• 山と雪

お山の上が、とってもとってもいい季節です。

2014.06.11 Wed

宮川 哲 編集者

 本格的な夏が始まる前のいま、山はとってもいい季節。新緑が目に眩しい、山歩きのベストシーズンです。

この湧き出るような新緑は、この季節にしか楽しめない。森全体が、緑色に輝いて見える!! 低山を歩くなら、いま。

 とはいっても、標高の高い山の上は、まだまだ雪の中。いわば残雪期なので、気楽に登るというわけにもいきません。雪崩に落石なんて、コワいですからね。そこで、暑くなる直前のこの季節にこそ、低山歩きをオススメしたい!

 低山の代表選手といえば、六甲です。大都会神戸の裏山的存在ですが、いやいや、奥深い山域です。なんといっても、かの加藤文太郎も歩き回った近代登山発祥の地ですからね。自然も歴史も、深い深い。

 六甲山系といえば、西は須磨浦公園から東は宝塚まで、全山を歩けば56kmにもなる大縦走となりますが、もちろん、登りたい山をパートごとに分けて登ることもできますよ。その昔から山登りの対象とされてきただけに、登山道は縦横無尽にあるわけでして。

 今回歩いたのは、全山縦走路の前半戦。須磨浦公園から須磨アルプス、菊水山を経て新神戸まで。一日の行動時間が8時間ほどと、日帰りの山としてちょうどいいコースです。

 スタート地点は、山陽電鉄の須磨浦公園駅。ここから最初の山塊である鉢伏山、旗振山、鉄拐山を登ります。じつはこの「最初の山塊」というのが六甲歩きのポイントなんです。神戸の街中にある山だけに、山と街が交互に現われ、登っては下り、下りては登るを繰り返すのです。

 今回のルート上の山塊は4つ。上記の旗振山塊の次は、横尾山を中心とする須磨アルプス、そして山頂に神社のある高取山、続いて菊水山となります。あいだの街は、高倉台に妙法寺、鵯越。

(左上)旗振山の標高は253m。低山とはいえ、登り甲斐あり。(右上)横尾山にある花崗岩の大岩壁。ここに馬の背のルートが。(左下)ルート上には、六甲全山縦走路の案内版も。見落とし注意! (右下)菊水山から見た須磨方面の展望。遠く、歩いてきた山並みが見わたせる。

 ずっと山に浸っていたい人には、ともすると不満が募るかもしれませんが、いやいや、端からこういう山だと思えば、とってもおもしろい山ですよ。とてつもなく展望がよかったり、いきなり本格的な岩場歩きを要求されたり、かと思えば、登り一辺倒の階段が続いたりと、山塊ごとにいろいろな特徴があるんですよね。途中、街に下りるので、行動食や飲料水の入手にも困りません。

 とにかく飽きさせない、変化に富んだ山歩きが楽しめるわけです。しかも、地元の人たちに愛され続ける山だけに、ルートはとても歩きやすく道迷いの心配もほぼありません。もし、間違えるとすれば、それは街中歩きのときでしょう。住宅街を抜けたりしますので、その点だけは要注意です。

 このルートでのクライマックスは、やはり須磨アルプスの岩場歩きです。横尾山の馬の背というポイントで、花崗岩の岩肌が大胆な稜線をつくっています。ときに三点支持が必要なところもあったりして、慣れない人にはドキドキの緊張感が。なるほどアルプスの名がつくのも分かります。

 山頂にドでかいアンテナがある菊水山からは、それまで歩いてきたルートと併せ、神戸の街並みが一望できます。ここもある意味、感動ポイントになるでしょう。

 そしてグングンと標高を上げながら、本ルートの最高地点、鍋蓋山のピークを踏めば、あとは新神戸をめざして下りるだけ。でも、この先にもまだ見どころが。神戸を代表するような観光地のひとつともなっていますが、新神戸駅の裏手にある布引滝も、一見の価値ありですよ。

(左)新神戸駅へもほど近い布引滝。六甲の水を集めて、一気に断崖を流れ落ちる。(右)布引滝の上にある布引貯水池は、神戸市民の水瓶に。水面に映った新緑の美しさよ。あぁ、いい季節。

 150万都市の裏山にこれだけの自然が残っていることが、驚きでもあり、うらやましくもあり……。でも、標高の低い山なだけに、夏場はオススメできません。神戸の夏も暑いですからね。猛暑のやってくる前のいまこの季節、新緑を愛でに、ぜひ。

                            
 

■六甲連山(旗振山、須磨アルプス、菊水山)/登山情報
歩行時間計:約7時間55分
参考コースタイム: 須磨浦公園駅(45分)旗振山(25分)おらが茶屋(55分)馬の背(45分)妙法寺(45分)高取山(45分)鵯越(1時間10分)菊水山(1時間)鍋蓋山(25分)大竜寺(20分)市ヶ原(40分)新神戸
アクセス:スタート地点は、山陽電鉄の須磨浦公園駅。ゴール地点は、新幹線と神戸市営地下鉄の新神戸駅。またルート上には、神戸市営地下鉄の妙法寺駅や神戸電鉄の鵯越駅もあるので、状況次第での利用も可能。
地図:『山と高原地図48 六甲・摩耶』(昭文社)

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