- 山と雪
【行ってみた】季節外れの無人小屋泊、オンナ2名のニュージーランド山歩き(前編)
2016.08.14 Sun
今回は過去体験をほじくり返し、数年前の6月に訪れた「ニュージーランド」のある短い山歩きをご紹介します。南半球の6月と言えば冬の初め。ここ連日酷暑続きの日本ですから、脳内くらい涼しくいきましょう。
日本と同じく島国であるニュージーランド(以下NZ)は南島と北島に国土がわかれ、いずれの島にもたくさんの山歩きのコースが存在します。NZでは山歩きのことを「トランピング」と呼び、トレイルのことを「トラック」とすることを基本情報としてまずは覚えておきましょう。
日本の登山は登山口から稜線をめざすのが一般的であるのに対し、NZのトランピングは山頂をめざすのではなく、森や谷、川沿いなどを歩いたり、ときに峠を越えるなど、自然のなかを歩くことそのものを楽しむようです。トラックにはハット(山小屋=有人や無人)が点在し、それらをつないで何日もかけて歩くスタイルが人気のようです。
トラックの種類は、NZを代表する「ミルフォードトラック」や「ケプラートラック」のように道やハットがすばらしく整備されている「グレートウォーク」と呼ばれるもの(NZ国内に9本ありハットもすべて要予約)と、それ以外の「バックカントリートラック」と呼ばれるトラックとがあります。
訪れたバックカントリートラック「Mt Somers Track」
後者は数時間ほどで歩けるものから、明確な道がない原野を地図や目印を頼りに歩いたり、川を渡渉したりするような難しいもの、なかにはクライミング技術を伴うようなものまであり、ハットも設備が充実したものから、風雨をしのぐ程度のものまでさまざまです。
そのときAkimamaスタッフが滞在していたのは、南島のクライストチャーチ。日本からの出張の合間に2日間ぽっかりと空白の時間が生まれたことから、仕事仲間と急きょどこかの山へ遊びに行くことにしました。
目的は「ハット利用の1泊2日でお気軽な山歩き」。
とはいえ地図もなければ、具体的な行き先のイメージがあるわけでもありません。
そこでまずリサーチに用いたのが、現地のDOC(=Department of Conversation=自然保護局)のサイト。NZ国内に何百とある山のハットは国営で、DOCが管理しています。また数段階にランク分けされていて、料金も無料~$15まで。
このサイトでクライストチャーチから近い山域にある「ゴキゲンそうなハット」を探すことから始めました。
「これだ!!」
探すこと小一時間。最終的に絞り込んだのが、クライストチャーチからクルマで1.5時間ほどにあるMt Somersエリアの「Woolshed Creek Hut」。
検索結果によると、登山口からハットまでの道のりは約4.5km。宿泊は大人1晩15ドル(1,100円ほど)で予約も不要。マットレスを備えた睡眠スペースが26床あり、薪ストーブ付きとな! しかもごっつキレイそうですやん!
「ここしかないでしょ!」
決まったところで、つたない英語でレンタカーを手配。スーパーで食材とお酒を買い込み、アウトドアショップでMt Somersの山域の地図とハットチケット(後編で解説します)もバッチリ購入。防寒ウェアと、時期的に万一に備え軽アイゼンを準備し、あとは出発するのみ。
「ハットに備えて寝る練習をする」と、リサーチそっちのけで爆睡中の仕事仲間(怒)
1.5時間ドライブといえば、たとえば東京からなら小田原、京都からなら舞鶴くらいの、ほどよい距離
翌朝クライストチャーチを出発。通勤ラッシュに巻き込まれながらも市街地を抜け、国道1号線・77号線をつないで郊外の小さな町マウント・サマーズへ入ります(NZは左側通行で右ハンドルなので、日本人にとって運転しやすい)。
町を抜け登山口へと向かう途中、突如出現したゲートを前に「もはやここまでか!?」とがく然としたものの、普通にロックは解除でき通過(涙) よく読めば、看板には「山歩きの人は自分で開けてね」的な文言が……あせるわー。
あまり良いとは言いがたい天気が気になりますが、Mt Somers Tracksと書かれた標識を目にし、登る前からすでに“やってやったぜ感”満載の自分たち。駐車場にはトイレも完備されていました。が、ほかのクルマが一台もない……。不人気エリアなのか、一抹の不安がよぎります。
今回は登山口Woolshed Creek Carparkから時計周りでMt Somers Tracksの一部とMiners Tracksを周遊。1周10kmにも満たないショートコースです。古い炭坑跡や火山活動の地形、溪谷や荒涼とした平野が見事だとDOCサイトに解説があり、1泊2日ながら期待大!
では、歩きの模様は1分半の動画でどうぞ。
歩いたトラックは地図通りでとても明瞭。谷筋から樹林帯のなかゆるやかに標高を上げた先には、雪化粧をした山々の連なりがはるか遠くまで広がっていました。
しんと静まり返った草原地を抜け、冷たそうな小川のせせらぎに耳を傾けながらトラックを下ること15分。枯れ草と雪の入り交じる景色のなかにアイボリー色の小奇麗なハットが私たちを待っていました。
さぁ「Woolshed Creek Hut」の居心地と、ニュージーランドで過ごす初冬の山中泊はどうだったのでしょうか!? (後編へ続く)