- 山と雪
寒さが沁みるこの季節、山のウェア選びはOK? その2
2014.12.06 Sat
宮川 哲 編集者
[寒さが沁みるこの季節、山のウェア選びはOK? その1]から続く
では、どんな準備が必要なのかといえば、基本は雪山登山のそれとほぼ変わりはありません。ただし、滑りを対象としたスキーやスノーボード向きの装備ではなく、あくまでも「登り系」の装備です。
雪山登山のウェア装備といえば、その1にもあるように、アウター、ミッド、アンダーの組み合わせが基本となります。暑ければ脱ぎ、寒ければ着る。この基本の動作を状況が変わるごとに繰り返す。これが、山のウェアリング技術です。
レイヤードという考え方では夏山でも同じなのですが、冬の場合は、それぞれのレイヤーにあたたかくするための工夫が付加されると思えば、まぁ間違いではないでしょう。
では、アウター、ミッド、アンダーのうち、どれがいちばん重要なアイテムなんだろうと考えたとき、あなたならどう答えますか?
アウタージャケット!?
たとえば冬山デビューをする場合、夏山装備からウェアを買い足したり、買い替えたりしますよね。そんなときは、まずはいいアウターが欲しいなんて思っちゃうのではないでしょうか。たしかに見た目は大事だし、カッコいいほうがいいに決まっていますよね。
でも、答えはアンダーウェアです。
機能性を重視して買い替えをするなら、まずはアンダーに気を使うべきなんです。アウターは夏山のそれでも、レイヤリング次第では流用もできてしまいます。でも、冬に使うアンダーは、夏山のそれとは別物です。
冬のアンダーの役割の第一は「肌面を濡らした状態で放置させないこと」です。これは、身体の保温につながる第一歩だからです。
どんなに寒い山でも、急な斜面を登っていれば、しぜんと汗をかくはずです。あまりに暑ければアウターのベンチレーションを開けるでしょうし、それでも暑ければ、ジャケットを脱ぎますよね。そんなとき、肌面には汗がジンワリと浮いていることでしょう。
アンダーウェアは、この汗の水分をしっかりと吸い取り、次の層、つまりミッドレイヤーへと送り込む役割を果たします。アンダー、ミッド、アウターと、レイヤーを次々と通すことで、汗を蒸発・発散させて、肌面をドライに保つのです。性能のいいものは、汗が肌面に逆戻りをするのを防いでくれたり、素材そものもが発熱するものまであります。ウールなどのように、素材自体が保温性や抗菌性能を保持している場合もありますね。
ついでなので、ミッドとアウターの役割も書いておきます。まずレイヤーの役割ですが、先ほどの、アンダーからの水分を受け取ってアウターへと送り込む役目がひとつ。そして、こちらがいちばん大事な役割なのですが、身体をあたためるために空気の層をつくることです。デッドエアをいかにたくさんつくれるか、いわゆる保温層の保持ですよね。インシュレーションともいわれる中綿素材をふんだんに使ったダウン製品はもちろん、フリース素材などもミッドレイヤーの代表的な製品です。
そして、アウタージャケットは、おもに外からの雨風の浸入を防ぐ役目を果たします。もちろん、ミッドレイヤーから発散された水分を外へと誘う仕事もしていますよね。これが、よく聞く「防水透湿」という言葉の意味です。
このように、山のウェア選びは、各層の組み合わせがとても大切なのです。肌面を濡らさずに、いかにして身体を保温させるか。どんなにいいアウタージャケットを着ていたとしても、アンダーが綿のTシャツだったりすると、まったく意味をなしません。夏山ならそれでも問題なく過ごせるかもしれませんが、冬山の場合はかなり危険。身体を濡らしたままで寒い場所に居続ければ、低体温症の危険性は加速度的にアップしちゃいますので。
この考え方は、雪深い高山の山行でも、雪のない低山の山行ででまったく同じなのです。低山だから、夏山の装備にダウンをひとつ加えればOK! ではありませんよ。
アンダーウェアに気を使う。
この季節の山歩きには、大切なポイントだと思います。天然のウールでも化繊でもハイブリッドでも、山の専門ショップに行けば、冬用アンダーウェアとして数多く売っていますので、ぜひ足を運んでみてください。