頭を出しているんです。

 当たり前ですが、植物はすべて雪の下ですから一帯は一面の大雪原になっています。もうどこもここも歩きたい放題。あのダイナミックさは、冬のこの季節にしか味わえないと思いますよ。真っ白な山頂で、もう思う存分テンション上げちゃってくださいね。

 というわけで、鍋倉山です。天気図をしっかりチェックして、雪降りの次に晴マークが来るようなタイミングをみつけて、ぜひ挑戦してみてください!! 豪雪地帯だけに、まだまだ楽しめると思いますよ。

 でも、雪崩にはご用心。あまりに春めいたあたたかい日は、スノーシュー日和ではありません。むしろ、キュキュと冷えた、寒い日が狙い目です。

(取材日=2014年3月11日)
                     

■鍋倉山/冬期登山情報
日帰り:歩行時間計 往復/約6時間
参考コースタイム[積雪期]:登山口・温井集落(1時間)管理小屋(1時間30分)巨木の森稜線(30分)巨木の森散策(1時間)鍋倉山頂(30分)黒倉山鞍部(1時間)林道出合(30分)温井集落
アクセス:冬期は登山口の温井までの公共交通機関はないので、タクシーかマイカーを利用。最寄りのICは、上信越自動車道の豊田飯山IC。電車利用の場合は、JR飯山線の上境駅。
地図:2万5000分の1地形図「野沢温泉」
山行アドバイス:無雪期には信越トレイルが敷かれる鍋倉山の山頂も、この季節は雪山の装備を整えた人のみが行ける場所に。麓からのルートも無雪期であれば、なんなく登れるルートがあるものの、積雪ルートはまったく別のルートをとる。やはり、地図とコンパスを使ってのルートファインディングの技術が必要。人気のある山なので、トレースが付いている場合もあるが、状況次第ではラッセルが強いられることもある。ある程度の覚悟と体力が必要だ。スノーシューといえども、初心者のみでの入山は避けるべき。

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